うきうきの関君
「で、小早とデートすることになった、と」
俺の目の前で、関が分かりやすく視線を泳がせた。
小早は食べる量も増え、無事に退院をしてきた。
今、桜木がまだ療養中で十全に担当教官の職務をこなせないこともあり、俺が一時的に関の預かり役を引き受けている。 普段はクールで「数年に一度の逸材」なんて呼ばれるエリートのくせに、今日のこいつは朝からどうにも落ち着きがなく、浮き足立っているのが見え見えだった。
「……デートじゃないです。付き添いです」
真っ赤な顔をして言い張る関を見て、俺は思わず口元が緩むのを抑えられなかった。
「デートって言うんだよ。隠したって顔に出てるぞ」
「……っ、そんなんじゃ……」
絶望の底で辛うじて生き残っている2人、今こうして「デート」なんて言葉に、年相応に一喜一憂している。
失われた安宅たちのことを思えば胸が痛まないわけではないが、それでもこの当たり前の光景が、俺には何よりも眩しく、尊いものに見えた。
「まあ、いいか。……そうだ、外はマスコミがまだいるからそこだけ気をつけて楽しんで来いよ」
「はい! ありがとうございます!」
俺に元気よくお礼を言い、それこそスキップでもしそうな勢いで「るんるん」と部屋を出ていく関の後ろ姿を見送る。
あの日、共に戦った教え子たちを失い、俺も桜木も、そして生き残ったこいつらも、一度は未来なんてものを見失いかけた。
けれど、止まっていた時間は、俺たちが思っているよりもずっと力強く動き出しているんだな。 若いって素晴らしいな。
あいつの背中からもらった小さな元気を胸に、俺は少しだけ熱くなった目頭を指先で押さえ、また山積みの書類へと向き直った。




