ノックは大事!
遅くなりました…
うーん、重い。
そして苦しい……
目覚めると、美波のお腹の上でユキちゃんが丸まっていた。
スピースピーと寝息をたてるその姿は超絶ラブリーですが、さすがに重いのです……
起こさないように、そっと横に下ろす。右側では、ハクが仰向けで熟睡している。
昨夜のかまくらでデート権を勝ち取ったギンとリンの為、子供達を預かっていたのだ。
見上げると天窓からは青空が見える、今日もいい天気らしい。
ユキちゃんに布団を掛けて、静かにベッドを離れた美波は、朝食のメニューを考えつつ冷蔵庫を開けた。
「 んー、昨日はトマトスープだったし、クレープにしようかな。具材はハムとレタスと卵、あとはマッシュポテトとチーズでいいか 」
クレープ生地を作り、寝かせている間に具材を準備する。
テーブルで好きなものをクルクル巻いて、手巻きクレープだ。自分でやりたい子供達の自立心も養えて、色々な味も楽しめるので人気のメニューである。
「 あとはハチミツと、水切りヨーグルトも出そうかな 」
準備を粗方終えた所で、ロフトに上がり着替えを済ませて二人を起こす。
「 おはよー。お姉ちゃん 」
「 はい、おはよう。朝ごはんにするから、着替えて顔も洗っておいで 」
テテテッと駆け出す二人を追いかけて一階へ降りると、玄関のドアがノックされた。
「 おはよー、美波。朝ごはん食べに来た 」
「 おはよう、ユーリ。何度も言うけど、ノックっていうのは入ってもいいですかっていう合図であって、ドアを開ける合図じゃないからね…
いきなり開けない!」
このエルフさんは、いつもノックとほぼ同時にドアを開けるのだ。
今までトラブルになっていないのが不思議である。
「 いいじゃん、別に。俺は気にしない 」
「私が気にするのっ!」
もはや恒例となったやり取りをしていると、ハクとユキちゃんが洗面所から出てきた。
「おはよー、ユーリ 」
「おう、おはよー!二人とも 」
片腕に一人ずつ抱えあげて、音を立ててほっぺにキスをする。
キャッキャと笑う子供達の姿に和んでしまい、今日もユーリにノックの意味を理解させることを断念する。
「 ユーリ、手巻きクレープだけど、いい?」
「 やった!大好きだ!」
テーブルセッティングをユーリと子供達に任せて、美波はクレープを焼いていく。小振りのフライパンで手早く何枚も焼き上げて、お皿の上に重ねていき、隣のコンロではミルクを温める。
「 はい、お待たせ。食べよう!」
いただきますっ!と元気に言って、三人がクレープに手を伸ばす。
ハクとユキちゃんを手伝いつつ、美波も自分の分を作り口に運ぶ。
ハムとチーズ、レタスにマヨネーズは定番だけれど美味しい。ユーリはマッシュポテトにチーズとレタスとマヨネーズのクレープを頬張っている。
沢山あったクレープは、食欲旺盛な三人のお腹にあっという間に消えていく。
シメに水切りヨーグルトとハチミツをクルクル巻いたところで、クレープは全て無くなった。
「 美味しかった、ごちそうさま!」
食器をキッチンに運びお皿を洗いつつリビングを見ると、ユーリが子供達を遊ばせている。
二人とも喜んでいるけれど、何度見ても心臓に悪い。ハクの足を掴んで、力任せに回転しているのだ。
遠心力で凄いことになっているが、二人はキャッキャと声をあげて交互に回されている。
「 ちょっと、ユーリ。食べてすぐにその遊びはダメじゃない?」
「 大丈夫だよ、お姉ちゃん。面白いもん!」
いや、ハクがいいなら、いいんだけどね……
「 はい、おしまい!なぁ美波、多分今日あたり王都から布が届くと思うんだよね。
もしカエンが来たらさ、何か珍しい遊びとか食べ物とか、教えてやりたいんだ 」
カエン様というと、コクガ様とソウキ様の息子さんか。ユーリにとっては、お兄さんみたいな存在だと言っていたはず。
「 それで朝早くから来たの?新しい遊びって言われても…トランポリンとソリにジェットコースターでしょ、かまくらは遊びじゃないか。
何かあるかなぁ、食べ物の好みとかわかる?」
暫し考えて、魚と返された。
「 魚ねぇ、うーん……日本だったらワカサギなんだけど、こっちにもいるのかな 」
キラキラした目にせがまれて、ワカサギ釣りとワカサギの天ぷらの魅力を語る。
「 まぁ、知識として知っているだけで、実際にやったことはないんだけど 」
「 誰か知ってるかもしれないし、聞いてみようぜ!」
ユーリの勢いに押されて、美波はとりあえずミチルの家に向かう事にした。




