教官人生を変えた日
教官としての人生を歩み始めてから、俺が唯一誇れることがあった。俺の元に集まる教え子たちは皆、一様に優秀だった。厳しい訓練を乗り越え、最前線へと羽ばたいていく背中を見送るのが俺の役目であり、誇りだったんだ。中には道半ばで引退を選ぶ者もいたが、それでも「戦死」という形で未来を断たれる奴なんて、あの日までは一人もいなかった。
だが、あの日――立川士官学校の空が灼熱に焼かれたあの日、すべてが壊れた。
俺の大切な士官学生の教え子たちは、王子小早を除いて、皆あの日死んだ。
最初の攻撃に巻き込まれた者。食堂で、逃げ遅れた下級生や仲間を逃がそうと、無謀にも敵の真っ只中へ突っ込んでいった者。瀕死の状態で発見され、俺の手を握りながら息を引き取った者。誰かを庇って、その盾となって果てた者……。一人ひとりの顔も、名前も、あの頃の笑い声も、すべてが黒煙の中に溶けて消えていった。
あの夜、俺たち教員は発表の準備や事務作業で、夜を徹して机にかじりついていた。生徒たちが目を覚ます時間になってようやく一区切りがつき、職員寮で泥のような仮眠に入った。……それが致命的な遅れになった。地響きのような爆音で叩き起こされ、戦場と化した学び舎に駆けつけたとき、視界を埋め尽くしていたのは、正視に耐えない死傷者の山だった。
カオスな現場で対応していた際、「生徒寮にも敵が現れた」という報告が入った。周囲を見渡しても、まともに動けるのはその場にいた安宅と関だけだった。俺はすぐに上層部の許可を取り、二人に現場へ向かうよう指示を出した。
「……頼んだぞ。寮の生徒たちを守ってくれ」
その言葉が、安宅を死に至らしめることになるとも知らずに。
俺のあの指示が、安宅一希という未来の希望を殺したんだ。
再び合流したとき、安宅はもう助からない程の怪我を負い、目の前で事切れた。神力切れの副作用と凄まじいショックで意識が朦朧としている小早を背負い、ただ呆然と立ち尽くす関を連れて、地獄と化した校内を戻る。
集会所や周辺の教室は、入り切らないほどの負傷者で溢れかえった「臨時治療室」と化していた。そして、かつて活気ある声が響いていた体育館は、並べ切れないほどの棺が並ぶ「安置室」に変わっていた。
小早と関を治療室へ押し込み、俺自身の身体を走る傷を、消毒液で適当に洗って包帯を巻く。痛みなんて、もう何も感じなかった。その後はただ、機械のように動いた。次々と運び込まれる生徒たちの、あるいは昨日まで隣で笑っていた同僚たちの、絶望的な処置を手伝い続けた。
手袋に染み付いた鉄の匂いが、どれだけ洗っても落ちない。
生き残ってしまったことの罪悪感と、自らの指示で教え子を死なせてしまった後悔。
その重圧に、暗闇の中に立ち尽くしていた。




