露天風呂を作ります
フェラリーデ様が村に来るまでの間に、美波は何か新しい物が作れないか考え、出来そうな物を試す事にした。手始めにずっと温めていたアイデア、露天風呂を作ることにして、許可を取り場所を確保する。
建設場所は川のそばの貯水池の横に決まり、ルリの協力のもと早速作り始める。そろそろ肌寒くなってきたので楽しみだ。
ベースはドームハウスで屋根の半分を可動式にする、半分を洗い場もう半分が湯船で更に中心に壁を作り男湯と女湯に分けた。
脱衣所は少し小さめのドームをそれぞれつなげて男女別に。給水と排水の浄化機能をつけて、炭酸水の作り方を応用しジャグジーになるボールを作る。お湯に沈めれば泡が出て、ジャグジーになるという訳だ。
朝から取り掛かりお湯を張り、夕方には完成した。
「皆さん、露天風呂が完成しました。
男女別の脱衣所で服を脱いで、まずは洗い場で体を洗って下さい。そのあと湯船に浸かって寛いで下さいね。
あと、毛だらけになってしまうので狼姿での入浴は禁止です!」
美波の説明を行儀良く聞いていた村人達は、男女に別れて初めての露天風呂体験だ。
ジャグジーボールもスタンバイ済みで、子供用にアヒルさんも作り、美波はリンやルリさんと一緒に湯船に浸かる。
「あ~っ、気持ちいい。やっぱり露天風呂はいいなぁ~。」
掛け流しの湯量豊富な湯船のへりに腕をのせ、こうでなくちゃとご満悦だ。村人が一度に全員入れる広さの湯船はあえて真っ白にしたので、夕陽を映して赤く染まっている。
「気持ちいいわね。美波の家で入らせてもらって分かってたつもりだけど、外で入るのはまた別ね。」
うっとりしつつお湯に浸かるリンに、ルリさんも同意する。
「確かに。こんな発想はなかったが最高の気分だ。」
他の女性達も気に入ったらしく、ジャグジーボールも大人気だ。ナナとマナはアヒルさんで遊んでいて、ハクと一緒に入り損ねた美波は念願叶ってお風呂でアヒルさんと遊ぶ子狼を堪能した。
男湯からも子供達の歓声が聞こえてくる、あちらはやんちゃなタケルとハヤテがいるので予想はしていたのだが……
「コラッ!泳ぐな!潜るな!タケルっハヤテっ!」
「まったく、あの子達は…」
溜め息をついているのは二人の母親のコズエさんだ。声の主は二人の父親のライさんらしい、あの二人が全力ではしゃいだら大変そうだ。
「コラッお前ら、父ちゃんの言うこと聞けっ!」
イツキさんの声の後二人の「ごめんなさ~い」が聞こえてくる。首根っこをつままれてプラ~ンとなっている姿が浮かんで思わず皆で笑ってしまった。
「ごめんなさいね、うるさくて。」
「いいえ、初めてだから嬉しくてはしゃいじゃったですよ。二人ともやんちゃだけど、一番小さいハクには優しいしとってもいい子ですよ。」
美波の言葉にコズエさんは嬉しそうだ。
思う存分露天風呂を堪能して、リンと一緒に脱衣所を出た。
外には涼む為にいくつかベンチが用意され、冷えたお茶やジュースの入った冷蔵庫が置かれている。
すでに出ていたギンやハクと一緒に喉を潤していると、シロガネ様がミナトさんといらっしゃった。
「お祖父様とお義父さんもお風呂ですか。今ならのんびり入れますよ、子供達は上がったみたいですから。」
はしゃぎすぎてのぼせ気味のカケルとハヤテはベンチの上でジュースを飲んでいる。
「あぁ、少しずらして来たんだ。楽しんでくるよ。」
「美波の自信作なんだろう?ゆっくり入ってくるよ。ハクにも勧められたからからな。」
「大じいちゃま、おじいちゃま今度は一緒に入ろうね。」
ハクにバイバイと手を振られて、二人は露天風呂へ。
「何か旅行に来たみたい。こらから毎日でも入れるなんて、贅沢だなぁ。」
しみじみ言う美波に、回りの村人達からは旅に出たってこんなのないぞと、つっこみが入る。
毎日こつこつ働いてその日の疲れをお風呂で癒す、なんて幸せな生活だろうか。
明日も頑張ろうと自然に思えるのは、何て贅沢な事だろう。
星が煌めく夜空に、ドームの上から立ち上る湯気が重なっている。村人達の笑い声と幸せなざわめきの中、美波はこの穏やかな時間に幸せを感じていた。




