意外と普通?
「…………」
「……まあ、そう怒らないでください。そのご状態で激しく動いてしまったら、治るものも治らなくなってしまいますし」
「……別に、大したことないと言ってるのに。ひょっとして、お忘れではありませんよね? そもそも、私達がセフレだということを」
「……いや、もちろん覚えてますけども……」
それから、ほどなくして。
昇降口へと向かう廊下にて、彼女の身体を支えつつ話しかける僕。だけど、やはりご機嫌斜めなその表情は変わらず……うん、困ったね。
さて、事の経緯を説明すると……まあ、もはや説明不要かとも思うけど、白河さんの要望を僕がお断りしたという流れで。……いや、だって状況が状況だし……何より、怪我をしている彼女に負担を掛けるわけにはいかなかったから。
ちなみに、今更ながら競技が終わった後は各々のタイミングで下校して良いことになっている。なので、僕らもそろそろ帰ろうかと言う話になり……まあ、正確には居た堪れなくなった僕がそう提案したんだけども。……ところで、それはそれとして――
「……ところで、どうしてあのようなものが用意されているのでしょうね、学校の保健室に」
そう、口にしてみる。いや、流石に正解が返ってくるとは思わないし、そもそも正解を期待しているわけでもなく……ただ、今はどうにか間を埋めたいなと。
さて、何のお話かというと……なんと、あの保健室には誰でも使用可能な『そういう』器具や薬品が全て備わっていて。……そう、これさえなければ流石に白河さんも納得せざるを得ない理由でお断り出来たはずなのに……うん、ほんとなんであるんだろ。あくまで僕のイメージだけど、ああいうのって学校に普通にあるようなものじゃな――
「……ふむ、そうですね。ですが、ひょっとすると外国では珍しくないのかも。例えば、フランスでは高校、更には中学校の保健室にさえ誰でも使用可能なものとして常備していると聞いたこともありますし」
「……そ、そうなのですか……」
「まあ、お国が違えば価値観も何もかも違うのでそのまま日本に当てはめるわけにもいきませんが、わりと合理的な判断かと。
そもそも、改めてですが性欲とは人間の三大欲求の一つですよ? そのような強烈な衝動を規則ごときで縛った程度でどうにか出来るはずもありませんし、返って暴走する一方かと。そして、先生方は多忙ゆえ本日のように保健室にいない場合も多々あるでしょう。ならば、禁止にすることにより生徒達の不満が溜まる危険性、そして監視の目がない時に何かが起きることのリスクを鑑みれば、きちんと対策は行ってもらった上で行為に及んでもらった方がいいという判断はわりと合理的かと」
「……えっと、なるほど……」
すると、思いも寄らぬ真面目な返答が届き茫然とする僕。……だけど、果たして学校の保健室をそのような用途で使う人なんて……いや、いないとも限らないか。実際、彼女はそのような用途で使おうと……あと、今の話がほんとだとしたらフランスってすご――
「――まあ、それはともあれ……怪我が治ったら、是非とも覚悟しておいてくださいね? それまでに不満が溜まりに溜まった私が完全に満足するまで、決して寝かせてあげませんから」
「……あー、えっと……その、はい……」
そんな思考の中、花のように可憐な――それでいて、ものすごく圧のある笑顔で告げる白河さん。……あ、うん、その……できれば、次がお休みの日にしていただけると……。




