人工魔石と魔方陣
共同作業でチーズ作りをしていたルリさんを、事情を話して呼び出してもらい、ミナトさんの案を伝える。ルリさんは380才位の、黒耳に紺の瞳の長身美人で、まさにクールビューティーという感じの女性だった。
「なるほどね、興味深い。成功すれば魔石を使わずに魔方陣が起動できるという事か。
実現すれば、今まで予算的に諦めていた物が色々作れるな。協力しよう、さっそく実験だ。よろしく美波。」
う~ん、何だか男前。女子校なら確実にファンクラブが結成されるぞ。
「よろしくお願いします。まだ魔石についてよく知らないんですが、教えてもらえますか?」
ルリさんの自宅へ移動して、まずは魔石についての講義を受ける。要約すると、魔石とは特定の鉱山で産出される魔力を蓄えた鉱物で、質やサイズによって含有する魔力が異なるそうだ。主に魔方陣と組み合わせて使用し、魔力が切れると再利用は出来ない。石炭のような物だと理解すれば良いだろう。
「なるほど、よく分かりました。では、私は魔力を内側に蓄えた物を作ればいい訳ですね。」
「そういう事だ、試しにこのランプで実験しよう。
これが魔石だ、同じくらいのサイズで作ってみてくれるか?」
差し出されたのは、掌に乗るゴルフボール大のキラキラした黒い石、これが魔石か。
「はい。やってみますね。」
美波は集中してイメージする、ゴルフボール位のサイズ、内側に魔力を込めて…適量が分からないのでとりあえず、ムンッ。と気合いを入れて魔力を流し込む。
出来上がったのは、真っ白なセラミック風な質感の人工魔石だ。
「出来ました。魔力の適量が分からないので、適当に入れてみたんですけど、どうでしょう。」
ルリさんは、魔石を手に取り愕然とする。
「おい、美波。この魔力量でこのサイズだと、大型の輸送船が買えるぞ。聞いてはいたが、とんでもないな。」
どうやら入れすぎたらしい。しかしこの程度の出力でその反応なら、かなり効率は良いのではないだろうか。
「使えそうですか?」
ルリさんがランプに人工魔石を取り付けると、灯りが点った!!
「成功だな!凄いぞ美波、これがあればどんな大がかりな魔方陣も起動できる!!」
「良かった!この位の人工魔石ならすぐ作れます、さっき相談したアイスクリームを作る為の、回転する羽を動かす魔方陣を作ってもらえますか?」
「勿論だ。さっそく取りかかろう。」
その後、ルリさんと相談しながら羽のデザインと保冷容器のサイズを決定し、魔方陣を書いてもらった。羽の部分はイツキさんに説明して作ってもらう、さすがの職人技で仕上げてくれた。
保冷容器に、魔方陣を組み込んだ羽をセットして、羽の窪みに人工魔石をはめる。
「回れ!」
やった!成功だ。羽は滑らかに回転している。
「ありがとうございます、お二人共。成功です。
これでアイスクリームが大量生産出来ます!」
さっそく明日、ミルモンアイスクリームの試作をする事を約束し、二人に礼を言う。
するとルリさんもやはり女の子、甘いものに目がないようで、逆にお礼を言われてしまった。
人工魔石の作成に成功した事で、ルリさんの魔方陣の技術と、美波の知識と能力を組み合わせれば、この世界に無かった品々を作り出せるようになった訳だ。
ただし、慎重にならなければならない。
この美しい世界の自然を、壊す事が無いように。
人々の仕事を奪う事が無いように。
よく考えた上で、皆が喜んでくれて、生活が楽しくなる道具を沢山つくろう。
美波はみつけたのだ、この世界で自分にしか出来ない事を。




