何でこうなった…
犬ゾリのお披露目から数日後、広場に作られた雪山は、予定では小さめの可愛らしいサイズだったのに、どういう訳か高さ五メートルに階段が一つと、なだらかなすべり台一つに急角度のすべり台、カーブのあるすべり台を持つ巨大アトラクションと化していた。
木工職人見習いのお兄さん達の作った子供用ソリに加え、なぜかイツキさん作の大人用ソリも雪山を滑り降りてくる。
今も急角度のすべり台から滑ってきた大人用ソリが、止まりきれずに宙を舞っている……
「いいのかなぁ、コレ。
楽しそうだし、バリアのお陰でケガはしないけどさ…」
なだらかなすべり台では子供達の声が響き、美波の思い描いていた光景が広がっているのだが……
「うおーっ!こわっ!でも、もう一回!」
野太い声は、ちっとも可愛くない。
「いいんじゃない?みんな楽しそうだし、ほら、美波も一緒にやってみましょうよ」
順番待ちの列に並んで、ミチルと一緒にソリに乗る。さすがにあの傾斜四十五度クラスのすべり台は怖いので、カーブつきのコースである。
ミチルに抱え込まれるようにして、美波が前に座る。
「行くわよ!」
すべり出してすぐに左カーブ、勢いがついたところで、少し上向きになってからの急降下、そして右カーブ。
『キャーッ!!』声が出なかった……
ジェットコースターより絶対に怖い。
「ミチル…ごめん。私あっちの子供用にしとく…」
「あら、顔色悪いわよ、大丈夫?こんなに楽しいのに、勿体ないわね」
大抵は味方のはずのミチルだが、身体能力は人狼族だ。あの悪魔のコースがちょっした娯楽レベルらしい…
「私はいいから遊んできて。遠慮しなくていいから…」
そう?と残念そうなミチルと別れ、子供用のすべり台へ向かう。
我が子を遊ばせつつ、絶叫マシーンと化したすべり台が気になって仕方ないママさんパパさん達から、ベビーシッター役を引き継ぐ。
「私あっちのやつはムリなんで、子供達と遊んでますから。行ってきてください」
そう言うと申し訳なさそうにしながらも、夫婦で手をつないで大人用すべり台へ向かった。
「お姉ちゃん、一緒にやろう!」
ハクとユキちゃんにねだられて、三人ですべり台を滑る。
「これだよ!このほんわか感!何でああなるかな」
原因ははっきり言って、美波の一言だ。
すべり台から脱線して、ジェットコースターの話なんかするからだ。
雪まみれになりつつ宙を舞う大人達は、凄く良い笑顔だ。
「なんかもう少ししたら、巨大コースターとか作りそう…」
美波のレンガとシールのお陰で、雪掻きに時間を取られなくなったので、この冬は余裕があるのだ。
広場に雪の巨大絶叫マシーンが出現する日も、遠くないかもしれない。
「お姉ちゃん、もう一回!」
「美波ちゃん、私達も!」
ねだられるままに小さな手を握り、次はミチルの誘いだろうが断ろうと心に決める。
あれ以上のコースなんて、絶対に無理だ。
ケガをしない事と、恐怖心の克服は別物である。
その後も美波は子供達とすべり台で遊び、雪だるまを作ったりして冬の遊びを満喫した。
先日思い付いた雪のランプも皆で作ったので、一軒に一個プレゼントした。
今夜は家々の入口を照らす、小さなランプが見られるはずだ。
後日、悪ノリした大人達が全力で作った巨大すべり台が広場に出現するのだが、それはまた別の話である…




