商品企画会議
食後に村の会計担当のミナトさんと、町で売る予定のランプと冷蔵庫について相談する事になった。
クロとリンの父親であるミナトさんは、黒耳に金と青のオッドアイのダンディーなおじさまだ。
木工細工を得意とする男達が、先日まとめたデザイン案を元に話し合う。いくつか試作品も作ってくれていたので、美波の能力で仕上げてみる事にした。
冷蔵庫は上下に扉の二つついた、凝った意匠の彫刻が施された物に、それぞれ冷蔵と冷凍機能をつけ、ランプは花の茎を模した優美な土台に鈴蘭の様な形にした照明を取り付ける。ガレのランプみたいでため息が出るほど美しい。
美波の元の世界の美術品の知識が役立った、あくまでガレ風だけれど、この世界には無かった造形美だ。
「うん、良いね。あえて手の込んだデザインにして、価格も高めに設定すれば、町の職人の領分を侵す事にはならないだろう。
一般庶民ではなく大商人や王都のエルフ達を相手にすれば、問題はないはずだよ。
念のため町長に、共有スペースで使える簡素な照明と、備蓄用の大型冷蔵庫を提供すれば角も立たないだろう。」
なるほど、さすが会計担当。大人な対応だ。
「そうだな。じゃあこの辺のデザインで幾つか作ってみるか。手分けして作業すれば早めに仕上がるだろう、若いのにベースを作らせてベテランが細工をして、共同制作にして売り上げを皆で分けよう。」
村一番の木工細工職人のイツキさんが言う、茶色の耳に黒い瞳のがっしりした体格の壮年の男性だ。
お髭が素敵なワイルド系オジサマだ。格好いい。
「そうだね、かなりの現金収入が見込めるだろうし、美波のお陰でできた商品だから、平等に分配しよう。
後は、砂糖を多めに購入しようかと思う、町の秋祭りに例のミルモンを使ったお菓子を販売するのも良いと思うんだが、どうだろう 。」
秋祭りはフリマの様にスペースを借りて、村人自ら販売できるそうだ。
お菓子の販売、確かに売れそうだ。何より女性達が参加出来るので、男手のない家の女性達も気がねなく、売り上げ金の分配を受け取れるはずだ。
「良いですね、協力します。
元からあるクッキーやケーキに加えてもかなり美味しい物が出来るはずですし、店頭で試食を用意すれば、美味しさが分かってもらえると思います。
あと、あまり寒くないならミルモンアイスクリームの販売もアリかもしれません。保冷用の冷凍庫はすぐに作れますから。」
「そうだね、秋祭りの時期はまだそこまで寒くないし、良いかもね。ただ、大量に作るとなると大変じゃないか?アイスクリーム作りは、途中で何度かかき混ぜるんだろう?」
そうだった。三十人分でも結構大変だったのに、お祭り用だ。人海戦術でいけるか?
「忘れてました、そうですよね。元の世界なら自動で混ぜながら冷やす機械があるので、材料を混ぜればすぐなんですけど、そんな機械は無理ですよね。」
するとミナトさんはあごに手をやり、しばし考えた後ある提案をしてくれた。
「美波さんの能力で人工の魔石が作れれば、目的に合わせた魔方陣と組み合わせて作れるんじゃないかな。十年前に王都の魔術学院を卒業して戻ってきた、ルリという女の子がいるんだけれど、かなり優秀な子だから試してみる価値はあるかもね。
村の水道やトイレの配管システムは彼女の設計なんだよ。会ってみるかい?」
何ですと!つまりルリさんは、機械の設計と電気工事ができるという事か。それに無制限の電力=自作の魔石があれば、可能性は無限大だ!
「是非とも紹介して下さい!」
鼻息荒くお願いする美波に、ミナトさんはにっこり笑って了承してくれた。




