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ごめんね。先いくね。

小早目線―――

体がだるくて痛くて声が出ない。

「安宅!小早!」

中山教官…。教官がすぐ安宅くんを横にし、止血を試みる。

「こちら中山。安宅重症至急来てくれ。…安宅。大丈夫だからな。」

しかし言葉に反して赤い染が広がる。

「教官…。」

「安宅っ!」

「関…やっぱりナンバーワン攻撃手だな。戦いやすかったよ。」関の胸に拳を軽く当てる。

「なんでシールドを俺まで延ばした…?自分を守る所だけ薄くなるのは分かっていただろ!」

関はその拳を両手で掴み下を向き唇を噛む。

「隊員を守るのが隊長だからね。そして攻撃手を守るのが援護手の役目…なんて言いたいけど、本当は無意識的に2人を護ろうと思っただけ。」

口元から血が流れていく。普通に話してるようだけど、相当無理してる…。

「小早。無理させてごめんな。あと、さっき気づいてくれてありがとう。」

「安宅…くん。うち…安宅くんと関と3人で戦えてよかった…また3人でやろ?」

「そうだね。…小早。」

「ん?」

「前から言いたかったんだ…小早は自分を優先にしていいからな。」

もしかして…

「小早はもう…充分許されたんだよ。裏切り者でもトラブルメーカーでもクズでもない。俺らの仲間だ…。」

「安宅くん…。」

「っ…2人の前で恥ずかしいんだけどさ、小早、大丈夫だよ…。ちゃんと居場所は見つかってるよ。」

頭に安宅くんの優しい手が乗る。震えてるその手は消えてしまいそうで怖かった。

「教官…2人を頼みます。」

「安宅。何弱気になってるんだよ…3人で戦うんだろ?」

そう言う教官の声に安宅くんは笑ってなんにも答えない。そして深く息を吸い

「ありがとう。」と目を閉じていく。それに合わせて頭に乗せられた手がすっと落ちていく。


そこからあまり記憶がない。安宅くんだけではなく多くの生徒が犠牲になった。犠牲になった生徒はまだ軍には入っていないが特例で二階級昇級(殉死)ということになったらしい。安宅くんは大尉。合同葬儀を行われたし、明日ご遺体はそれぞれ家族の元に戻されるらしい。安宅くんの合同葬儀の時に泣いていたらしいがそれすら記憶にない。ただずっと頭に乗せられた手が落ちていく感覚だけは忘れられない。合同葬儀の後安宅くんの側にいたうちの横にずっと関はいた。明日には安宅くんは家族の元に帰る。

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