ワカサギを釣りましょう!
その後色々な人に訊ねた結果、村から歩いて三十分位の距離にある湖に、それらしい魚がいる事が判明した。
しかし川でとれる魚よりかなり小さい上に、冬になると完全結氷するので、食べたことがある人はいなかった。
かなり微妙な情報だが、ユーリが物凄く乗り気なので、とりあえず見に行ってみる事になった。
メンバーはユーリと美波、クロとミチルである。
狼型になった二人にソリを人に牽いてもらい、湖へ向かう。
「 速い!速いよー。ムリー!」
ソリはとんでもないスピードで、木々の間を走り抜けていく。美波の悲鳴を無視して走り続けた結果、十五分程で湖に到着した。
「 ひどいよ、ムリって言ったのに 」
いつもは優しいミチルまで、暴走狼と化していたのだ。ゴソゴソと着替えを済ませて人型になったミチルが、うずくまる美波を抱き起こす。
「 ごめんね、美波。どうも本能に負けちゃうのね、アレを着けると 」
狼ですよね!皆さんシベリアンハスキーじゃないでしょう!
「 うー。帰りもアレに乗るのヤダ…」
「 何してんだよ、行くぞ美波!やり方教えてくれよ 」
張り切ったユーリに引き摺られるように、氷の上を進んでいく。
ヒドイ扱いである。
足元の氷は、かなり厚みがあるようだ。
「 とりあえずこのあたりで穴開けてみようか、ユーリお願い 」
美波の指示でユーリは氷の上に手をかざし、何かを唱える。
すると小さなつむじ風が発生し、みるみる小型のドリルのように形を変えていく。
腐ってもエルフ。こんな魔法も使えるようだ。
暫くガリガリと氷を削り、水面に到達したらしい。ゴポッと水が出てきた。
「 じゃあ、ここに糸を垂らしてみて。
餌も付けてね 」
あやふやな記憶を頼りに作った仕掛けだ。
釣糸には縦に幾つか釣り針が付けられていて、それを静かに穴の中へ垂らしていく。
「 釣れるかなぁ、どう?ユーリ 」
「まだ何も感じないな …」
四人で見守ること暫し、釣糸に動きが伝わったようだ。
「来たぞ!」
ユーリが引き上げた釣糸には、銀色の魚が四匹かかっていた。
「やった!釣れたぞ!どうだ?美波 」
サイズはほぼワカサギだ。見た目も近いので鑑定してみる。
淡泊な白身魚、油で揚げると美味。名前は特に付けられておらず、湖の魚となっている。
勝手にワカサギと命名しよう。
「 いけそうだよ、とりあえず針から外して氷の上に置いておいて。天ぷらの準備するから待ってて」
三人に釣りを任せて、岸辺で天ぷらの支度をする。昨日の鍋敷きの上に小さな鍋を乗せて、油を温める。
そして小麦粉と卵と水を入れて混ぜ合わせ、衣を作る。取り皿に塩を乗せてから、油の温度を確かめる。
「 もういいかな。みんな!天ぷら作るから、ワカサギ持ってきて 」
更に釣れたらしく、全部で二十匹以上はいる。
「 じゃあ、揚げていくね 」
氷の上で仮死状態になっていたワカサギに、心のなかで詫びつつ衣を付けて油の中へ。
ジュワジュワと食欲をそそる音がする。
音がカラカラと軽いものに変わり、浮かんでくれば完成だ。お皿にのせてクロとミチルに差し出す。
「 出来たよ、お塩を付けて食べてね。熱いから気を付けて 」
二人は熱々のワカサギの天ぷらを恐る恐るつまみ、塩を付けて口に運ぶ。
「ん!うまい 」
「 美味しいっ!」
淡白な味なのでどうかと思っていたが、意外にいい感じだ。美波も一匹つまんでみる。
「ん。ワカサギだね。釣りたてを食べるのはじめてだけど、美味しいね」
味は想像していたのとほぼ同じ、まさにワカサギであった。
「 ユーリは味見出来ないんだよね。
どうする?味は良いし、釣ってすぐ食べるのも珍しいと思うけど」
「 うん。楽しそうだし、いいんじゃないか。
俺も天ぷら食べたい、何か揚げてくれよ 」
天ぷらでユーリも食べられそうな具材なら、ジャガイモやサツマイモ。あとは、チーズなんかもいけるかも。
「 村の皆も楽しめそうだし、ちゃんと準備してからまた来ようか。ユーリの天ぷらも作ってあげるから 」
こうして、来るかもしれないカエン様のおもてなしプランは決定した。
美波は想像通り帰り道でも悲鳴を上げるはめになり、犬ゾリを開発した事をほんの少しだけ後悔したのだった。




