お土産は宝の山?
昼食会の後、村の中を視察したドラゴンとエルフのご一行は、夕方にはコザクラ村へと出発した。
今回は大きな荷物があるので、短距離ではあるがドラゴンに乗っての移動となる為、村人たちの手伝いは必要ない。
ちなみにガイさんとスイさんは、昼食後すぐに王都へ向けて出発した。
美波にかましてくれた爆弾発言についてはそのまま放置して、だ。
「じゃあ美波、お土産はとりあえず全部公民館に運んでおいたからな。新しい味、楽しみにしてるぞ!」
箱の中身を手分けして運んでくれた村の男たちに期待に満ちた目を向けられた美波は、ひきつった笑みを浮かべた。
「運んでもらってありがとうございます、新メニューはゆっくり考えますね」
頑張れよ!と、激励のために肩を叩く手に少しよろけながら皆を見送る。
「はぁ、お祭りが終わってらゆっくりでいいって言われたけど…
レオン様が王都に戻られる前に、何か一品くらいは開発しなきゃだよね…」
山のように積み上げられた食材や調味料はかなりの量だ。
日持ちする物に限定されているので生物こそないが、乾物や豆、粉類に穀物と様々な種類がある。
「とりあえず少しずつ鑑定して目録でも作るかなぁ、和食の食材とかあれば楽なんだけどなぁ」
醤油に日本酒、みりんあたりがあれば悩むこともないのだが、どうだろうか。
「もしくは昆布だね、出汁がとれるしエルフでも大丈夫だし。
あとはお米があればなぁ」
お土産の山を前にう~んと考え込んでいると、扉を開けてミナトさんが入ってきた。
「お疲れ美波、しかし凄い量だなぁ、大丈夫か?」
「ミナトさん…大丈夫ではないですよ。まず何があるか把握するだけで一苦労ですし、期待に応えられるかどうか…」
「そうだな、まぁ急ぐ理由もないし、ゆっくりで良いんじゃないか?一週間以上は滞在されるだろうからな」
そうなのだ。どうやら本気でこのまま春祭り終了まで、ホテルに泊まるつもりらしい。
しかも、この後も続々と王都からの客人がやってくる予定だという。
「そうみたいですね。大丈夫なんですかね、国の要職にある方々がそんな長期間王都を離れても」
宰相や大臣クラスの要人が、軒並み参加するらしい。
「あぁ、今は平和な時代だし急を要する案件については、ドラゴンが大勢いるから連絡も移動も支障はないらしい」
「それもそうですね、でもかなりの人数がいらっしゃるようで、ホテルの部屋が足りるか心配です」
最悪の場合は増築すればよいのだろうが、人数が読めないので心配である。
「なんとかなるだろう。宿泊人数に関しては町の宿屋より融通がきく作りだし、大丈夫さ。
それより美波は忙しくなるな、今日の予定もずれてしまった上にコレだしな」
コレ、と目の前の食材を指したミナトさんは、美波の肩をポンと叩いた。
「村の皆が出来ることは引き受けるから、美波は自分にしか出来ないことに集中していいぞ。
ボールなんかは美波でないと作れないからな」
有り難くミナトさんの申し出を受けることにして、美波は春祭りまでの期間をボール作りと新しいレシピの開発に費やすことになりそうだ。
「頑張ります!まずはこの山を鑑定することから、ですね」
その後夜までかかって目録を作成した結果、未知の食材に混ざって幾つかの使えそうな食材を発見することが出来た。
大豆・餅米・米・昆布・日本酒に、何と醤油と味噌っぽい物があったのだ!
「ふふふ、和食が作れる!お土産多すぎとか思ってごめんなさいレオン様!新しいレシピ余裕で出来ちゃうじゃない、にがりが無いから豆腐は無理だけど、豆乳があれば湯葉が出来るしおからも使える。
きな粉を作ってお餅と一緒に食べても良いし!昆布だしでうどんとかも良いかも!」
和食に使える食材が見つかった事で、美波のテンションは上がりっぱなしだ。この様子なら豆腐を作るのも時間の問題だろう、海辺の町で海水を煮詰めるタイプの製塩法が使われていれば、副産物としてにがりがあるはずだ。
こちらではスープの具や煮込み料理に使われていた大豆も、携帯食材としてそのままかじられていた昆布も、美波にかかればお馴染みの食材である。
その夜、夕飯を一緒に食べようと誘いに来たミチルは、昆布を掲げて喜びの舞を踊る美波を目撃してしまい、たちの悪い毒キノコを食べてしまったと思い、村中に響きわたる悲鳴を上げたそうな。




