第19話 リナリア 〜この恋に気付いて〜
相沢病院の横にある花ヶ咲高校は、偏差値平均より少し上くらいの平凡高校だ。
試験日当日。
朝から気合を入れて、家を出て行った百合を見送った。
あれからたった一週間だけだったが、百合は死にものぐるいで勉強した。
ある程度の出題を予測した俺は、分析した上で徹底的に教え込んだ。
百合の理解力、集中力は並大抵のものではなく、何とかなるかもしれないという希望を見せてくれた。
同じ高校に行けるとまだ決まった訳ではないが、行けたとしたら嬉しくてたまらないだろう。
百合が俺を信じてくれた様に、俺も百合を信じている。
試験勉強をしただけなのに、前より百合との距離が縮まった気がする。
柚樹さんと家で二人、百合の試験が終わるのを待つ。
時刻は3時。
「そろそろね……」
百合には試験を終えたら連絡する様に伝えている。
もう終わっているはずなんだけどな。
優しい百合の事だ。テストが上手くいかなかったから言い辛いとか。
いや、そんなはずは無い!あれだけ頑張ったじゃないか!
他に考えるとすれば、誰かに拐われたんじゃ……!
すると、ポケットに入っている携帯電話が震えた。
俺は直ぐに携帯電話を取り出し、耳に当てた。
「蓮……」
か細い声。そこに何時もの元気な百合はいない。
「百合! どうだった!?」
「あんなに、頑張って教えてくれたのに……ごめんなさい……」
もう百合は受験に落ちた気でいるらしい。凄く落ち込んでいる。
それ程まで出来が悪かったのか。それは本人にしか分からない。
「百合なら大丈夫! 絶対受かってるよ。取り敢えず、結果を待とう」
「うん……ありがとう!」
何時もの元気な百合が見えた。
百合が不安な分、俺は希望を失ってはいけない。
合格発表は三日後。
それは思ったよりも直ぐだった。
俺と百合は花ヶ咲高校に向かっている。
「もう直ぐ着くぞ。心の準備は出来ているか?」
「うぅ……心臓に悪いよぉ……」
気持ちは分かるが、ぐったりとした様子からして、百合はかなり緊張に弱いタイプみたいだ。
そんな百合を見ていると、俺も緊張してきた。
そうこうしていると、いつの間にか校門をくぐっていた。
目の前では多くの生徒が凝縮する様に集まっている。その前には提示版が聳え立っている。
度上げをされている奴や、泣いている奴。既に盛り上がっていた。
俺達はその人混みを潜り抜け、提示版の前に立つ。
G-156。
紙に書いてあるその番号が提示版にもあった時、俺達は喜び合っているだろう。
百合はその番号を、呪文の様に何度も呟いて探し始める。
上からゆっくりと、慎重に見ていく。
G-150。
G-151。
G-152。
153番は無い。落ちた子も当然いるんだ。
G-154。
G-155も無い。その次。
そしてーーー
「あった……」
百合は口をぽっかり開けて唖然としている。
嘘か本当か分からない状態。夢なのではないかと頬っぺたをつねる。
そして、もう一度見る。
G-156。
その数字は確かにそこにあった。
「あった……!あったよ蓮!」
「ああ……おめでとう!」
二人して抱き合って喜び合った。その時は恥ずかしさなんて無くて、ただ無償に嬉しかったんだ。
何で、百合に対して熱くなるんだろう。
そっか、分かった。今気付いた。
俺、百合の事が好きなんだ。
これから俺と百合の高校生活が始まる。




