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幽霊は悪役令嬢  作者: Yeppie
第三章
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うおー、バイオレンス

「うおー、バイオレンスきたな。」ディルソンはニヤニヤしていた。俺の部屋で俺の作り話を読むのがディルソンの朝の日課になりつつあった。

「え?聖女?王太子殿下暗殺?何だそれ。」今朝はラシャールまで俺の部屋に来て、ディルソンと一緒に俺の作り話を読んでいた。

「あー、うー、まあ、その…無理っぽいかなあ?」俺は二人の様子を見ながら腕組みをした。

「いやあ、バイオレンスいいんじゃないか?少なくともアラウは喜びそうだよ。」ディルソンのニヤニヤが止まらない。

「アラウはこの類のバイオレンスを期待してるとは思えないけど。」俺は苦笑いした。ラシャールは考え込む顔をしていた。


「ベニーモ、これ、聖女なんだけど、これ、普通に処刑されるやつじゃないか?」ラシャールは真面目な顔で言った。

「え?何で?」ディルソンも俺も目を瞬いた。

「だって、恐れ多くも王太子殿下を暗殺なんて風評立てたら、それだけで処罰対象だよ。この、後見人の爆爵?この爆爵も一族諸共打首案件じゃないか?」ラシャールは真面目な顔を崩さない。

「あー、それはこの話がいつの時代かにも依るよなあ。」ディルソンも真面目な顔になった。

「いやいやいや、ラシャール、それっていつの時代だよ。今ならそこまでしない…。」そこまで言って俺は気づいた。「そうか、そうだよね。この話は現代の話じゃ無いから、いつ頃の話にするかで変わるよね。」

「まあ、あとはどこの国かにも依るよ。この話、今までそういう設定書かれてないだろ?そうすると、読むこっちとしては自然にこの国の、フラリアーツの話だって思うよな。まあフラリアーツに爆爵はいないけどな。」ラシャールは気が抜けたような笑いを漏らした。

「そうだよ。何だよ、この爆爵って。豪爵もだけど。真面目なのかふざけてるのか分からなくなるよな。ま、そこがベニーモの味ってやつか?」ディルソンのニヤニヤが戻って来た。

「もういいだろ。朝食に早く行かないと。」俺は俺の作り話を書いた紙を二人から毟り取った。


朝食を済ませ朝のクラスに向かう途中で、マガレータが早足で俺たちへ向かってくるのが見えた。


「ベニーモ様、お早う御座います。」マガレータは俺を見つけると軽く一礼をして素早く俺の側へ来た。アレだ、アレだよね。

「お早う。わざわざどうしたの?」鞄を持つ俺の手に無意識に力が入った。

「ベニーモ様、お聞きました。グレイシア様がベニーモ様の小説の写しをご所望なさったと。素晴らしいです。それで、その、朝の最初の授業の後ですけれども、その、私もベニーモ様の小説を拝見したいと願っております。いけませんか?」あー…。マガレータのテンションがおかしい。いや、いけなくはない、いけなくはないんだが、その…ちょっと近過ぎるよ、マガレータ。ほら、ディルソンとラシャールが笑いを噛み殺してるよ。気づいてる?

「あ…うん…。まあ、いいよ。でも、俺たちのクラスに君が来るのはちょっと困るから、俺がそっちへ行くよ。それで良いよね?」俺は肩を落とし、教室のドアを開けた。

「あ!そ、そうですね。私がベニーモ様のクラスに入るのは、その、そうでした。では、お待ちしてますので、その…ごきげんよう。」マガレータはあたふたしながら平民のクラスへ去って行った。


「えー?いや、別に良いだろ?平民だからって、貴族用の教室に入れない規則はないぞ。」ディルソンは俺の肩を叩きながら俺と一緒に教室に入った。

「ベニーモなりに気をつかったんじゃないか?な、ベニーモ。」ラシャールは俺を横目で見ながら席についた。

「あ!ベニーモ!続き書いた?」アラウが俺たちを見つけて席から立ち上がり、俺たちの横へ移動して来た。

「続きはバイオレンスだぞ。」ディルソンがイタズラっぽく眉を上下させる。

「そういうバイオレンスじゃないよ。」俺は盛大にため息を吐き「この授業の後にマガレータに俺の作り話を見せに行く約束したんだ。」とアラウを見た。

「あ、そう。じゃあ私も付いて行くから。」アラウは口を尖らせた。


朝の授業の後、俺はアラウと平民クラスへ行った。ドアを開けると一斉に俺たちに視線が集まる。平民クラスは学園で一番人数が少ない。今年の一年生は十七人、その中の一人がマガレータだ。

「あ、アラウ様、ベニーモ様!今そちらへ参ります。」マガレータは席を立ち、俺たちの方へ歩いて来た。

「場所を移動しましょうか。」アラウは薄く微笑んでマガレータを見ると、踵を返して通路へ出た。俺はその様子に戸惑いながらもアラウの後ろに付いて行った。マガレータは俺の後ろだ。


学園には中庭が幾つかある。平民クラスの近くの小さな中庭のベンチに俺たちは座った。俺たちの真ん中にアラウは座った。

「さて、ベニーモ。私、期待してるのよ。遂にバイオレンスなんでしょ?」アラウが大きく微笑む。いや、その微笑み怖いって。なんなんだ?俺は鞄から俺の作り話の続きを書いた紙を出した。


「あー、バイオレンスって、これかあ。」アラウはクスクス笑い「確かにバイオレンスだわ。私の希望を聞いてくれたの?」と俺を面白そうに見た。

「違う、残念ながらね、アラウ。俺、これでも真面目に考えてこれなんだ。」俺はマガレータが俺の作り話を凝視してるのを見てハラハラしてた。

「爆爵…。」そうマガレータが呟いて、俺はなんとなく居心地が悪くなった。

「そうよ、爆爵って何よ?豪爵令嬢もよく分からないけど、更にワケの分からない爵位きたわね。」アラウは呆れたような顔をした。

「独創的ですよね、ベニーモ様の書く物語って。この聖女の扱いも面白いっていうか、その、独特です。王太子殿下殺害を予言して、それを理由に王太子殿下に近づくって、普通思いつきません。」マガレータはやっと俺の作り話から顔を上げ、アラウにその紙を渡した。

「そうよねえ。まあ、このアリアーナが更に深く調査を依頼する流れになるのは、確かに当然だわ。ここから、またバイオレンスなのね。」アラウは俺に紙を返しながら大きく微笑んだ。だから、何でそんなにバイオレンスに拘るんだよ。

「まあ俺の話にそんな期待をされても困るんだけどな。」俺は紙を鞄に仕舞いながら真顔で言った。そうだ。マガレータなら知ってるかな?「ところでマガレータ。ちょっと聞きたい事があるんだ。劇の事なんだけど。」

「え?何の劇ですか?」マガレータは目を瞬いた。

「王女は世直しをご希望って劇知ってる?」俺はマガレータの顔を見た。

「あ、それ、知ってる。」アラウがクスクス笑う。「数ヵ月後くらいにリバイバル上演されるのよね。」

「流石アラウ様、ご存知ですよね。ベニーモ様もご存じとは。とても話題の劇なんですよ。大昔に書かれた小説が原作なんです。それを元に、六十年程前に劇にしたと聞きました。ですから私は、もちろんオリジナルの劇を見た事はありませんけど、劇は原作をかなり単純化してるらしいです。」マガレータは一気に喋った。鼻息荒くない?

「ベニーモもああいう劇に興味あるのね。」アラウは俺の顔をじっと見た。

「あ、いや、まあ…小耳に挟んだから、ちょっと気になったって言うか…。」俺は早く教室に帰りたかった。次の授業迫ってたし。

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