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いよいよ、ワカサギ釣り 後編

一行はワカサギのいる湖まで全力で走り出した。


「 速いー!ムリー!」


またしても爆走狼達のせいで寿命が縮む思いをした美波だったが、今日はユキちゃんとハクを膝に乗せて抱え込み、周りを双子達に囲まれていたので先日よりはマシだった。

しかし怖がっているのは美波だけ、子供達は両サイドを流れていく景色に大興奮である。


「お姉ちゃん、楽しーね!速~い!」


キャッキャとはしゃぐ子供達はやはり、獣人族であった。


あっという間に湖に辿り着いた一行は、手分けして準備を始めた。

ユーリとカエン様が氷に穴を開け、美波は椅子を作っていく。村人達も着替えを済ませ人型になっているので、食材を運んだりしつつグループ分けもしているようだ。


大きく分けると、子供有りほのぼのファミリーグループと、若手職人さんとお針子のお嬢さん達の婚活グループ。子供抜き夫婦でイチャイチャグループと独身大人男女グループ。

美波は二人にすると危険そうなので、ユーリ・カエン様と一緒である。更にミチルに泣きついて同じグループに入ってもらっている。


「 準備できましたか?油の温度は一定になるようにしてありますから、衣をつけたらそのまま揚げていって下さいね。

凄く熱いから、子供は触っちゃ駄目だよ!」


広い湖の上でバラけて、いよいよワカサギ釣りである。


「 はい、カエン。これ釣竿な、ここにエサをつけてー、こうだ!」


「 こうか?よし、釣るぞ!」


カエン様は大きな体を丸めて、真剣な表情である。傍らには岸辺から持ってきた雪の塊に、ワインのボトルが六本ばかり突っ込んである。

つまみを確保せねば美味しいお酒が飲めない。


六本て……


フルボトルで六本て……


ついでに言うと、ソリの傍には更に二十本ほど雪に埋まっている。カエン様の奢りである。

王都からの大量の荷物は、殆どがワインであった。


美波はミチルと共に、ユーリが水魔法で出した氷の塊を、カエン様が火魔法を付与したナイフでゴリゴリ削って、氷のグラスを作成中である。

例の氷のホテルやバーの話を村人が覚えていて、急きょ作ることになったのだ。


ちなみに子供達には、魔法瓶にカラメルホットミルクを入れたものを配ってある。

氷のグラスはあくまで、お酒を飲む為の大人用である。冷たいジュースを氷のグラスで飲んだら、確実にお腹を壊すだろう。


「 こんな感じかな、どう?ミチル 」


「 いいんじゃない?完成ね 」


二人の手で四つの氷のグラスが作られた。

二日酔いだというのに、また飲むらしい。

氷のグラスでテンションが上がってしまったようだ。

大丈夫なのか、美波……


「 釣れたぞ!ユーリ、俺の勝ちだな 」


「 まだまだ!俺は一度に六匹釣ってみせる!」


小学生か……

まぁ、周囲でも同じような光景が繰り広げられているのだが。


「 私達も釣ろうか、はい、釣竿 」


美波とミチルも釣糸を垂らす。その間にもユーリとカエン様は次々と釣り上げている。

美波は一度釣り上げたところで、待ちきれずに期待に満ちた目で見つめてくるカエン様の圧力に負けた。


「 天ぷら、揚げましょうね 」


ジュワワッ。カラカラ。

美味しい音があちこちから聞こえてくる。


まずは火の通りにくいジャガイモを幾つか、そしてワカサギだ。

先に揚がったワカサギをお皿に載せて、すぐにチーズを鍋の中へ。


「 はい、どうぞ、カエン様。ユーリはちょっと待ってね、はいチーズだよ 」


二人はグラス片手にスタンバイしている。

手袋をしているので、氷のグラスもばっちり握れるのだ。美波は次のワカサギを投入しつつ、ジャガイモをチェックする。


「うまっ!コレは旨いな、ユーリ。しかもワインに合う!」


「 だろー?こっちのチーズも旨いよ 」


「 良かったね、ユーリ。カエン様に喜んでほしくて頑張ったもんね 」


久し振りに会った親戚のお兄さんと、彼に憧れる弟分という感じで微笑ましい。


「 美波もありがとう。君のアイデアだろう?初めての体験だよ 」


うっ、眩しいっ。キラキラしていますっ!


「 いいえー。どんどん食べてくださいね。はいユーリ、ジャガイモ揚がったよ。ミチルも食べて、ワカサギも揚がったよ 」


そこそこの量があったワカサギの山は、 あっという間に天ぷらになった。

その後も釣っては揚げて、即食べる。そして飲むという魔のループにはまり、酔い潰れる大人が続出した。


ちなみにテンションが上がりすぎて酔い潰れ、若手職人さん達の婚活はしょっぱい結果に終わったらしい。

帰り道、イツキさんの一喝で目覚め、お嬢さん方の冷たい視線に晒されながらしっぽを下げてトボトボ歩く狼は、記憶から消しておこうと思う美波であった。


帰りのソリの上、美波の足元の箱には釣ってすぐ冷凍したワカサギが詰まっていた。

お留守番のシロガネ様とマリさんに、天ぷらを食べていただくのだ。残りはマリネにして皆に配るつもりだ、又しても酒のつまみ的な品である。


こうして『 湖でワカサギを釣って天ぷらを食べようツアー 』は、大好評の内に幕を閉じた。

あの湖には大量のワカサギがいるので、冬の間にあと何回かは楽しめそうだ。



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