第34話 ARAZOME 前編
文化祭が終わるともに
受験生へと切り替わっていくクラスメイトを横目に、
まだ僕は受験の波に乗ることを拒んでいた。
とはいっても、放課後する事は特になく
家に帰ってダラダラとアニメを見て
日が沈む前にランニングをするだけで、
よっぽど受験勉強をした方が有意義だったのかもしれない。
変わるきっかけもないまま、
時間だけが過ぎていく。
花菜は部活で僕は帰宅が基本だったので
前ほど花菜とも会わない時間が続く。
週に1回、僕が学校に残り花菜の部活終わりまで待つ。
花菜が今日は別のところに行こうと言うので
いつもの公園とは違う場所に行くことにした。
と言っても別の【公園】なのだが。
「部活はどう?」
「後輩もしっかりしてきてて、
もう大丈夫だな。って気持ちが強いかな」
「自分たちの代っていう気持ちが湧いたのかな。
これから楽しくなるだろうね。羨ましい。
花菜はどう?」
「夏までやるってのは自分で決めたことだから
後悔はしてないけど、周りが受験モードになってて
正直焦ってはいる。」
「文化祭終わってから、変わったよね。
僕も本気になりきれなくて、焦ってる。
部活してないのに。」
「そうだよね」
「あー、進路なんて考えらんないよー
大学まで繋がってるとこ行けば良かったかなー
でも、そっちはそっちで別の大変さがあるかー」
お互い現実逃避のための
無言の時間がすこし続く。
僕の飲み物が空になる頃だった。
花菜が何となく意を決した雰囲気で口を開いた。
「・・・興味、ある?」
「えっ?」
「大人の関係って、興味、ある?」
花菜から思ってもない質問が来て
僕は急に緊張する。
「あるよ!い、いや、ある。
でも、なんか無理矢理とかじゃなくてさ
お互い思いあってがいいのかな。
いや、でもあるよ。あるよ。」
何かを取り繕うような
純情丸出しの返答しかできなかった。
花菜はそんな僕を見て
緊張がほどけたのか、清楚に笑ってみせた。
「高1から付き合って、高3まで続いて
男子ってみんなその事ばっか考えてるっていうから
どうなのかな。って思ったのと、今なら、その。」
「も、もうすぐテスト前だよね?
テスト前はさ、部活も休みだよね?
勉強しない?
ウチでさ親のいない日に。」
僕も考えていないことはなかった。
でも、満たされていたから過度に求めていなかった。
怖かったっていう気持ちもある。
それでも花菜の勇気と覚悟を踏みにじりたくなかった。
花菜は黙って頷く。
その後はテスト範囲がどうだ。
文化祭はどうだった。
等当たり障りのない話を
矢継ぎ早にした。
無言の時間が続くことに怯えて。
テスト週間にはいる前の土日
僕はワザと布団のシーツに水をこぼした。
「何してんのー。」という母に
申し訳なさを感じながら
シーツを洗って、布団を干した。
部屋の掃除も念入りに行う。
「さすが受験生。」と部屋の入口から母が茶化した。
花菜が来る日まで気が気でなかったが
いよいよ僕の家で勉強をすると約束した日が来た。
授業が終わり、花菜と共に家に帰る。
まるで悪いことをしてるかのように
鼓動は早まる一方だった。
そして、僕達は優しく温かく
何よりぎこちなくお互いを愛し合った。




