2. (10/29up)
魔錬棟まで案内されたフィーナたちは戸惑いを隠せずにいる。
「ここは・・・?」
何故なら、そこは広場とはいえ、温室のようになっており、建物の中に森があるからだった。
特に案内された場所は広場となっており、鬱蒼としていた。
「はい、皆様方、静粛に!」
広場の奥から、試験担当の教諭が現れ、声高々に周囲へ知らしめた。
そして、現れた教諭へと注目し始めていく。
「私は箱庭師メレディナ・セイル。
本日、みなさまの実力を見る担当をします。
いいですか?
説明や注意を致しますので、よく聞いてください。
ここはご存知、箱庭師を目指す者のために特殊なフィールドとなっており、森林が絶える事はありません。
破壊されても、翌日には元通りとなります。
そして、我がアカデミアでも、もっとも王都の誇る設備となっております。
ですので、王都では、ここでしかボックルは現れません。
仮にボックルを呼び出した後に管轄外へ誘い込もうとしても、それには応じません。
さらに、外へ連れ出そうとすると、施設の外側に自然と扉が現われ、ボックルは逃げ出そうとします。
そこで要注意です。
いいですか?
外へ呼び出そうとしたり、連れ出そうとすると、呼び出した者にはしばらく、ボックルを呼び出せなくなるので、それを致さないようにご注意願います」
そこでざわめきが大きくなった。
「さて、理解されましたか?
それでは、あなた方の実力を見せて頂くためにそちらで箱庭をご用意させました。
各自、ここにある箱庭を手にするよう願います。
宜しいですか?
指示があるまでは、何もしないように。
では、各自、受け取りに来てください」
すると、箱庭を受け取りに人が集まって行った。
箱庭を受け取りに来る者がいなくなることを確認したメレディナは手を挙げた。
「はい、注目!」
メレディナは周囲を見回し確認をした。
「本日の試験内容は一つのボックルの街を作り上げる事です。
作業時間は3時間。
ですが、時間に関係なく、技術を見るための試験ですので、時間は気にせずに作業に集中してください。
そして、箱庭を完成させたと思ったら、提出を願います。
ただし、時間までに完成しなかったら、その時点で作業を中止してください。
私の手を下げたら開始といたします」
メレディナは周囲を見て確認する。
「いいですか?
ここでは、指示は絶対的に従ってもらいますよ。
指示に反した者は即座に試験中止、強制退出させていただきます。
宜しいですか?」
メレディナは再び周囲を見てから一声上げた。
「それでは開始!」
そして、それぞれが作業を開始した。
フィーナはいつもの通りに楽しく街を築き始める。
時間までその作業は黙々と続いていく。
その様子をメレディナは静かに見回るように歩き回っている。
そして、フィーナの横に立つと驚きがあらわとなる。
他に比べ、進行が速い!
この子は・・・、そうか、ジェーン様の息女であられるフィーナね。
まだ遅い人はようやく生活レベルにまでこぎつけた者もいるといるというのに・・・。
それをこの子は・・・、既に生産レベルにまで至っている。
それにここのボックルは扱いにくいのが多いというのに、この子には素直に慕われているわ!
この子は並みのレベルではない・・・。
確か・・・、昨日の魔力測定値では魔導士並みだと報告があったわね。
期待以上ね・・・、ふふっ。
そして、そっとフィーナのいる場を離れ、見回りを始める。
終了間際になり、それぞれが完成を名乗り、箱庭を提出して、別の場所で待機を始めている中、フィーナの手は止まらない。
「おい、あいつ、ジェーンの娘だっけ。
遅いな・・・」
待機中にフィーナを見た若者が隣にひそひそと声をかけたようだ。
「ふふん、ジェーンの娘とはいえ、大したことはないんだろ。
ただ、魔力検査の時はかなり大きい値をしめしてたはずだが・・・」
「だよな、期待外れもいいとこだよな」
話し合う二人はほくそ笑んだ。
「そうか?
お前ら、箱庭の中、見てないだろ。
彼女のはかなりの広さにまで深淵していたぞ」
「ええっ!?」
そこにもう一人が加わり、二人に対して、したり顔をして見せた。
「様子を見に行ったメレディナ先生も驚いてたからな。
それに釣られて、つい俺も彼女の隣にいたから、チラッと見えたよ。
まるで王都のように繁栄していたぞ。
お前らのはどこまでやったかは知らんけど、俺はすごいと思ったな。
同時に勝てないともな」
「ま、まさか・・・」
「限られた時間の中で・・・」
その話を聞いた二人は開いた口が塞がらなかったようだった。
終了時間間際となったその時、完成したのか、フィーナの手がふいに挙がる。
そこをメレディナが近付き、箱庭を受け取ろうとしたが、フィーナが拒否した。
「先生、何もしませんから、そのまま、ボックルたちの働きを見ていたいんです。
いいですか?」
「ふふっ、よほどボックルが好きなのね、いいわよ、それを持って提出箇所で待機してて」
「ありがとうございます」
メレディナは側にいた補佐官を呼び、フィーナの事をお願いした。
そうして、フィーナは補佐官に連れられ、提出場所まで移動した。
その箱庭をそっと覗き見た補佐官は思わずため息を漏らした。
すごいレベルだ・・・、ここにいるみんなとは比較にもならない!
箱庭を見ながら座っているフィーナをみた一人はポツリと言った
「変わった奴だな・・・」
時間まで飽きることなく、箱庭を眺めていたフィーナは終了したことにすら気付きもしなかった。
そうして、三日に及ぶ試験は終わった。
その試験の結果は入学式の前に知らされる形になるのだった。
今は我が家へと馬車を走らせている中、フィーナは疲れたようにミアに見守られながらも静かに眠っていた。




