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0.5%の恋  作者: まんぷくねこ


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第32話 SHIRAAI

昨日までの緊張が嘘のように

気持ちが高まりすぎてるだけかもしれないが

鏡に映る自分の顔は清々しい表情をしていた。


大会や試合のような勝負の日は軽めの朝ごはんにする。

今日もまた軽い朝ごはんを食べていた。


朝の支度中に流れてくるニュースでは

梅雨前線が近づいているやら何やら言っていたが

文化祭の2日間はおかげさまで快晴の予定だった。


いつも通りの時間、

いつも通りの支度をすませて

学校へ向かう。


駅に向かう途中、

アジサイが花を咲かせている。

土の成分で色が変わるとかテレビで言っていたが

隣同士で色が違うのはどうしてなのだろうか。

僕はそれを追求するほど花に興味は持てなかった。


薄っすらヒンヤリとした湿度を感じる空気と

靴越しに伝わってくる湿ったコンクリートの道。

雨上がりのような街の香りを感じながら

いつもの駅にたどり着く。


僕は学校に間に合う時間の1つ前の電車にいつも乗っている。

今日も同じ時間の電車に乗るが、

そこにはいつもいるはずのないコータがいた。


不意に友達と会うと嬉しい反面、

何を話したらいいだろうと少し考えるのだが、

今日は話題に事欠かない日だったので良かった。


クラスで何をするか

自分が何をするか

そんな話をしていれば

すぐに高校の最寄りに着く。


最寄り駅に着くと

自然と知り合いが増えてきて

コータとは少し離れた位置になる。


僕は目まぐるしく変わっていく

近場の友達と同じような話をしながら

高校へと向かう。


教室に着き、

うっすら文化祭の準備をしてると担任がやってくる。

挨拶を済ませたあとは

作業しながらのホームルームが始まる。

全員出席、今日は楽しめ。とその使命だけを言い渡され

ホームルームが終わる。


出店のオープン時間は決まってるものの後は自由だった。

シフトのない間は特にすることもなかった。

劇の出番がある人間は比較的シフトも少なかった。


吉田たちと本番前の練習の時間だけ決めて

後は楽しむことにした。


まずはクラスTシャツを着たクラスメイトと

写真を撮りあったり、

寄せ書きを書きあったりした。


それが終わると

みんな散り散りになっていく。

花菜とお昼前に会う約束をしているものの

それでも花菜のクラスに向かった。


クラスに着くと

ドア越しに中を覗いてみる。

花菜が座っている姿が、

まるで。と思った所で

花菜のクラスの子が僕を見つけ

「彼氏だ。ドア閉めて!」と言って

ドアを閉められた。


花菜のクラスの男子が

あと5分待っときな。と言って階段を降りていく。

僕は廊下から外を見るが

校外に近い場所だって文化祭らしきものは何もなかった。

それでも外を見るほかなく、

何も代わり映えのない景色を眺めていた。


ガラガラ。と少し建付けの悪いドアが開く

花菜のクラスメイトの女子が

お待たせと言わんばかりの顔で出てくる。

後ろから花菜も出てきた。


花菜の髪の毛は文化祭に負けないように

可愛く編み込まれていた。

「約束まであったけど、来ると思わなかったから

 どうかな?」


「めちゃくちゃ可愛い。似合ってる。」


「ヘアアレンジの得意な子にやってもらったの。」


朝から花菜の可愛い姿に眼福だった。


お互いのTシャツに寄せ書きをしあう。

少し早いが花菜も時間があるとのことだったので

ダラダラ回ることにした。


文化祭の雰囲気を楽しみながら

すれ違う人と写真を撮ったり、寄せ書きをする。

祭りのテンションかいつもより慣れなれしい後輩もいた。


3回目ともなると

かなり心の余裕を持って文化祭を楽しんでいた。


焼きそばとフランクフルトを食べながら、話す。


「もうすぐ本番だね。緊張してる?」


「そんなに緊張はしてないかな。花菜は明日だもんね。

 そこはシフト入れないでって本気でお願いしたんだよね。絶対見に行くよ!」


「恥ずかしいけど、私も頑張るね。」


「食べたら、もう準備だ。」


「目立つとこに座るから、見つけてね。」


「そこまでの余裕あるか分かんないけど、

 頑張って探す!」


そうして食べたあとも少し話して、

僕は準備に向かった。 


コントの小道具や転換の段取り

そういった最終確認を終わらせ

僕とタカヤとそして、吉田は

拳をぶつけ合う。


劇が始まってから7分くらい経つと出番が来る。

舞台袖からクラスメイトの劇を眺めていた。

7分が経つとフッとステージが暗転する。

その間に僕たちは準備を済ませる。


コントが始まってすぐ、

僕はきっと「かかってる」状態だったんだろう。

ひどく視野が広がり、

リハーサルの時に想定していたよりも

観客席がよく見えた。 


落ち着いた間と

ハキハキした声でコントを運んでいく。


想定以上の笑い声に

僕たちはより楽しくなっていった。

オチまで行く頃には笑い声に拍手が混じっていた。


約5分ちょっとの短い出番だったが

大成功という気持ちで舞台を去った。

舞台を去る際に2階の前の方に花菜がいる気がして

少しだけそちらを見つめた。

後で花菜に聞こう。と胸にしまう。


後は最後にクラスメイトでダンスを踊って

大役を成し遂げた。


クラスメイトもそれ以外の人も

コントをやる勇気、そして面白かった

そういった労いの言葉をたくさんくれた。


僕は手のひらも胸も熱くなった。

やって良かった。とそう心から思う。


2日目


僕は朝の準備と少しの呼び込みだけで

後片付けまではフリータイムになる。


呼び込みの時には

昨日の反響で後輩たちも数人声をかけてくれた。


ただ僕にとっての大イベントは花菜のダンスだ。

花菜は午前中から念入りに準備をするとのことだった。

僕のクラスのお店には一度顔を出してくれたが

それ以降は本番まで会っていない。


1日目の後

2人で帰ったが、やはり見つめた所に座っていたらしい。

僕の思った人影と花菜が一緒かは分からなかったが

なんとなく運命を感じた。


花菜の出番が近いので場所取りをしに行こうとしたら

シフト入ってない数人も着いてきた。

1人で見たい気持ちもあったので複雑ではあったが

祭りなので仕方がない。

その中の一人に東さんもいた。


前の組の出番が終わり

いよいよ、花菜の番がくる。


覗き見したリハから

さらにキレと雰囲気が強くなった気がする。

花菜の努力が伝わってくるダンスに

僕は組んだ腕を握りしめた。


一生懸命な花菜に飽きもせず見惚れている。

そう思うの束の間で

周りのクラスメイトがワーワー言っていたので

深く浸ることはできなかった。


それでも花菜の努力と魅力が相まり、

可愛さと綺麗さのどちらも持ち合わせていた。

他校の男子とかがあの子かわいいという声が

誰を指してるのか気になって仕方なかった。


花菜の出番が終わり、舞台袖に消えていく。

僕はすぐにメールを送った。

きっと誰よりも一番に感想が言いたいかっただけだ、、、

自分の花菜に対する独占欲が時々心地よくないのだが

それだけ花菜の事が好きなのだと、そう言い聞かす。


2日目は友達とふらふら回っていた。

花菜も友達との時間が必要だと思い

あえて誘ったりはしなかった。


あんなに準備には時間がかかったにも関わらず

本番の2日間は暑い教室を吹き抜ける風のように

あっという間に過ぎ去っていった。


お客さんもみんないなくなり

後片付けが始まる。

賑やかだった中庭もグラウンドも

少しずつ日常が戻っていく。


僕も少しだけ切なさを感じながら

日常へと戻していった。

いつになく気の抜けたホームルームが終わり

解散となる。


花菜が教室の前で待っていた。

一緒に帰ろうと誘ってくれた。

今日は文化祭の打ち上げもあるので

その時間までということで一緒にいることにした。


「ダンス見たよ、かわいくてかっこよくてかわいかった。」


「もー、かわいいが2回出てきてるよ。

 見てくれてありがとう。でも、見つけられなかった。」


「だってさ。何でもない、かわいかったんだよ。

 ダンスはよく動くから探すの難しいよ。」


嫉妬した自分を見せたくなくて

がっかりするかもと思って

僕は隠してしまった。


「ん?」


僕の顔を覗く花菜。

今日もバッチリ決まった姿だ。


「また1つ終わっちゃったね。高校生」


「うっ、その言葉がすごく、苦しい」


「フフッ、でもまだ楽しいこともあるよね。」


「そうだね、楽しいことをとにかく楽しむ!」


日も長くなってきて

まだ夕焼け空のままの間に

僕達はバイバイした。


お互いクラスでの打ち上げがあるからだ。


また1つ、僕の高校生が終わりへと近づいていく。

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