後二日なので、会議です
フェラリーデ様達の来訪まであと二日、美波は冬に向けて役立ちそうなアイデアを書き出していた。
自宅のリビングに集まっているのは、ミチルとルリさんにミナトさんである。
まずはこの辺りの冬はかなりの雪が積もり、春までは町へ行くのが厳しいということ(行くならソリが必要)を前提に考える。食糧の備蓄は当然必要だ。
「大型冷凍庫があるから、狩りの獲物の肉は塩漬けしなくても保存出来る、ジャムやトマトソースにピクルスなんかは作り置き出来ているし、小麦粉や豆も充分あるな。いつもの冬よりはだいぶ楽だ。」
ミナトさんに言われ暫し考える、逆にとると冬の間は新鮮な野菜が食べられないという事か。
「あの、思いきって冬でも野菜の採れる畑を作りませんか。ドームハウスの底を長方形にして、壁を日光を通す素材にします。その上で室内の温度をコントロールすれば葉物野菜などか育てられます。」
ルリさんが身を乗り出してくる。
「面白いアイデアだな、雪の中で野菜が育つのか。
試しに畑の一部で実験してみてもいいんじゃないか。」
「水やりは回りの雪を解かせば、スプリンクラーという高速で回転する器具を配管に繋げばクリア出来ます。ルリさんに魔方陣を書いてもらう必要がありますが。」
「なるほど、収穫までのサイクルの短い葉物なら何度も採れるな、提案してみよう。他に何かあるか?」
美波は最初の頃に発見してずっと気になっていた、プールのそばのシブガキの木の実での干し柿作りを提案した。今までは使い道がないので放置していたらしいが、きちんと処理すれば甘い干し柿になるはずだ。
「あの実って食べられるの?子供の頃みんな一度はかじってみるけど。痺れるほど渋いわよ。」
かじったんだ、ミチルって意外とやんちゃな子だったのねと、びっくりしながら説明する。
「元の世界にもあったんだけど、皮を剥いて冬の寒い時期にヘタの所を結んで繋げてぶら下げた柿を、雪や雨の当たらない所で干すの。そうすると甘くなって全く別の食べ物になるんだよ。
条件によって日数に差はあると思うけど、実の回りが白くなれば完成だったと思う。」
おぼろげな記憶だが、もう一度鑑定すれば細かい作り方も表示されるだろう。
「噴水広場に仮設の小屋でも建てて、そこでまとめて作っても良いと思うんだけど。」
甘くて美味しい保存食という事で、これも村人を集めた集会で提案する事になった。
あとは冬の雪と寒さ対策について幾つかアイデアを出した。まずは屋根の雪下ろしをしなくていい様に、屋根に貼り付けてその回り何メートルかの雪を解かしてくれる、オセロのコマ位の透明のシール状の物。
村の屋根は木製だが、どんな素材でも貼り付けられる様に作れば、簡単に取り付けられるはずだ。透明なので景観も損ねない。
同じ原理で村内の道に設置する、ライトと雪を解かす役目を兼ねたレンガ的な物も提案する。等間隔に置けば内側の雪を解かしつつ、夜になれば光る仕組みだ。
また主な暖房の手段が薪なので、森の整備の為に伐る木で賄えるのか確認した所、いつも節約して使っているとの事だったので、オイルヒーター的なパネルの設置も提案する。これはハナビラドリやモコ達の小屋にも使えるだろう。
「雪かきの手間が無くなれば、その分木工細工や編み物に時間を使えるわ、いいんじゃないかしら。」
ミチルも乗り気だ、他に防寒防水のブーツや薄手のあったかインナー等も提案する。全て集会で話し合う事になった。
「村の中ならこんな所でしょうか。フェラリーデ様がびっくりするような、もっと大がかりなアイデアって何かありますか?」
美波の問いにミナトさんは、暫し考えてから答えた。
「雪下ろしと地面の雪を解かして尚且つライトになるのは、町や何なら街道でも使えるんじゃないかな。
まぁ街道は雪ありきでソリで移動する人もいるから、一部分だけ雪が無くても駄目かもしれないが、町中なら便利なんじゃないか。」
ミチルとルリさんも同意している所をみると、冬場の雪かきは重労働の様だ。美波は元の世界でも関東平野の、雪なんて年に一度か二度積もるか積もらないかという所にいたので、あまり実感がない。
「なるほど、じゃあさっきのブーツや何なら撥水防寒のツナギなんかも、町の門番や警察の人には良いかもしれないですね。」
他にも売り物ではなく無償提供しても大丈夫で、役に立ちそうな物がないか考える。
「大型冷凍庫は運んでくれるなら、作るのは全然OKですよね。個人用じゃなく町の備蓄用なら無料でも大丈夫そうだし。パネルヒーターも、公共施設限定なら配布しても良いかもしれません。特に孤児院や病院なんかは暖かくしないといけないですしね。」
他に何かないか更に考える。
「夜間の緊急用に、ソリや馬車に取り付けるライトとかどうでしょう。前方を集中して照らすんですけど、かなり先まで見えるので高速で走っても大丈夫です。村や町の規模に合わせて、自治体で管理して使用するなら大丈夫そうですね。
この前の懐中電灯のパワーアップした物も幾つかあっても良いかもしれないですね。」
とりあえずこんな所かな、という事でひとまず解散して、美波は畑以外のグッズの試作品を作る事にした。
この日の夜までに仕上げた試作品は、公民館に運びいれて集会の準備は万端だ。




