表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/133

群れの一員として

集合場所へ向かいながら、思わず息を吐く。


「なんか緊張したね、ミチル。

エルフって長く生きているせいなのか、怖いっていう訳じゃないけど、こう恐れ多いっていうか。

威厳があるよね、王様とご対面なんて事になったら倒れそうだよ。」


ミチルは美波の頭に手をやり、優しく撫でる。


「フェラリーデ様は確かに威厳があるけど、普通にいい人よ。話も分かるし、シロガネ様とも仲良しだしね。シロガネ様が子狼だった頃から知っているみたいで、村にいらした時には昔話をしてもらったものよ。

それにエルフだからって、皆が皆あんな風に上品て訳でもないしね。見た目は綺麗でもすごく残念なエルフもいるものよ。」


遠い目をしてミチルが言う。

残念なエルフって何だ?気になったものの、あまり追求しない方が良さそうだ。

暫く歩くと馬車が見えてきた、すでに何人か集まっている。

着替えてくると言うミチルと別れ、ミナトさんとイツキさんの元へ向かった。


「よう、美波。楽しんできたか?」


どうやら取引はうまくいったようで、イツキさんはご機嫌だ。


「はい。お買い物も出来ましたし、役場で手続きもしてきました。」


「それは良かった、こちらの取引も問題なくすんだよ。予定通りの値段で取引出来たし、町長に挨拶して冷蔵庫と照明もプレゼントしてきたよ。

注文依頼が殺到しそうな予感だね。」


やはり上手くいったらしい、ミナトさんも笑顔だ。

あとは売れてくれる事を祈るばかりだ。


砂糖や日用品、同行した村人達の荷物で一杯の荷台に、洋服の入った袋を置かせてもらう。

集合時間が近くなり、村人達も揃ったようだ。


「全員いるか?出発するぞ!」


イツキさんの言葉に応えて、ギンとクロが馬車を走らせる、帰り道も順調で早めに村に辿り着いた。

荷台から荷物を下ろし、ミノリとアキトさんがブラックホースを川へと連れていく。

馬車を引いてくれたお礼に、体を洗って野菜と砂糖をあげるのだ。馬達は嬉しそうに、足取り軽く川の方へ消えていった。


個人の買い出しと分けて、共有財産となる砂糖などを公民館へ運び込んでいく。マッチョな男達のお陰であっという間に荷台は空になる。

売上分から必要経費を引いた額を、村人全員で分配していく、美波も頂いたが今回は高額品が売れたので、いつもよりかなり多めらしい。

ミナトさんから報告を受けたシロガネ様が、村人達に手渡していく。


「美波の分だ、村の為に素晴らしい品を作ってくれたこと感謝している。

役場での手続きも滞りなく済んだか?」


「はい、シロガネ様。フェラリーデ様が村へいらした時、王様への献上品について相談にのっていただく約束もしました。

でも、ランプや冷蔵庫は村の皆さんと協力して作った物ですし、何の後ろ楯も持たない私を受け入れてくれた皆さんへの、恩返しだと思っています。

お礼を言われる様なことは何もしていません。」


シロガネ様は笑みを浮かべて美波を見つめる。


「私達も当たり前の事をしただけだよ、お互いに感謝の心を持ってこれからも仲良くやっていこう。

子供達もなついているし、友人も出来たろう?

美波はもう家族だよ、一時的ではなくハクロウ村の一員にならないか?」


シロガネ様の言葉に、美波の視界が歪んだ。祖父母がいなくなってからずっと一人だったのだ、恋人を作る気にもなれず、一生一人だと思っていた。


「いいんですか?私、色々と規格外の人間ですよ。」


シロガネ様は席を立ち、美波を抱き締める。


「世界を超えてこうして出会ったのも何かの縁だ。

美波はもう私の孫みたいなものだよ、村人達の総意だ、君はもう家族だ。」


「ありがとうございます、シロガネ様。

ずっと一人だったので、すごく嬉しい……」


涙が止まらなくなってしまった美波を、シロガネ様は優しく抱き締めてくれた。周りの村人達も口々に歓迎の言葉を口にする。


異世界で、美波はようやく自分の居場所を見つけたのだ。優しくて強い、狼達の群れの一員として、

この世界で生きてゆく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ