大人たちが子供を傷つけるのであれば、別の大人が君らを守る
ショッピングモールの喧騒をかき分け、怒号とフラッシュの光が渦巻く中心へと飛び込む。そこには、無数のマイクとカメラに囲まれ、心労で倒れた小早と、彼女を必死に庇いながらも限界を迎えている関の姿があった。
あの日、地獄のような戦場を生き延び、自責の念とトラウマに押しつぶされながらようやく日常を取り戻しかけていた教え子たち。まだ2人は17~18歳の子供だ。その傷口を土足で踏みにじるようなハイエナどもに、これ以上の暴挙は許さない。
「――申し訳ない、取材は広報部を通じてのみできる決まりになっているので、お引き取り願おうか」
俺が割って入ると同時に、同行していた広報部の職員たちが壁を作るように報道陣の前に立った。 小早の顔は紙のように白く、その指先は小刻みに震えている。
「関、早く王子を車へ……!」
「はい……!」
俺の声に弾かれたように、関が小早を抱えて走り出す。 背後ではなおも記者たちが「国民への説明責任が――」「逃げるのか――」と身勝手な叫びを上げているが、俺は一歩も引かずにその場に踏みとどまった。
「さて、立川基地士官学校広報部です。取材は広報部を通してのみという話は、知らないわけないですよね?」
広報担当の冷徹な声が響く。彼らはプロだ。法と規則という武器を冷静に使いこなす「大人」の顔をしている。
「ですが! 報道の自由があります!」
「こちらには士官学生保護法があります」
広報官は手帳を叩きつけるように提示し、動じない。
教官である俺たちが身体を張って生徒を守るなら、事務方は法律という盾で彼らを守る。これが俺たちの、士官学校の戦い方だ。
「とりあえずカメラマン、音声も含めて名刺、この場にいる全員分いただけますか? 詳しい話は後日、互いに弁護士経由で話し合いましょう」
弁護士、という言葉に記者たちの勢いがわずかに削がれる。 その隙を突き、俺は背後で待機している桜木に目配せを送った。
広報部が上手くやってくれるはずだ。桜木、上手く切り抜けろよ!)
俺たちは、あの地獄を生き残らせてしまったあの子たちに、これ以上の茨の道を歩かせるわけにはいかない。 桜木が運転する車のエンジン音が響く。記者たちの包囲を突き破り、避難所として用意した俺の親戚の別荘へ向けて、車は夜の街へと滑り出していった。




