シーン1 江戸・裏長屋 夜
登場人物
青井 由太/19歳
江戸の裏長屋育ち。働くことは苦手だが、炊事・洗濯・掃除など生活能力は高い。
「女性に養ってもらう代わりに、その女性の生活を支える」という独自のヒモ哲学を持つ。
(雨。ボロい長屋。物干しに濡れた布団。雷鳴が響く)
由太:
(声のみ)
世の中には、二種類の人間がいる。
働ける人間と――
働けない人間だ。
(室内。由太、腹を鳴らしながら藁布団に転がっている)
長屋の婆さん:
「由太、今日は日雇い行かんのかい。米ももう無いよ」
由太:
「行ったさ、ちゃんと行ったよ。
でもなぁ……俺が縄を引くと橋がギギッて鳴くんだ。
“お前、縁起が悪い”って追い出されちまった」
婆さん:
「縁起のせいじゃなくて、サボったんだろうがね」
由太:
「……バレてる?」
(婆さん、ため息)
婆さん:
「由太、あんた器量も顔も悪くないんだ。
せめて女の一人でも捕まえて養ってもらいな」
由太:
「それを世間じゃ“ヒモ”って言うの、おばば知ってる?」
婆さん:
「このご時世、それくらい図太くないと生きてけんよ。
江戸も物騒になってきたんだ。どこか…京都あたりにでも逃げたらどうだい」
由太:
「京都? ……女の人多い?」
婆さん:
「色町ならな」
由太:
(目を輝かせて)
「行こ。明日、京都行こ」
(雷が鳴り、由太が布団を頭からかぶる)
由太:
こうして俺は、何も考えずに京へ向かった。
そこで“飼い主”に出会うとも知らずに――。
新しいシリーズを書き始めました。




