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お泊まり会

関目線―――


「俺達は互いに誓っていたんだ。もう目の前で犠牲は出さない、出させないって。でも、すまなかったな。今回は沢山の生徒を死なせてしまった。安宅も含めてな。」

その声は"鬼教官"と呼ばれた人とは別人の声だった。

「ついたぞ。」と言われ降りた先は知らない家が建っている。

「着いてこい。」という教官に連れられて来たのはどこかの別荘。

「ここは中山の家だ。よく班で泊まり込みで訓練したもんだ。もうご両親はこんな山奥じゃなくもう少し街の方に住んでいらっしゃるが、隣に住んでいるご家族がお客様用としてメンテナンスしてるらしい。鍵は中山からもらった。」

うわぁ…でかい、きれいだ。中山教官ってもしかしてお金持ちなのか?

「3日ほどここで中山と俺と4人で暮らす。」

指導教官ということは指揮命令系統上直属の上官だ。拒否権なんてない。

「すぐ学校に連れて帰れないだろ?」

なるほどな…。

目は覚めていたが、ぐったりしている小早をベットに寝かして様子を見る。

直ぐに寝息を立て始めた小早を見てると、桜木教官が入ってくる。

「王子は寝たか。王子の受け答えは満点に近かった。あのまま何も答えないと、逆に国民の反感を買ったかもしれない。こいつは将来化けるかもな。」

教官が褒めてる…。

「俺だって人ぐらい褒めてる。」

うわ、やらかした。バレてた。

「ただいま。桜木ー。」

ここにいたかと荷物を抱えてくる中山少佐。

休日のお父さんのようだ。ヨレヨレのジャージ姿でいる中山教官はさっき助けてくれた教官には見えない。変装の類か。

「中山、もう小早は落ち着いているぞ。」

「最初から小早は冷静だったろ?どうだ!俺の班員は!」

「調子のんな。素晴らしい回答だったぞ。」

指導教官の同期との楽しげな会話をどのような気持ちで見ればいいか分からない。


とりあえずリビングに行きテレビをつける。

いつしか夜の報道番組の時間だ。

「小早と関は全国デビューか。」

と普通に教官方は見ていらっしゃるけど…。

「大丈夫なんですか?」

「あぁ、あの場にいた報道関係者は全員名刺差し出させたし、弁護士経由で抗議したのと、士官学生保護法違反の申請もしてきた。あとはどう報道されても明日の朝に広報部が会見を開くが、上手くやるさ。もう手出しはさせない。」

中山少佐怖いな…。

桜木教官はパソコンで何かを見ている。

俺の視線に気づき画面を見せてくる。

「お前らに対しての反応だ。」

そこにはぎっしりと報道への批判と俺らへの擁護の声で埋められていた。

「よくやった。関おまえもな。」

桜木教官に褒められたのはいつぶりだっけ。それとも初めてだっけ。俺はどこか懐かしさを憶えた。

窓の外からは土の匂いとどこかの家の夕飯の匂い。あれ、なんだっけ。

「お前も疲れたろ。早く寝ろ。」

ビールの缶を開けた中山教官が指を指して寝る部屋を教えてくれる。

「分かりました。おやすみなさい。」

今日は教官同士飲むのかな。そんなどうでもいいことを考えながら布団に入る。体が沈み込むような感覚の後、気がついたら鳥のさえずりで目を覚ました。


朝の会見を3人で見る。

小早にはこれを見るのは辛いかと思い寝かしている。無理に見る必要は無いと思う。

あの時なんで教官方が助けに来れたのか聞いた。どうやら小早が中山少佐宛にマスコミと話している内容を全てオンラインで流していたらしい。

たまたま桜木教官も一緒だったらしく録音しつつ本部へ報告となったという。

ニュースは俺らのこと、安宅のこと、抗議…そんな内容だったと思う。情報を得られなかったような中身のないただの単語の羅列だった。

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