秋祭りの準備
新居に越してからも、日々は穏やかにすぎてゆく。
ハクとミチルはしょっ中泊まりに来るし、バスタブの普及活動も順調で、おそらく近い内に露天風呂を作る事になるだろう。
そんな訳で、季節はいつの間にか秋である。
日中はまだ半袖で大丈夫でも、朝晩はもう肌寒い位だ。
ハクロウ村は今、秋祭りを三日後に控えて村人総出で準備に追われている。ミルモンアイスを大量生産し、女性達の頑張りで完成したカップ型コーンを、オーブンフル稼働で焼く。木工職人見習いの若者が作った木匙も完成している。
そして新商品として作ったのは懐中電灯、手持ちの携帯タイプという事でランプとは競合せず、主に長距離を移動する商人達がターゲットだ。
思いがけず街道の途中で野宿するハメになった時、魔石切れでランプが使えないと夜行性の獣が寄ってくるので危険らしい。
非常用として、あるいは薪拾いに森に入る時などに使用してもらおうという訳だ。価格はランプに使う魔石二十個分くらいで、高いけれど魔石がいらないならあったら便利かも、という絶妙な設定だ。
もちろんリサーチはミナトさんである。
もう一つは木製の筒にきっちり閉まる蓋をつけた、スープ用の魔法瓶を作った。内側は美波の能力でコーティングしスープを熱々に保てる仕組み、筒の側面には様々な意匠の彫り物がしてあり、好みのデザインを選べるようになっている。
これからの季節お弁当に熱々スープをどうぞ、というコンセプトだ。この辺りは冬場は雪が積もりかなり寒くなるらしいので、長距離移動の商人も使ってくれそうだ。宿でスープを詰めてもらい昼食にそれを食べて次の町へ、という訳だ。
機能を試してもらえないのがネックだが、ハクロウ村の製品は信用があるし、例のランプと冷蔵庫も話題になっているので、その辺りは問題なさそうだ。
こちらはそもそも類似品が無いので、お手頃価格での販売となった。
あとは、美波が思いつきで子供達のおやつ用に開発したソーダ水である。
水に浸けると二酸化炭素を発生させ程よい炭酸水にしてくれるボールを作り、出来上がった炭酸水に色々な果実で作ったシロップを混ぜてジュースにするのだ。
冷やした状態で炭酸水を保存できる容器も作ったので、店頭でシロップを選んでもらいその場で混ぜて提供する。真っ赤なベリーに紫色の双子ベリー、黄色のレモンシロップなどカラフルなラインナップだ。
コップについては悩んだ末に、透明なプラスチックの密閉された筒を作り、その後真ん中で切断するという発想の転換で、包まなければならないという縛りをクリアした。
使用後は回収して「消えろ」で処分すればごみ問題もクリアだ、アイスのカップもこれで行けたんじゃと、ちよっぴり落ち込んだ美波だったが、器が食べられるとかないから!絶対こっちの方がウケるから!という村人達の声に励まされた。
例年の倍のスペースを借り、村をあげての一大イベントだ。張り切った美波はお揃いのTシャツまで作ってしまった、ロゴは走る子狼のシルエットで白地に黒の子狼だ。もはや文化祭のノリである。
ミルモン入りのクッキーも量産して、試食用も確保してある。
そうして三日間にわたり村人総出で準備した結果、予定通りの分量が用意出来た。
コザクラ町の秋祭りは三日間に渡って行われるが、村を空にする訳にはいかないので村人を三つのグループに分け、売り子は交代制で皆それぞれ一日はフリーでお祭りを楽しめるようシフトを作った。
食品はかなり多目に用意したが、一日目の様子を見て売り切れになりそうなら、二日目の村の待機組が作り最終日に備える事にした。
ミルモンアイスは大量に作りおきしてあるし、ジュースは水さえあれば大丈夫なのでおそらく問題はないだろう。




