美波とモフモフ
ティータイムを終えると、午後からは依頼されている刺繍を仕上げるというミチルと別れ、ユーリと共に学校へ向かう。
年少組のハクとユキちゃんは午前中は字の練習をするが、まだ小さいので午後は大きい子達とは別行動なのだ。
手の空いた大人が仕事をしつつ面倒を見る事になっているので、今日はその役を買って出ることにしたのだ。
「寒いねぇ。結構積もってるし、明日にはどの位になってるんだろう。」
「一晩で膝くらいまで積もることもあるぞ、今日は降り始めだから二十㎝くらいじゃないかな。」
白い息を吐きながら二人で歩く、道の上はいまだ綺麗なままで、舞い落ちた雪はすぐに融けてしまう。学校に着くとリンの腕からハクとユキちゃんを受け取り、お昼ごはんを食べて眠くなったらしい二人をビーズクッションに乗せて、暫しのお昼寝タイムだ。
仲良くくっついて眠る狼とウンピョウの子供達は、時折寝返りをうちながらも熟睡している。
「可愛いなぁ。このモフモフ感、たまらない……」
二人を撫でながら美波が言う。
「美波って、本当にモフモフ系好きだよな。
この前はモコを撫で回してたし、本当は大人の狼も撫でたいんだろ?」
ニヤニヤと悪い笑顔のユーリに顔を覗きこまれ、美波は決まり悪そうに目をそらす。
「好きだけど撫でないよ、大人は。撫でたらマズイでしょ。私がユーリを撫でるのと同じだよ?
人としてダメでしょ。」
「撫でたいのは否定しないんだな。」
クスクス笑い出したユーリに、とりあえず言い訳しておく。
「しょうがないでしょ。私の今までの日常では、モフモフした生き物はあくまで動物だったんだもん。
モフモフは撫でるべきっていう欲求と、こっちでは人なんだっていう常識の間で葛藤してるんだよ。」
もっともらしい事を言っているが、軽めの変態さんである。
普通の人は全てのモフモフ生物を撫でようとは思わない。
そんな会話の間にも、美波の手はユキちゃんをナデナデして、ゴロゴロいわせている。
「あぁ、可愛い……ねぇユーリ、人化する種族じゃなくてちょっと変わったモフモフ生物っていないの?」
確実にユーリにモフモフマニアだと認定されるが、開き直ったようだ。世界中を旅している彼なら、何か特別なモフモフを知っているかもしれないのだから。
「んー。そうだなぁ、珍しいっていうレベルを超えた聖獣なんかもいるぞ、ペガサスとか天虎とか。
羽がついてて飛ぶ馬と虎だな、神の遣いだから滅多に見られない。」
いるのかペガサス、そして天虎!
モフモフしたいっ!!
神の遣いだと聞いたくせに、ただのモフモフ生物扱いだ。まぁ、神様といってもあのおじいちゃんなので、敬えと言う方が無茶だったりする。
「はぁ、いいなぁ……でも、簡単には会えなそうだね。」
「まあな、俺も見た事ないし。ペットに出来て可愛いのって言ったら毛玉ウサギとかエリマキネコ、あとはミニテンに火炎犬かな。」
因みに毛玉ウサギは名前のまんま、丸い毛玉っぽいウサギさんである。手触りはモッフモフで色も様々、よくなつくので人気のペットだそうな。
エリマキネコは大型の長毛ニャンコで、マフラーにしたくなる程ツヤツヤ、ツルツルの素晴らしい毛並みらしい。色はシルバーかホワイトだ。
ただし、もの凄いツンデレさんなので、子猫の時に認めてもらわないとペットになってくれないそうだ。
飼い主にだけ全力で甘えて、他人にはそっけないという猫好きには堪らないニャンコである。
ミニテンは小型のテンで、大人になってもポケットに収まるサイズ。とてもフレンドリーな性格なので、小さい子の遊び相手にもぴったりらしい。
色はパステルカラーの多色展開で、自分の瞳の色と同じ子にしたりする人が多いらしい。
最後に火炎犬。一種類だけものすごく物騒な名前がついているが、ペットというよりは使役犬という感じで、牧羊犬として働いたり、狩りの時に獲物を追う猟犬やボディーガードもこなすスーパードッグだ。
見た目はシェパードのような毛並みに体型、体色は白・黒・銀・金とシンプルで、特筆すべき能力はパートナーである人や獣人の危機に際して、口から炎を吐いて守ることらしい。
何だそのマルチな能力。
もはやペットではないだろう。
ユーリから一通りの説明を聞いた美波は、色々と想像してしまったらしく、遠い目をしている。
「うわー。迷うなぁ…でも一番気になるのは火炎犬だな、落ち着いたら検討したい。子犬の時って可愛いんだろうなぁ。」
ユーリは美波のモフモフマニアっぷりに慣れたらしい。遠くに行ってしまっているのを完全スルーしている。
「可愛いぞ、子犬の時は特にな。旅の途中で一緒になった商人の護衛をしていた火炎犬の子犬を見せてもらったけど、あれはヤバイな。
大人になると主人に忠実だし、いいパートナーになる犬だ。」
生活が安定したら、是非とも本格的に検討したいペット候補である。
ユーリとモフモフ談義をしつつ見守っていたが、ハクとユキちゃんが目を覚ましたところで、遊び相手をすることにした。
二人とも初雪にテンションが上がっているが、まだ雪遊びが出来る程の積雪ではないので、本日は室内で遊ぶ。
トランポリンで遊び、いつもの通り美波は早めに離脱する。ユーリに投げられて、キャッキャ言いながら回転する二人を見守り、次はボールプールへ。
こちらは美波でもわりと大丈夫だ。
ボールを両手で掬ってかけてあげたり、ボールの中を泳いでくるのを抱きとめて高い高いをしてあげる。
ひとしきり遊ぶと、木工細工のは材で作ってもらった積み木で遊ばせる。これも美波のアイデアで、室内遊びにぴったりと好評だ。
「お姉ちゃん、見て~!お家だよ。」
「お姉ちゃん、あたしはお城っ!」
上手に出来たねと誉めてあげて、ユーリと共に二人を見守る。
ユキちゃんはすっかり元気になって、よく笑うようになった。一番辛そうな時を知っているユーリは、特に嬉しそうだ。
色々と困ったところはあるものの、基本的にはイイヤツなのである。
「明日は外で遊ぼうな!雪、一杯積もるだろうから色んな遊びができるぞ。」
ユーリの提案に二人とも嬉しそうで、明日はかなりハードな遊びになるだろう。
一緒に遊ぶ体力はないが、雪原を駆け回る子狼とウンピョウの姿を思い浮かべて、美波のニヤニヤは止まらない……




