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ボールとジャンケン

残り2時間、噂を聞きつけて来てくれたお客様に売り切れを告げるのも心苦しいと思った美波は、思い付いた事をミナトさんに提案してみた。


「ミナトさん、商品も減ってきてしまったので、村で子供達に作ったボールを沢山作って透明のケースに、こうドーンと入れて、一回いくらでジャンケンして勝ったら三個あいこで二個、負けたら一個みたいな感じで売るのはどうでしょうか。

私の能力も別に隠す必要は無いですし、売り切れでがっかりして帰るお客様へのサービスの意味も込めて、どうでしょう。」


暫し考えたミナトさんは、即座に値段を決めてくれた。子供のおこづかいでも買えるように、銅貨十枚で一回だ。


「いいだろう、やってごらん。

美波はひたすら色んな色のボールを作ってくれ、クロとギンはジャンケン担当にしよう。

あとアレも作ってくれるかな、あの大きめのボール。勝った人は小さいボール三個か、大きいの一つか選べるようにしよう。」


「了解です!すぐ作りますね!」


美波はすぐに一メートル四方の透明ケースを作り(取り外せる蓋つき)、思い付くままに色を変えてボールを作っていく。

ハクは目の前に出てくる大量のボールに大興奮で、しっぽをブンブン振りながら歓声を上げる。

道行く人も足を止めて、見物人が増えていく。


「皆さん、このカラフルなボールはお子さんの玩具に最適ですよ!こうして地面に当てれば弾んで、投げれば真っ直ぐに飛びます!」


そう言ってリンはハクにボールを投げ、追いかけたハクは見事なジャンピングキャッチを披露した。

おーっ、とどよめく群衆ににっこり笑って一礼する。


「一回銅貨十枚でジャンケンにチャレンジ出来ます!勝てばこのボール三個か、こちらの大きなボール(ここでギンとクロがバレーのトスを披露する)

あいこで二個、負けても一個もらえます!

ここでしか手に入らないですよ~!

いかがですか~?」


すかさずアキトさんが値段の書かれたボードを、箱の前に持ってくる。何というチームワーク!

さすが狼だ、群れの結束は固い。

横目にそんな光景を見て感心しつつ、美波はひたすらにボールを量産してゆく。


一回やりたい!お母さんやりたいよ!

おじいちゃまやっていい?俺もやるぞ!

子供達と一部の大人の心をガッチリ掴んだようだ。


結局クロとギンだけでは足りず、リンとカエデさんもジャンケンに駆り出され、ミチルは一人でジュースとクッキーを売り、ミナトさんはボールの代金を受け取り、アキトさんは懐中電灯と魔法瓶を一人で担当する。こうして祭り終了の四時まで、大人達はひたすら働いた。


そして四時の鐘が鳴る……

やりきってぐったりした大人達と、最後のお客様に

バイバイと手を振るハク。


「終った…学生時代のバイトよりキツイかも。」


「よくやったわ、美波。クッキーも初日の分は完売よ。」


疲れきった美波とミチルを尻目に、一人で売上金のチェックをするミナトさんは悪い笑顔だ。

予想以上の売上らしい、ボールでジャンケンが思いの外ヒットしたのだ。一回約百円だけれど美波が作っている為原価はゼロ、全てが利益だ。

子供だけでなく大人もチャレンジしていたので、大きいボール欲しさに何回もやる人もいて、かなりの人数になっていた気がする。


「美波、これは明日以降も是非やろう。今回は元からかなりの売上を見込んでいるから、村の利益は充分だ。このボールの売上金はコザクラ町の孤児院に寄付しようと思う。

シロガネ様の許可は必要だか、反対はなさらないだろう。今までは村として寄付をする程の余裕は正直無かったけれど、美波のお陰で今回は余裕がある。

困っている子供達のために役立ててもらおう。

ボールもプレゼントしたいな。」


ミナトさん!悪い笑顔なんて思ってスイマセンでした!!心の中で華麗な土下座を決めた美波だった。

何ていい人だミナトさん。さすがクロとリンのお父さんでハクのお祖父ちゃん。


「もちろんです!ミナトさん。明日の開店までに縁まで目一杯ボールを作りますよ!」


みんな疲労困憊だけれど、何だか清々しい気持ちになった。

自由行動組も集まってきて帰り支度を始めると、コザクラ町の専属魔法使いがやってきた。


「お疲れ様です、噂になってましたよ。ほぼ完売じゃないですか?」


にっこり笑うその人は人虎族の女性で、一日の終わりにそれぞれの店に魔法でロックをかけ、品物が盗まれないようにするそうだ。

あっという間に結界の様な物を張り、一枚の紙で出来たカードをミナトさんに手渡す。明日の朝このカードで結界に触れて「解除」と言えば結界は消えるらしい。すごいぞ魔法使い。


「では、明日もよろしくお願いします。」


虎の魔法使いさんは、しなやかなしっぽを揺らしながら次の店へと去っていった。


「よし皆、忘れ物はないな?帰るぞ!」


ミナトさんの掛け声で全員で馬車へと向かい、帰りは荷物が無いので皆で荷台に乗った。

初めて改良型の馬車に乗る人は、あまりの揺れの少なさにびっくりしている。

自由行動組に御者役を任せ、販売担当組は全員寝入っている。大人は外なので人型のままだか、ハクは調整出来ないので、子狼姿でミナトさんとカエデさんの膝の上だ。

茜色に染まる空の下、心地好い疲労感に美波も村に着くまでミチルに寄りかかって熟睡してしまった。

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