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5/58

転生したら、危うく売られるところだった

X: @khamassiyassin


こちらは、作品に登場するキャラクターのビジュアル参考資料を公開している専用アカウントです。


キャラクターのデザインを見てみたい方は、ぜひご覧ください。


「うわあああああっ!」


ドサァッ!


「……痛てててて……」


……めちゃくちゃ痛い。


俺、まだ生きてるか?


よし。


今回は身体まで死ななかった。


大きな進歩だ。


よし。


もう悲観するのはやめよう。


恐怖の時代は終わった。


これからは、この世界で生きていく。


楽しいことも、辛いことも、全部経験してやる。


そして、俺が人生に笑いかければ……。


きっと人生も、俺に笑い返してくれる。


俺は拳を空へ突き上げた。


「聞いてるか、シナリオ!」


「ハリールは、もう弱いモブのままじゃない!」


「俺は自分の手で、俺自身の栄光を作ってやる!」


……


……


――さて。


……


――現在の状況を確認しよう。


……


――数分前、俺は新しい人生を始めようとしていた主人公だった。


……


――そして今。


……


――俺はここにいる。


……


――地面に座り込んでいる。


……


――目の前には、人の夢を叩き折るために作られたとしか思えない棒を持った男がいる。


……


……


――視聴者の皆さん。


……


――俺が「人生に笑いかければ、人生も俺に笑い返してくれる」と言ったのを覚えているだろうか?


……


……


――ここで正式に訂正させてほしい。


……


――あの格言、少し見直したほうがいい。



---


――さて。


……


――何が起きたのか?


……


――簡単に説明しよう。


……


――覚えているだろうか。


……


――俺が自信満々にこう言った瞬間を。


……


「もうモブにはならない」


……


――そう。


……


――あの、とても主人公らしい瞬間だ。


……


――まるで、自分が歩けることに初めて気づいた子供みたいな瞬間だった。


……


……


――まあ……。


……


――その直後、俺はこの二人の男と出会った。


……


……


――何?


……


――見た目が怖い?


……


――いや。


……


――君たちは彼らを誤解している。


……


――こっちの筋肉ムキムキの男は……。


……


――とても優しい人だ。


……


――なぜなら、彼は……。


……


――俺が窓を壊した宿屋の主人だからだ。


……


……


――そして、もう一人。


……


――俺が落下して壊した荷車の持ち主。


……


――そして今、棒を持っている男。


……


――彼もまた、とても優しい人だ。


……


……


――二人とも、俺の新しい人生を助けようとしてくれている。


……


――確かに、俺は頼んでいない。


……


――だが、彼らはとても親切だった。


……


――俺の意思など一切気にせず、すべてを自分たちで決めてくれている。


……


……


――なんというありがたい人たちだろう。



---


――この世界に来てからというもの……。


……


――俺は、いつも誰かに助けてもらっている。


……


――最初は、このクソみたいなシナリオを呪っていた。


……


――だが今は……。


……


――誇りを持って……。


……


――考えを改めよう。


……


――そう。


……


――そうだ。


……


――そして、そう。


……


――これは失敗したシナリオなんかじゃない。


……


……


――誰かに与えられるシナリオの中でも、最悪の部類に入るシナリオだ。



---


宿屋の主人が口を開いた。


「こいつに借金を返させる方法を思いついたぞ」


……


「おお……」


……


――ついに来た。


……


――さあ、お二人のありがたい判決を聞こうじゃないか。


荷車の主人が尋ねる。


「ほう? どんな方法だ?」


沈黙。


……


そして、棒が持ち上がった。


……


「こいつをサーカスに売るのはどうだ?」


「こいつみたいな猿なら、壊したものを直すくらいの金にはなるだろ」


……


……


「なるほど」


……


「よく分かった」


荷車の主人が考え込む。


「うーん……」


「だが、奴隷として売ったほうが高く売れるんじゃないか?」


……


「こいつ、ちょっと変わってるからな」


……


「物好きな貴族なら、かなりの金を出すかもしれん」


……


……


「待て」


……


「ちょっと待て」


……


「俺……今、話し合われてるのか?」


……


「俺、本当に競売の対象になってるのか?」


荷車の主人が言う。


「うーん……」


「やっぱりサーカスのほうがいいと思うがな」


宿屋の主人が答える。


「だが、奴隷のほうが高く売れる」


……


……


「素晴らしい」


……


「本当に素晴らしい」


……


「どうやら俺の未来が、重要な経済問題になっているらしい」



---


――さて、視聴者の皆さん。


……


――二人の紳士が俺の市場価値を決めている間に、状況を整理しよう。


……


――俺はハリール。


……


――ついさっき、この新しい世界に転生したばかりの人間だ。


……


――最初の偉業は?


……


――空から落ちた。


……


――窓を壊した。


……


――荷車を壊した。


……


――そして今……。


……


――千載一遇のチャンスを手に入れた。


……


――奴隷になるか、サーカスの猿になるか。


……


……


――素晴らしいスタートだ。



---


――ご覧の通り。


……


――二人とも冗談を言っているわけではない。


……


――二人の顔には、こう書いてある。


「俺たちは、お前の未来について真剣に話し合っている」


……


……


――ありがとう、お二人とも。


……


――本当に、自分が重要な人間になった気分だ。


……


……


――俺をどうやって売るかについて、真剣に議論されるほど重要な人間になった。



---


――では……。


……


――予想してみてほしい。


……


……


――俺はサーカスに行くのか?


……


――猿たちと一緒に芸を披露するのか?


……


……


――それとも、変わった奴隷として貴族に買われるのか?


……


……


――ああ……。


……


――せっかく注目を浴びたというのに……。


……


――こんな形なのかよ。



---


――サーカスか……。


……


――魔物なら、すでに経験済みだ。


……


――今の俺の実力を基準にするなら……。


……


――初公演の前に食われるだろう。


……


……


――そして、貴族のお方。


……


――もし俺がただのモブだと知ったら……。


……


――いや。


……


――もしかしたら、異世界史上最弱のモブだと知ったら……。


……


――パン一個より安い値段しか払ってくれないかもしれない。


……


……


――だが……。


……


――信頼してくれてありがとう。


……


――ほんの一瞬だけ、俺にも価値がある気がした。


……


……


――ほんの一瞬だけ。


……


……


――その価値が「売値」だと思い出すまでは。


「くそっ!」


……


――どうして二人とも、こんなに落ち着いた顔で人生を左右するような話ができるんだよ!?


……


――おい!


……


――ここには人身売買を禁止する組織とかないのか!?


……


――人権っていうものはないのか!?


……


――確かに俺はいくつか物を壊した。


……


――でも、金さえ払えば何でも解決するのか!?


……


……


――もし本当に売られたら……。


……


――俺は、ただのモブから抜け出せないどころか……。


……


……


――「商品として売られるモブ」になる!


……


……


――これは想像以上に傷つくぞ。



---


――それに、荷車の主人。


……


――見た目だけなら、優しそうな人なのに。


……


――言ってることが怖すぎる。


……


……


――子供を守る権利くらいないのか!?


……


――弁護士を呼んでくれ!


……


……


――頼む……。


……


――俺はモブになりたくなああああい!



---


――どうする?


……


……


――考えろ、ハリール。


……


……


――お前は賢い。


……


――強い。


……


――そして、奴隷になるにはちょっとイケメンすぎる。


……


……


――コホン。


……


――いや……。


……


――この状況でも尊厳を守るべきだという話だ。


しばらく考え込む。


そして――。


「おお!」


「忘れてた!」


……


――視聴者の皆さん。


……


――俺がもう、ただのモブじゃないことを忘れてないか?


……


「何?」


「本当に忘れてたのか?」


……


「失礼すぎるだろ!」


……


「いや、まあ……俺自身も完全に忘れてたわけじゃないけど……」


「コホン」


「とにかく!」


――俺は今、主人公なら誰もが欲しがる最強クラスのチートスキルを持っている!


……


――俺専用のプログラムを手に入れたんだ。


その名も――。


「ガイド」


……


――名前の通り。


――持ち主を導いてくれる存在のはずだ。


……


――よし、新しい相棒。


――今こそ俺を救う時だ。


……


「ガイ――」


宿屋の主人が口を挟んだ。


「おい」


……


「……ん?」


宿屋の主人が俺を睨む。


「何を笑ってやがるんだ、ガキ」


「骨を全部へし折られたいのか?」


……


「おい!」


「怖すぎるだろ!」


……


「これは言葉の暴力じゃないのか!?」


「未成年を脅迫する法律はないのか!?」


……


「中身は成人だけど……」


「この身体、どう見ても十五歳くらいなんだぞ!」


荷車の主人が口を挟む。


「少し大げさじゃないか?」


……


「そうだ!」


「やっとまともな人がいた!」


「こいつに言ってやってくれ!」


「骨を全部折られたら、誰だって死ぬだろ!」


荷車の主人は淡々と言った。


「死体を買う奴なんていない」


……


「……」


「……え?」


荷車の主人が続ける。


「四、五本も折れば十分だろう」


……


「どうして話がいつも暴力に戻るんだよ!?」


……


「指一本折られるだけでも……」


「痛みを味わう前に恐怖で死ぬぞ、俺は!」



---


――よし、ハリール。


――ここが本当の男の見せ場だ。


――冷静さ。


――勇気。


――誇り。


……


――俺は男だ。


……


――そう。


――とても男らしい男だ。


……


――だから……。


「どうか、お二人とも……」


「この立派なお方々……」


「どうか、この哀れな奴隷候補をお許しください!」


沈黙。


……


――そう。


――これが、命が懸かった時に男が取るべき行動だ。


……


「何?」


――これが男のすることじゃないって?


……


――まあ、いい。


――プライドや勇気だけでは、生き残れない。


……


――だから俺は、一時的にプライドも勇気も男らしさも捨てることにした。


――今は、生き残ることだけに集中する。


……


「俺はただの子供です!」


「大人の前でどう振る舞えばいいのかも分かりません!」


……


――まあ……。


――完全な嘘というわけでもない。


――この身体の話だけどな。


――俺自身の話じゃない。


……


「だから、お願いします……」


「暴力だけはやめましょう!」


「壊れた奴隷なんて、誰も買わないでしょう?」


「お二人にとっても経済的に損ですよ!」


バキッ!


……


荷車の主人が言った。


「心配するな、小僧……」


……


「……ん?」


……


「……成功したか?」


……


――どうだ、皆さん。


――言っただろう?


――適切なタイミングでプライドを捨てれば、モブでも数話くらいは生き延びられるんだ。


荷車の主人は平然と言った。


「俺には、お前みたいな新鮮な死体を買ってくれる友人がいる」


「ペットの餌にするんだ」


……


「……」


「……ああ」


……


「なるほど」


……


――どうやら俺は……。


――生きていても、死んでいても、役に立つらしい。


……


「待て」


……


「失敗した!」


「プライドも誇りも捨てたのに!」


……


「どうすればいいんだよ!?」



---


――そうだ!


……


――こういう時こそ、俺の親友に頼ればいい。


……


――ガイド。


……


「俺だ、ハリール」


「お前と人生を分かち合うことになった、あのハリールだ」


……


「起きたか?」


……


「こんな時に頼むのも悪いとは思うが……」


「俺の人生、始まる前に終わりそうなんだ」


……


「助けてくれ、相棒」


……


……


「返事なし?」


……


「素晴らしい」


「俺は超高性能なガイドを手に入れた……」


「なのに、最初の危機で休暇を取ったらしい」


……


「まあ、いい」


「この世界に来てから、俺の問題に付き合わせすぎたのかもしれない」


宿屋の主人が言った。


「よし、話は決まったな」


荷車の主人が答える。


「ああ」


「こいつなら、かなり儲かりそうだ」


……


「はあああ!?」


……


「何が決まったんだ?」


「俺、聞いてなかったぞ!」


鉄が鳴る。


カチャッ……。


……


「……」


「聞くまでもないな」


宿屋の主人が言った。


「こいつは、死んだ俺の犬が使っていたものだ」


「これで十分だろう」


荷車の主人が答える。


「ああ」


「十分すぎる」


「こいつには、それ以上必要ない」


……


「そういうことか……」


「分かった」


……


「でも……」


「ガイド!」


……


「今すぐ助けてくれ!」


……


「まさか、まだ寝てるんじゃないだろうな!?」


……


「起きろ、このポンコツ!」


……


「ここでご主人様が危機に陥ってるんだぞ!」


……


「これのどこがガイドなんだ!?」


……


「お前、本当に俺専用のスキルなのか!?」


……


「起きろ!」


……


「起きろ!」


……


「起きろ!」



---


「……これ、手錠か?」


……


「いや、いや、いや……」


……


「ガイド……」


「起きてくれ」


……


「頼む」


……


【通知】


【ガイドが起動しました】


【警告:不安定な状況を検出】


【状況を分析中……】


【分析結果:対象者ハリールは奴隷として売却される寸前です】


……


「情報提供ありがとう」


「俺はてっきり観光旅行に来たんだと思ってたよ」


【通知】


【訂正:観光旅行の記録は確認されていません】


「今は訂正してる場合じゃない!」


【生存率を計算中……】


……


【死亡確率:86%】


【生存確率:14%】


……


「……」


「本気か?」


【回答:はい】


「俺が求めてるのは助けであって、葬式の報告書じゃない!」


【提案】


【奴隷として売られないでください】


……


「……」


「天才だな」


「本当に」


「どうして俺は、こんな解決策を思いつかなかったんだ?」


【回答:論理的な提案です】


「俺は今、まさに奴隷として売られないように頑張ってるんだよ!」


「だからお前を呼んだんだ!」


【新たな分析を開始】


【解決策を検索中……】


……


【検索中……】


……


【解決策は見つかりませんでした】


……


「お前……」


「問題を説明し直してるだけじゃないか!」


【回答:その認識は正しくありません】


「じゃあ証明してみろ!」


……


【提案】


【二人の男性を撤退させてください】


……


「どうやって?」


……


【検索中……】


……


【方法は見つかりませんでした】


……


「ああ……」


「ようやく分かった」


「どうして最初から気づかなかったんだ?」


「俺が手に入れたチートスキルは、ガラクタなんかじゃない」


……


「いや」


「ガラクタに謝るべきだな」


「ガラクタのほうが、まだ役に立つかもしれない」


……


「これはガイドじゃない」


「メンテナンスが終わる前に逃げ出した試作品だ」


「ほら、開発者がプログラムをリリースしたまま、ユーザーを放置することってあるだろ?」


「おめでとう……」


「そのユーザーが俺だ」


……


「主人公はいつだって完璧なバージョンを手に入れる」


「でもモブは……」


「修理が必要なバージョンを渡される」


……


「素晴らしい」


「俺の人生は終わりかけてるのに……」


「こいつはまだ問題を分析してる」


……


「ああ……」


「どうやら俺の脇役人生は、始まる前に終わるらしい」


「死神ですら第二話まで待ってくれなかったか……」



---


「お二人とも……」


「俺が悪かったのは分かってる」


「でも、子供を奴隷にするのは……」


「さすがに、ちょっとやりすぎじゃないですか?」


宿屋の主人が答える。


「やりすぎ?」


「むしろ、これが一番いい方法だ」


「お前みたいな奴を売れる機会なんて、そうそうないからな」


……


「待て」


「それは褒めてるのか?」


「それとも脅迫か?」


……


「どうして、この状況の問題点に気づいてるのが俺だけなんだ?」


「この世界では奴隷って普通なのか?」


……


「まあ……」


「少なくとも、理想郷に転生したわけじゃないことだけは分かった」


宿屋の主人が言う。


「しっかり押さえろ」


「売る前に壊したくない」


荷車の主人が笑う。


「ははは!」


「心配するな」


「前にも一度あったからな」


……


「待て」


「その結末は聞きたくない」


「まさか……」


「その時に押さえた奴、死んだのか?」


宿屋の主人が答えた。


「俺の犬だった」


……


「……」


「……」


「それ、最悪の答えだろ」



---


――よし、ハリール。


――頭を使え。


――どんな作戦でもいい。


――たとえ最悪の作戦でも。


……


「いや、俺の頭……」


「今だけは引退するなよ」


「このポンコツガイドにも頼れないんだからな」


……


ガイド:


……


荷車の主人が近づく。


「ほら、小僧」


「痛くないようにしてやる」


宿屋の主人が言った。


「押さえたぞ」


「うわあああああ!」


「手が!」


「これ、手か!?」


「それとも破壊道具か!?」


「やめろおおおお!」


「頼む!」


……


その時――。


「……何をしている?」


「おい……」


「何だ……?」


「お前たち、その子供に何をしている?」


……


「……え?」


「こいつ……」


「ずっとここにいたのか?」


「というか……」


「どうして今このタイミングで出てくるんだ?」


……


「待て……」


「まさか、俺を助けに来たのか?」


……


「いや」


「酔っ払いだ」


……


「うわ……」


「酒臭いだけで人を倒せそうだな」


……


「待て」


「俺、助けに来た人間に文句を言ってるのか?」


「ハリール……」


「少しは敬意を払え」


「もしかしたら、この男が唯一の救世主かもしれないぞ」


酔っ払いが口を開いた。


「店主……」


「……ひっく」


「まさか、お前がこんな酷いことをするとは思わなかった……」


……


「そうだ!」


「やっぱり!」


「酔っ払いにだって良心はあるんだ!」


「言ってやってくれ!」


「子供を奴隷として売るのは犯罪だって!」


酔っ払いは続ける。


「外の……」


「……ひっく」


「看板に……」


「ここは……」


「静かに酒を飲める場所だって……」


「書いてあったから……」


「だから……」


「このガキを早く黙らせてくれ……」


「俺は寝たい……」


……


「……」


「なるほど」


「俺が期待しすぎたらしい」


「土壇場で酔っ払いが英雄になることを期待した俺が馬鹿だった」


「どうやら俺の期待値が高すぎたようだ」


宿屋の主人が言う。


「心配するな」


「すぐ終わる」


……


「素晴らしい」


「最後まで、誰一人として俺を安心させようとしてくれない」


「俺は文字通り、自由を失おうとしてるんだぞ」


……


「どうやら、自由な人間としての人生ともお別れらしい」


宿屋の主人が言った。


「動くな」


「そのほうが楽だ」


……


「楽?」


「俺は今から奴隷になるんだぞ!?」


「それを『楽』って言うのか?」


「ここの人たちは、これを慰めの言葉として使うのか?」


……


鉄が鳴った。


カチャ……。


……


「くそ……」


「いや、いや、いや」


「待て」


「話し合おう!」


「子供を売る以外にも、何か方法があるはずだ!」



---


【通知】


【生存率を63%まで引き上げる方法が見つかりました】


【注記:対象者ハリールは、以前この方法の使用を拒否しています】


……


「……」


「お前?」


「今かよ?」


「手錠をかけられそうになってからか?」


「俺が一番お前を必要としていた時、どこにいたんだよ!?」


【通知】


【ガイドは待機状態でした】


【正式な救援要請は確認されませんでした】


……


「は?」


「俺、ずっとお前の名前を叫んでただろ!」


【通知】


【叫び声は感情的反応として分類されました】


……


「素晴らしい」


「命の危機に瀕していても、正式な申請が必要なのか?」


「死ぬ前に申請書でも書けっていうのか!?」


【警告】


【生存案を提示できます】


【ユーザーの承認が必要です】


……


「承認?」


「今、利用規約を読んでる時間があると思うか!?」


「承認する!」


「何でもいい!」


【承認を確認】


【提案の実行を開始します】


……


「待て」


「なんか、ものすごく危険なものに同意した気がするんだが?」


……


「まあ、いい」


「とにかく……」


「俺は売られないんだな?」


……


そして――。


すべてが消えた。

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