ハクロウ村、秋の一日
日々気温が下がり、肌寒さは増していく。
本日ハクロウ村は、村人総出でベーコンとウインナーを作成中だ。
スモーク小屋から昇る煙が青空に溶けていく、食欲をはそそる香りだが完成はまだ先だ。
燻製は時間がかかるのだ。
あれから二日、ユキちゃんはだいぶ村に慣れてきた。他の子供達とも打ち解けて、特にナナとマナは自分達より年下の妹分が可愛くて仕方ないらしい。
小さかった頃の洋服をあげたり、髪型をお揃いにしたり、本当の三姉妹のようだ。
ハクとは一緒に暮らしているので、更に仲良しになったらしい、夜は同じベッドで眠り何をするのも一緒だ。
「良かったなぁ、ユキちゃん村に馴染めたみたいで。」
広場でボール遊びをする子供達を見ながら、美波は呟いた。
大人達が忙しいので、本日の美波の仕事は子守りである。例によって一緒に遊ぶ体力はないので傍で見守るのみ、相手をしているのは脅威の身体能力でボールを操るユーリとクロである。
彼等が夢中になっているのはドッジボール、当然美波の発案だ。
五才児にドッジボールはおそらく無理だがそこは獣人の子供、ありえない身のこなしでボールを避けている。
時々ユーリとクロの大人の本気ボールが飛んでくるが、お互いでキャッチするくらいの分別は持ち合わせているらしい。
激戦の末、カケルとハヤテの直接対決はカケルが制したようだ。
「お疲れ様、ホットミルク作ったからどうぞ。」
新作の大きめサイズの魔法瓶には、絞りたてのミルクを鍋で作ったカラメルソースと混ぜて温めた、特製のホットミルクが入っている。
プリンを作ったあと、鍋に残ったカラメルソースが勿体ないのでミルクを入れて温めたら激ウマだったので、副産物から正規メニューに昇進したのだ。
カップに注ぐとフワリと甘い香りが漂う、美味しくない訳がない。
「熱いからフーフーしてね、美味しい?ユキちゃん。」
小さな手でカップを包み、素直にフーフーしてから舐めるようにミルクに口をつけている。
可愛すぎだ!
「おいしいっ!甘いねぇ、お姉ちゃん。」
美波はむしろその笑顔にトロけそうだ。
「そう?良かった。ゆっくり飲んでね。」
他の子供達も初めての味が気に入ったらしく、盛大にしっぽを振りながら夢中になっている。
ついでにいい大人の男二人も夢中らしい。
クロのしっぽでハクがよろけている、大人の狼のしっぽを甘く見てはいけない。
すぐにハクを救出し、膝にのせてあげる。ありがとうと微笑むハクを抱き締めて、美波もカップに口をつけた。
「んー。美味しい。モコのミルクって本当に美味しいね。」
「美波、おかわりっ!」
ユーリのカップにおかわりを注ぐと、すかさずクロもカップを差し出す。最後の一滴まで注ぐと満足そうに口をつける。
もはやユーリは美波の中で、手のかかる弟というポジションに落ち着いたらしい。
慣れって怖い……
「じゃあ、私はお昼ご飯の手伝いに行くから、二人とも子供達をお願いね。」
任せとけと胸を張るいまいち頼りない二人にあとを任せて、美波は公民館へ向かった。
本日は協同作業で頑張る村人達の為に、お昼ご飯を作るのだ。
狩りでイノシンと共に仕留めてきた、大型のカモの様な鳥の肉でシチューにする予定だ。
既に処理済みでお肉になっているカモ肉を、数人で手分けしてミンチにしていく。
そこに卵・玉ねぎ・ハーブ・塩・胡椒を加えて混ぜ、ゴルフボール大のお団子に。これをお湯を沸かした大鍋にどんどん入れていく。更にジャガイモ・人参・玉ねぎを入れて煮込む。
別鍋で固めに作ったホワイトソースを、このスープで伸ばしつつ混ぜれば完成だ。
カモ肉団子のクリームシチューである。
あとは手打ち生パスタをトマトソースで和えたものと、コールスロー(キャベツ・人参・玉ねぎ・酢・塩・砂糖・胡椒・オイル)を添えれば完成だ。
ちなみにシチューはユーリ用に、キノコたっぷりバージョン肉抜きを別にしてある。
お昼の鐘と共に集まってきた村人達とお昼を食べていると、シロガネ様から声がかかった。




