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8月20日 幕開け


 8月20日の夜9時半、ホリミカこと堀内美香子は田んぼに囲まれた田舎道を歩いていた。横には連続強盗殺人犯の丸井龍斗がいる。

 はたから見たら奇妙な光景だが、中学2年生の少女と連続強盗殺人犯が歩いているのだ。ミカの住む町に丸井が現れ、ミカの隣の家の志保おばさんを殺したのだ。そしてミカは丸井に手を貸し、行動を共にしている。


 「いつになったら着くのかしら」ミカが丸井に言った。

「着くってどこに?」丸井が問う。

「どこにって聞かれても困るけど」

「まあ、この道の終わりには何かがあるさ」


 ミカはなんて楽天的な考え方なんだろうと呆れたが、そこが丸井の魅力でもあるのだ。

丸井のそういうところがミカは好きだ。


 「警察から逃げることが先決ね。多分ここら辺も捜索されると思うから」ミカはタオルで汗を拭いた。ミカの持ち物はこのタオルと少しの食料品と服、携帯電話、その充電器、そして志保おばさんの指輪だけだ。


 「そうだな」


 

 それからさらに歩き、一時間後に何かの明かりが見えてきた。

近づいてみるとそれがコンビニだと分かった。


「やったわ。コンビニが見えた」疲れ果てたミカは飛び跳ねて喜んだ。進んでも進んでも先が見えない恐怖に押しつぶされそうになっていたのだ。


 「よし、あのコンビニで必要なものを調達するか」丸井は微笑んだ。出会ってから2回目の笑顔だった。


 丸井は顔が見られる可能性があるのでコンビニの裏で待機させ、ミカは光り輝く深夜のオアシスのコンビニに入っていった。


 その店は「スターコネクト」という名前だった。ミカの町にはコンビニが一件しかなかったのでこの店がどの地域にもあるのかはわからなかった。ミカの町のコンビニとは違い、品ぞろえが良かった。


 ミカは店内を物色し、まず食料を調達することから始めた。ミカの分の食料はあるのだが丸井の分はない。さっき丸井に聞いたところサンドイッチが食べたいそうだ。

 ミカは卵と野菜のサンドイッチを籠に入れ、水を3本入れた。

その次に向かったのは新聞のコーナーだ。まだミカと丸井のことは書いてはいないだろうが、情報は仕入れていた方がいい。


 そのほかにも懐中電灯、マッチ、虫よけスプレーなどを籠に入れ、レジに向かった。コンビニにはもっと居たかったが、外で待っている丸井のことを思い早めに切り上げた。しかしそれ以上にミカを焦らせる理由があった。

 コンビニの駐車場には2人組の警察官がいたのだ。

その2人はバイクに座っている髪を金髪に染めた不良風の男に質問をしていた。おそらくその質問の内容はこの近辺にいるであろう連続強盗殺人犯の丸井龍斗を見ていないかというものだろう。


 もうここまで捜査網が広がっているのか。ミカが町を出てからまだ5時間しかたっていない。

これは急がなければ。

外で待っている丸井は大丈夫なのだろうか?

様々な思いが頭の中を渦巻いているなか、ミカはレジに立った。


 レジの店員は髪を縛った30代に見える女だった。目がぱっちりとしていて鼻筋が通った顔は美しく、目の下のクマややつれた髪の毛がまた何とも言えない魅力を醸し出している。スーツを着ていればバリバリののキャリアウーマンに見えること間違いなしのかっこよさがあった。店員が着るカラフルな衣装はあまり似合っていない。


 その店員は慣れた手つきで素早く商品をさばいていく。急いでいるミカにはありがたかった。

ミカの額からは汗が流れ落ちた。ミカはそれを拭う。そして窓の外をチラチラと見る。


 商品が全て袋に入れられると店員が口を開いた。

「合計で三千八百五十円です」その店員ははっきりとした口調で言った。

ミカは財布から4千円を出した。そして百五十円のおつりを受け取った。

「ありがとうございます」

 ミカは袋をもらうとさっさと店を店を出ようとした。

しかし店員が話しかけてきた。

「あんたわけありだね」

ミカは全身が針で刺されたようにビクッとした。


 「どうしてわかるんですか」急いでいるはずなのにミカは聞いた。

店員は手で三の形を作って言った。「理由は三つ」


 「まず第一にこんな夜中に中学生のお嬢ちゃんが店に入ってきたこと。これは誰が見ても怪しい。家出かあるいは単にお使いを頼まれたか」

 驚いた。少なからず当たっている。

「そして第2に、懐中電灯、マッチ、食料と水。そぢて新聞。中学生がこんなものを買ってどうするつもり?キャンプでも行くの?いや違うね。これらの殆どが家にあるものよ。わざわざ買いに来る必要はない」店員はずばずばと推理を披露している。こんな話は無視して外に出ればいいのにと思っているが、聞いてしまっている。


 「最後にあんたの挙動不審な態度。これが決め手よ。あんたはさっきから警察を見ては心配そうな顔をしている。こんなことをするのは何か後ろめたいことがあるのか逃げているかのどちらかだわ。さあどういうことか説明して頂戴」


 完全に追い詰められた。

 ついに始まったホリミカシリーズの完結編。

頑張って考えたので読んでいただけると嬉しいです。

それでは楽しんでください。

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