シーン3 茶屋・午後
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
佐々木源吾(24)
新選組の若い隊士。実直だが女性に弱い。
桂小五郎(31)
長州藩士。京で活動する尊王攘夷派の中心人物の一人。
由太は頼まれた荷物を届けに茶屋へ入る。
そこに若い侍が座っている。
新選組隊士・佐々木源吾である。
源吾:
「……」
由太:
「こんにちは」
源吾:
「ん?」
由太:
「お妙さんにこれ届けに来ました」
源吾:
「ああ」
由太が帰ろうとすると――。
源吾:
「おい」
由太:
「俺?」
源吾:
「お前、ここの者か」
由太:
「違います」
源吾:
「この辺りには詳しいか」
由太:
「まあ、それなりに」
源吾:
「少し聞きたい」
由太:
「嫌です」
源吾:
「まだ何も言ってないぞ」
由太:
「面倒そうだから」
源吾:
「……正直な奴だな」
由太:
「働くの嫌いなんで」
源吾:
「なら、団子を奢る」
由太が座る。
由太:
「何でも聞いてください」
源吾:
「お前……」
団子が運ばれてくる。
源吾:
「この辺りで、最近見慣れぬ浪人を見なかったか?」
由太:
「いっぱいいますよ」
源吾:
「長州訛りの男だ」
由太:
「訛りなんて分からない」
源吾:
「痩せ形で三十くらい」
由太:
「そんな人もいっぱいいます」
源吾:
「頭が切れそうな顔をしている」
由太:
「顔見ただけで頭の良さなんて分からないよ」
源吾:
「……」
由太は団子を食べる。
由太:
「おいしい」
源吾:
「お前、真面目に答える気あるのか?」
由太:
「ありますよ。でも情報が雑なんだもん」
源吾:
「……桂小五郎という男だ」
由太の団子が止まる。
源吾:
「知っているのか?」
由太:
「名前くらい」
源吾:
「どこで聞いた?」
由太:
「町中で」
源吾:
「最近、この辺りに出入りしているという情報がある」
由太:
「へえ」
源吾:
「もし見かけたら、新選組に知らせろ」
由太:
「いくら?」
源吾:
「何?」
由太:
「情報料」
源吾:
「……お前、いい根性してるな」
由太:
「生活かかってるんで」
源吾:
「ヒモのくせに?」
由太:
「なんで知ってるの!?」
源吾:
「この辺りじゃ有名だぞ。『静のところに若い男が転がり込んだ』って」
由太:
「……」
源吾:
「しかも女に飯食わせてもらってるって」
由太:
「俺、家事してるからね!」
源吾:
「知らん」
由太:
「いや、そこ、重要だから!」




