届いた布は…
翌日は朝から雪が降っていた。暫くは降り続くだろう。
美波は軽く朝食をとり、身支度をととのえると公民館へ向かった。
カエン様が来てからずっとバタバタしていたので、例の布をきちんとみていないのだ。
今日は型紙をあてて、裁断したりすることになっている。
それにちらっと見た印象では、他にも布が入っていそうなのだ。
ワクワクしすぎて、浮かれぎみである。
「 おはようございます 」
「 おはよう、美波 」
中に入ると、既に何人か集まっていた。
ミチルは輪の中心にいて、布を広げている。
「 おはよう。いらっしゃい、今みんなにも見てもらっているところよ 」
手元には、先日打ち合わせをしたソウキ様のドレス用の布があった。美しい青の布である、シルクなのであろうトロリとした光沢を持つ布は、とても鮮やかな青だった。
「 わぁ、綺麗。いい色だね、ソウキ様に似合いそう 」
他の女性達もうっとりと眺めている、裁断するのが怖いという声も聞こえてくるが。
確かに、手が震えそうである。
「 他にも布があるのよ、手紙も一緒に入ってたの」
急に皆さんが下を向いた。一体何が?
手渡された手紙には、ざっくり纏めるとこう書いてあった。
『 他の布も送るね!いい感じのデザインで仕上げて頂戴。皆のセンスを信じてるわ!
急ぎじゃないから、時間があったらお願いね。
よろしく! ソウキ・ローザより 』
「えーっと、ミチル。コレは大丈夫なの?
ものすごい無茶ぶりなんだけど……
そして何枚送ってきたの?」
ミチルを始め、皆さん遠い目をしている。
「 大丈夫ではないわね。デザインするっていっても、そんなに知識がある訳じゃないし……
布はメインの物が一人三パターン、計六枚よ。
他にも小さめの物やレースも入ってるの。
協力してもらうわよ!何かあるでしょ、あっちの世界のドレスの知識 」
大変な事になってしまった。
記憶を辿ってデザインを形にしなければ!
「 私に出来ることなら協力するよ。できる限り思い出すから!」
忙しくなりそうだ、春のお祭り向けに準備することも沢山あるのだ。
その辺りの事情はお二人も承知しているので、あくまで時間があったらという事なのだろうが、ものすごく楽しみにしている気がする。
とりあえずミチルの刺繍は最後の仕上げなので、他の女性達に裁断と縫製をお願いする。
「 どうしようか、布に合わせて考える?それともデザインだけ先にリストアップしていこうか 」
「 そうね。例えばだけど、お祭り用の服とベースのデザインは同じで、お二人の分には刺繍や細部のデザインで差をつけるのもアリよね。
それなら使えそうなデザインを、先に書き出した方が良いかもしれないわ 」
確かにそれなら合理的だ。美波の知識にも限りがあるので、先に全部出してそこから選ぶ方が今後のためにもよさそうである。
「 分かった、じゃあ思いつくのから描いていくね」
その後必死に記憶を掘り起こし、エレガント系に絞りこんでホワイトボードに描いていく。
こちらの世界はシンプルイズベストというデザインが多い為、フレアスカートやレースを用いた上品な物が主流らしい。
無さそうなものを探して、結果的に候補に挙がったのはこんなラインナップだ。
ベトナムのアオザイ、ベストサイズで着こなすべきなので、既製服としては不向きかもしれないが、お二人はオーダーメイドかつ素晴らしいスタイルの持ち主なので、絶対に似合うはず。
かつ、ミチルの刺繍の腕も活かせる。
次はティアードドレス、布にフリルを寄せて何層も重ねたデザインで、真っ直ぐ横に重ねるか斜めにするか、あとは使用する布の量でパターンは無限大。これが一番応用が利きそうだ、お二人にはボリュームを出したゴージャスなドレスにしても良いし、スカート部分だけを控え目なティアードにして大人の魅力を強調しても良い。
お祭り用には全体をティアードにしたワンピースや、膝丈くらいのスカート部分だけをフワッとさせても可愛いはずだ。
あとはスカートの下に、フワフワのチュチュを合わせてふんわりさせても良いかもしれない。
子供用にこんなワンピースを作ったら、ナナ・マナとユキちゃんが天使になるはずだ。
「 こんな感じでどうかな、ティアードドレスはウエディングドレスにも使えるはず。
私の絵心ではこれが限界、ごめん 」
ミチルは無言で考え込んでいる。
「 ありがとう、充分よ。皆とも相談してデザイン画を描いてみるわ。そのうち美波にも作ってあげるわね 」
「 ありがと!ミチルもアオザイ着てみたら?
似合いそうだよ 」
下がパンツスタイルなので女性ものでも抵抗が少なそうだし、ミチルが着たら絶対に似合うと思うのだ。
「 良いわね、お揃いで作る?」
それだけは断固拒否いたします!
長身スレンダーなミチルは似合うだろうが、美波には微妙だ……
出来たらティアードドレスでお願いします!




