ドレスのお披露目
「 皆様、ようこそお越しくださいました。
雪のジェットコースターを楽しんでいただけたようで、何よりです。
ローザ様には以前、試作品を試食していただきましたが、これが完成した干し柿です。
お召し上がり下さい 」
シロガネ様の計らいで、村の備蓄分からお茶うけにお出しする事になった。
雪遊びで冷えた体を温めていただこうと、熱いお茶と共にお出しする。
「 ありがとう、シロガネ。では、頂こうか 」
コクガ様とソウキ様が干し柿を食べるのを、美波はドキドキしながら見守っている。
お口に合わなかったらどうしよう……
「 ん!美味しいわ。とても甘いけれど果物の自然な甘さね、シブガキがこんなに美味しくなるなんてびっくりだわ 」
どうやらソウキ様はお気に召したようだ。コクガ様も頷いている。
「 お口に合って良かったです。ちょっと手間はかかりますが作り方は単純なので、シブガキの木があればどなたでも作ることが出来るはずです。
来年はレシピを公開して皆さんに作ってもらっても良いですね 」
「 良いの?美波は本当に良い子ね。シブガキの木は割りと広範囲に分布しているから、喜ばれるはずよ 」
ローザ様は、二つ目の干し柿に手を伸ばしつつ微笑んでいる。
「 勿論です。せっかく美味しい実がなるのに、食べないなんて勿体ないですから。
ハクロウ村で作れる量では、他の町に売るほどの量にはなりませんし、あくまで冬の間のおやつですから。村の皆も了承済です 」
村にあるシブガキの木は大木だが、特産品にするほどの量は作れない。無理してお金を稼ぐ必要もないので、冬の味覚として村の中で楽しむのがベストだ。
他にも作りおきのスイートポテトなどをお出しして、ティータイムは和やかに進んでいった。
「ところで美波、手紙に書いてあったドレスなのだけれど、見せてもらってもいいかしら 」
ローザ様はミチルの新作ドレスが気になっているらしい。
「 勿論です。こちらにお持ちします、ミチルを呼んできますね 」
「 どうでしょうか、ローザ様。美波に作ってもらったビーズという飾りで装飾してあります 」
ミチルが持ち込んだドレスは、トルソーの上で美しく煌めいていた。
三人ともすぐには言葉が出ないようだ。
「 素晴らしいわ…手にとっても良いかしら? 」
勿論ですと、トルソーからドレスを外してローザ様に手渡す。
「 軽いのね、宝石を縫い付けたドレスとは大違い。それにこの輝きと刺繍の美しさ……」
ソウキ様も横から覗き込み、美しさに見とれているようだ。
「 ローザ様、よろしければ着ていただけますか?」
ミチルに促されて、美波はお手伝いすべく隣の部屋へローザ様を案内する。
「 この胸元のリボンでサイズを合わせる事が出来ます。失礼します、少し絞りますね 」
胸のすぐ下のリボンを、体のラインに合わせて結ぶと、ドレスはローザ様の体にぴったりだった。
「 あぁ、すごく綺麗です…早く皆さんに見せましょう。あちらには大きな鏡を用意してあります 」
ドアを開けてローザ様をエスコートし、待ち構えていた皆さんの前に立っていただく。
正面には大きな鏡があり、ローザ様は初めてドレスを纏ったご自分の姿を確認する。
「 まぁ、ステキ。とても上品で、式典の時の礼服程堅苦しくないのに、美しさでは負けていないわ 」
くるりと一回鏡の前で回ってみせたローザ様は、ドレスの美しさに夢中である。
そして美しい人が身に纏う事で、ミチルのドレスは何倍も輝きを増している。
「 とても良い出来ね、ローザ。羨ましいわ、私もこんなドレスが欲しい 」
どうやら、ソウキ様もお気に召したようだ。
「 ミチル、見事な刺繍だ。ローザに合わせて薔薇の意匠で統一してあるのだな。
これは一着どのくらいの値段で作れるんだ?」
コクガ様は現実的な疑問を口にした。
「 そうですね。布がシルクなので、ドレス本体だけで銀貨五十枚といったところでしょうか。
ビーズの穴開けの手間と刺繍の分でどのくらい上乗せすべきか、まだ決めていないんです 」
ミチルの答えに、コクガ様は暫く考えてから言った。
「 俺は一着金貨一枚でもいいと思うぞ。
宝石を縫い付けた服は美しいが、普段から着るわけにはいかないし、何より高価だ。これなら王都のエルフ達や地方の豪商が飛び付くだろう。
このビーズとやらは特別な品なんだし、デザインと手間を考えてドレスのみの価格の倍でもいと思うが、どうだ?」
予想以上の値段である。町で売っている一番高いドレスが大体銀貨十枚くらいなので、その十倍だ。
まぁ、宝石を縫い付けたら金貨何枚になるのか見当もつかないので、比較するのは難しいのだが。




