群れの一員として
集合場所へ向かいながら、思わず息を吐く。
「なんか緊張したね、ミチル。
エルフって長く生きているせいなのか、怖いっていう訳じゃないけど、こう恐れ多いっていうか。
威厳があるよね、王様とご対面なんて事になったら倒れそうだよ。」
ミチルは美波の頭に手をやり、優しく撫でる。
「フェラリーデ様は確かに威厳があるけど、普通にいい人よ。話も分かるし、シロガネ様とも仲良しだしね。シロガネ様が子狼だった頃から知っているみたいで、村にいらした時には昔話をしてもらったものよ。
それにエルフだからって、皆が皆あんな風に上品て訳でもないしね。見た目は綺麗でもすごく残念なエルフもいるものよ。」
遠い目をしてミチルが言う。
残念なエルフって何だ?気になったものの、あまり追求しない方が良さそうだ。
暫く歩くと馬車が見えてきた、すでに何人か集まっている。
着替えてくると言うミチルと別れ、ミナトさんとイツキさんの元へ向かった。
「よう、美波。楽しんできたか?」
どうやら取引はうまくいったようで、イツキさんはご機嫌だ。
「はい。お買い物も出来ましたし、役場で手続きもしてきました。」
「それは良かった、こちらの取引も問題なくすんだよ。予定通りの値段で取引出来たし、町長に挨拶して冷蔵庫と照明もプレゼントしてきたよ。
注文依頼が殺到しそうな予感だね。」
やはり上手くいったらしい、ミナトさんも笑顔だ。
あとは売れてくれる事を祈るばかりだ。
砂糖や日用品、同行した村人達の荷物で一杯の荷台に、洋服の入った袋を置かせてもらう。
集合時間が近くなり、村人達も揃ったようだ。
「全員いるか?出発するぞ!」
イツキさんの言葉に応えて、ギンとクロが馬車を走らせる、帰り道も順調で早めに村に辿り着いた。
荷台から荷物を下ろし、ミノリとアキトさんがブラックホースを川へと連れていく。
馬車を引いてくれたお礼に、体を洗って野菜と砂糖をあげるのだ。馬達は嬉しそうに、足取り軽く川の方へ消えていった。
個人の買い出しと分けて、共有財産となる砂糖などを公民館へ運び込んでいく。マッチョな男達のお陰であっという間に荷台は空になる。
売上分から必要経費を引いた額を、村人全員で分配していく、美波も頂いたが今回は高額品が売れたので、いつもよりかなり多めらしい。
ミナトさんから報告を受けたシロガネ様が、村人達に手渡していく。
「美波の分だ、村の為に素晴らしい品を作ってくれたこと感謝している。
役場での手続きも滞りなく済んだか?」
「はい、シロガネ様。フェラリーデ様が村へいらした時、王様への献上品について相談にのっていただく約束もしました。
でも、ランプや冷蔵庫は村の皆さんと協力して作った物ですし、何の後ろ楯も持たない私を受け入れてくれた皆さんへの、恩返しだと思っています。
お礼を言われる様なことは何もしていません。」
シロガネ様は笑みを浮かべて美波を見つめる。
「私達も当たり前の事をしただけだよ、お互いに感謝の心を持ってこれからも仲良くやっていこう。
子供達もなついているし、友人も出来たろう?
美波はもう家族だよ、一時的ではなくハクロウ村の一員にならないか?」
シロガネ様の言葉に、美波の視界が歪んだ。祖父母がいなくなってからずっと一人だったのだ、恋人を作る気にもなれず、一生一人だと思っていた。
「いいんですか?私、色々と規格外の人間ですよ。」
シロガネ様は席を立ち、美波を抱き締める。
「世界を超えてこうして出会ったのも何かの縁だ。
美波はもう私の孫みたいなものだよ、村人達の総意だ、君はもう家族だ。」
「ありがとうございます、シロガネ様。
ずっと一人だったので、すごく嬉しい……」
涙が止まらなくなってしまった美波を、シロガネ様は優しく抱き締めてくれた。周りの村人達も口々に歓迎の言葉を口にする。
異世界で、美波はようやく自分の居場所を見つけたのだ。優しくて強い、狼達の群れの一員として、
この世界で生きてゆく。




