シーン2 花街・昼
(登場人物)
青井由太(19)
江戸から京都へ流れ着き、静に拾われた青年。働くことは嫌いだが、料理・洗濯・掃除は得意。年上女性に可愛がられる才能と、本人に自覚のない情報収集能力を持つ。
神無月静(26)
由太の「飼い主」。表向きは花街で生きる女性だが、裏では倒幕派に関係する女間者。剣の腕も立つ。
八百屋の娘・お梅
由太が買い物籠を持って歩いている。
由太:
>静さんに拾われてから、俺の生活はかなり良くなった。
>飯がある。
>布団がある。
>小遣いも少しある。
>代わりに料理、掃除、洗濯。
>俺としては理想的な生活だ。
>ただ、一つだけ予定外だったのは――。
女:
「あ、由太ちゃん!」
由太:
「こんにちは」
女:
「ちょうど良かった! これ持って!」
由太:
「え?」
野菜の入った籠を渡される。
別の女:
「由太くーん!」
由太:
「今度は何?」
別の女:
「この手紙、隣の店に届けて!」
由太:
「すぐそこじゃん」
別の女:
「お願い!」
由太:
「……はいはい」
由太:
>なぜか俺は、町中の女の人から使われるようになった。
八百屋の娘・お梅が声をかける。
お梅:
「由太さん!」
由太:
「今日は何?」
お梅:
「何も頼まないよ」
由太:
「珍しい」
お梅:
「それより聞いた?」
由太:
「何を?」
お梅:
「昨日、新選組が浪士を捕まえたって」
由太:
「ああ、お光さんから聞いた」
お梅:
「でもね」
お梅が声を潜める。
お梅:
「捕まった人、長州じゃないらしいよ」
由太:
「へえ」
お梅:
「土佐だって」
由太:
「へえ」
お梅:
「しかも、浪士でもないんだって」
由太:
「じゃあ何なの?」
お梅:
「商人」
由太:
「全然違うじゃん」
お梅:
「でしょう?」
由太:
「噂って当てにならないね」
お梅:
「でも、うちのお父ちゃんが言ってたんだけど――」
由太:
「うん」
お梅:
「新選組が本当に探してるのは、長州の偉い人らしいよ」
由太:
「偉い人?」
お梅:
「桂なんとかって人」
由太の手が止まる。
由太:
「桂……?」
以前、道端で出会った男の顔を思い出す。
由太:
「……小五郎?」
お梅:
「そう! それ!」
由太:
「へえ……」
お梅:
「知ってるの?」
由太:
「いや」
少し考える。
由太:
「犬に嫌われそうな名前だなと思って」
お梅:
「何それ?」




