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【情念の画家】フェロモンのおかげか、地味な僕が筆ペンで描くだけで、クールな彼女たちの理性が限界突破している件 ~日常系かと思ったら、昭和レトロな情念バトルが始まりました~  作者: 船橋ひろみ
第一章 幼馴染の動悸が止まらない —— 始まりは、文化祭の微熱から

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第6話:アスリートメイドの試技と、揺れるテーブルの謎

俺を見た典子先輩は小さく首を振る。


「……いや、大丈夫、なんでも……ないです……し、慎一くん、何にしようか?」


典子先輩がもじもじしながら田辺さんに聞くと、モンブランセットなんかどうです、と即座に答えが返ってきた。

典子先輩も頼みたかったらしく、モンブランセット二つをご発注だ。


「ありがとうございます。じゃあ、ちょっと待っててくださいね」


メニューを受け取ろうとして、また、典子先輩の手に触れた。なんとなくタイミングがあわない。


「んんっ……///」

再びピクンと身体を震わせた典子先輩は、ふぅ、と息をついてうつむいてしまった。早く二人きりにして欲しいんだろうな、と感じた俺は、そそくさと席を離れた。

あまりゆっくりする時間もないだろうし、二人は実行委員会だ。そんなことをしそうな人たちではないけど、万が一、何か文句をつけられても困る。

典子先輩の反応が気になったこともあって、キッチン担当に早めに用意してあげてほしいと伝える。

少し離れた窓際の席は、二人の時間を作るにはピッタリだ。仲の良さそうな雰囲気が伝わってくる。


ふと見ると、陽菜も二人に視線を送っていた。


尊敬する先輩が、彼氏らしき男子生徒と来ていて、楽しそうにしている。好きで頑張っているとは言っても、陸上競技漬けの毎日を送っている陽菜だ。二人の様子に何か思うことがあるのだろう、うらやましそうな視線を送っていた。

俺もそのうち、あんな風に素敵な彼女ができるといいな、と、典子先輩と田辺さんの様子を見ていると、しだいに二人が顔を赤くして、もじもじし始めた。

二人の世界にでも入ってるのかな、と思っていたら、何だかテーブルがカタカタと揺れているように見える。


建付けでも悪かったかな。


「神栖さん、モンブランセットできたよ、あなたのお客さんに持っていって」


キッチン担当から陽菜に声がかかる。

返事をして、真顔になったアスリートメイドは、その場にかがみ込んだ。パンプスをごそごそしている。その後、その場で小さくぴょんぴょんと跳ねた。

それが彼女が三段跳びの試技に入る時のルーティンとそっくりであることに、俺は気がついた。


そして、競技と同じように、気合が高まっていることも。


自分を見に来た先輩に「萌えキュン」するのだから、そりゃ気合も入れたくなる。

しかも、尊敬する先輩なのだから、なおさらだ。

競技中の顔になったアスリートメイドは、意を決してトレイを持ち、ハッキリとした足取りで、窓際の席に配膳に向かった。

二人の席に配膳して、お約束の「萌えキュン」をする。昨日のつくばさんの時に吹っ切れたのか、それともルーティンのおかげか、今までより動きにキレがある。

アクアブルーの萌えキュンの可愛さに、のぼせるような空気になったのか、窓際の席の空気が明らかに変わった。

ペコリと一礼して、試技を終えた顔のアスリートメイドが戻ってくる。


「お疲れさん、なんか、先輩たちが喜んでいるのが、ここからでもわかったよ。良かったな」


声をかけると、えへへ、と笑いつつ、陽菜は俺に聞いてきた。


「ねぇ灯くん、配膳に行ったとき、典子先輩も田辺先輩も、顔を真っ赤にして、モゾモゾしてたの。田辺先輩が『典子さん、ここではまずいですって……』とか言ってた。なんだろうね?テーブルもカタカタしてたし……?」


「え……テーブルの建て付けがまずかったかな……」


「それでね、典子先輩も『慎一くん、いっぺすきだ』とか言ってた。方言ぽいから意味聞けなかったけど」


「なんかそんな品物とか用語があるんじゃないか? 実行委員会の話だろ、きっと」


田辺さんのことだ、二人の時間にまで仕事の話を持ち込みたくないのかもしれない。それなら「ここではまずい」と言っていたのも納得だ。

俺の言葉に陽菜は「きっとそうだね」と返して、別のテーブルに配膳するために、再びキッチンコーナーへ向かう。


彼女にとっての「大一番」が終わった。

後ろ姿が、心なしか凛々しい。


長めの休憩をとっていたのか、先輩たち二人はしばらくゆっくりした後、会計を済ませて仕事に戻っていった。

二人に話しかけながら、陽菜が見送る。

珍しく陽菜が写真に応じて、去り際に典子先輩とツーショットを撮ってもらっていた。

食器を片づけている俺に、二人の先輩が会釈して通り過ぎる。リラックスできたのか、入って来たときより服装と表情が緩んでいる感じがする。そして、二人の距離も近い気がした。


「あ、テーブル見なくちゃ」


二人の席がカタカタしていたのを思い出した俺は、独りつぶやいて、窓際に向かった。

【次回予告:レジ前にて(岩瀬鈴江)】ごきげんよう、図書委員の岩瀬です。 文化祭、我がクラスの「文学コスプレ喫茶」は、おかげさまで大盛況のうちに幕を閉じ……るはずでした。

しかし、世の中には「TPO」と「距離感」をわきまえない、愚かなオスたちが存在するようです。 大切なアスリートである神栖さんの体に、気安く触れようとするなんて……。万死に値しますね(ニッコリ)。

次回、第7話。 『祭りの後の静寂と、会計係の冷徹な一喝』。

群がる害虫は、私が「論理ロジック」と「規約ルール」、そして少しの「恫喝」で排除いたします。 あ、私の「ナターシャ」のコスプレにもご注目くださいね。それでは、レジ前でお待ちしております。

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