スキルが一つじゃない……俺は異常存在なのか!?
この章から、ヴィンの物語は新たな段階へと進み始めます。
水面下で動き始めた隠された出来事が、彼を予想もしなかった変化へと少しずつ導いていきます。
では……
これからヴィンを待ち受けるものとは?
彼はどのような道を歩むことになるのでしょうか?
ここまでこの物語に興味を持ち、読み続けてくださった皆様に心から感謝します。
皆様の応援は、私にとって本当に大きな支えになっています。
これから始まる新たな旅も、楽しんでいただければ幸いです。
一週間後……
……
ゾニック先生:
「今日の授業は剣術についてだ」
「これは、お前たち全員にとって重要な一歩になる」
「スキルというものは、ただ与えられるものではない……」
「努力によって手に入れるものだ」
生徒:
「ですが、俺たちは貴族ですよ?」
「剣術なんて、生まれつき身についているようなものです」
別の生徒:
「ケケ……」
「その通りだ」
「あの平民とは違うんだからな」
……
「オーリン……」
ゾニック先生:
「この授業では……」
「貴族もない」
「平民もない」
「剣は、お前の身分など気にしない」
「家名にも興味はない」
「ただ一番努力した者だけを認める」
生徒:
「ですが、ゾニック先生……」
「生まれ持った才能というものも存在するのでは?」
「俺の兄、アルナルドは同世代の中で首席で卒業しました」
ゾニック先生:
「ふむ……」
「その兄は……」
「生まれた時から剣を握っていたのか?」
生徒:
「……いいえ」
ゾニック先生:
「なら……」
「それが答えだ」
「剣術とは、身につけるものだ」
「剣の振り方を最初から知って生まれてくる者などいない」
……
「分かったか……」
「ユラン・ダリコン?」
ユラン:
「はい、ゾニック先生」
ゾニック先生:
「よし」
……
「始める前に……」
「もう一つ伝えておくことがある」
……
「今日……」
「罰を終えた生徒が、授業へ戻ってくる」
……
「入れ」
……
コツ……
コツ……
コツ……
……
はぁ……
……
そう……
……
今日……
……
新しい始まりだ。
……
間違いなく……
……
俺はもう一度、この一歩を踏み出す。
……
そして俺は……
……
そう……
……
この世界が待ち望んだ……
……
勇者になる!!
……
ドォォン!!
バァン!!
……
そう……
……
これが勇者の登場だ。
……
特殊効果。
……
爆発。
……
劇的な復活。
……
そして、皆が俺を憧れの目で見る。
……
……あれ?
……
違う。
……
これは……
「なんでこいつが戻ってきたんだ?」
という目だ。
……
「女子たちは……」
「きっと感動しているはずだ」
……
女子生徒:
「チッ……」
……
「あ……」
……
「計算を間違えた」
……
「見るな……」
「これは蛇の構えだ」
「攻撃する前の姿勢……」
ゾニック先生:
「おい、ガキ」
「ここを舞台か何かと勘違いしているのか?」
……
「いいえ、先生!」
……
くそ……
……
近くで見ると……
この人の顔、怖すぎる。
ゾニック先生:
「俺が嫌いなものが一つある」
ヒュッ……
……
おい……
……
俺を侮辱する気か?
……
待て……
……
これは鼻なのか?
……
それとも……
空気取り込み口なのか?
……
「失礼ですが、ゾニック先生……」
「俺の匂いに何か問題でも?」
ゾニック先生:
「俺が嫌いな匂い……」
「それは……」
「許可なく這い回る……」
「ネズミの匂いだ」
……
生徒:
「ケケ……」
「あははは!」
「所詮は平民だ」
「誰があいつを認めるんだよ」
……
くそ……
……
これ以上、状況を悪化させるな。
……
俺は先週だけで十分苦しんだ。
……
でも……
……
何も言えない。
……
よし……
……
使うしかない。
……
俺が持つ……
……
最強の能力を。
……
なぜか……
……
アクティブスキルとして分類されたことは一度もない。
……
なのに……
……
数え切れないほど俺の命を救ってきた。
……
そう……
……
究極の生存スキル。
……
土下座……ではなく。
……
お辞儀。
……
「偉大なる先生……」
「尊敬すべき……」
「強大な力を持つ……」
「そして、その恐ろしい鼻の持ち主である先生……」
……
「……」
「もういい」
……
「この小さなネズミは……」
「自分が存在していること自体を……」
「ここにいる資格がないことを……」
「心より謝罪いたします」
あのクソゴリラめ……
……
絶対に許さない。
……
あいつのせいで……
……
俺の人生はこうなった。
……
いや。
……
今じゃない。
……
涙よ……
……
耐えろ。
……
俺はまだ生きている。
ゾニック先生:
「少なくとも……」
「自分の立場は理解したようだな」
「ここにいる多くの奴らとは違って」
……
「席につけ」
……
「では……」
「授業を続ける」
「二人組になれ」
「互いに剣術の練習を行う」
「俺は観察する」
「最後に……」
「お前たちの間違いを指摘する」
……
「分かったか……」
「ユラン・ダリコン?」
ユラン:
「はい、ゾニック先生」
……
よし……
……
今だ。
……
消えろ。
……
周囲に溶け込め。
……
もっと……
……
もっと……
……
もっと……
……
くそ……
……
ここにいるのは貴族ばかりか。
……
どうやら俺のスキル……
《背景に溶け込む》
……
この環境では発動しないらしい。
ユラン:
「おい、平民……」
「この変態め」
……
――はい。
……
やっぱり効果なし。
……
「はい、ユラン様」
ユラン:
「二度と俺たちの邪魔をするな」
「さもなければ、その役立たずな頭を叩き潰すぞ」
……
よし。
……
究極スキルを使う時間だ。
……
「はい、ユラン様」
「できる限り後ろで大人しくしています」
「だから……」
「この小さな召使いを、授業終了まで生かしてください」
……
くそ……
ユラン:
「ケケケ……」
「罰を受けている間に、少しは礼儀を覚えたようだな」
「お前もだ、役立たずの平民」
「オーレン」
オーレン:
「君の邪魔をしないようにするよ」
……
はぁ……
少なくとも……
俺以外にも馬鹿にされている平民がいる。
一人で惨めになるよりはずっとマシだ。
……
勘違いするなよ。
俺は勇者が嫌いなわけじゃない。
ただ……
俺の役割を奪ったことが嫌なだけだ。
オーレン:
「ヴィン、今日は随分楽しそうだね」
「もうあんな悪口は気にならなくなったのか?」
……
「あはは……」
「いや」
「ただ……君がいてくれて嬉しいだけだ」
「少なくとも……」
「一緒に馬鹿にされてくれるからな」
……
待て。
……
くそ。
忘れていた。
……
こいつは未来の勇者だ。
数年後には……
誰もが彼を称賛する。
その頃も……
俺はきっとモブキャラのままだ。
ゾニック先生:
「よし、ヒヨコども」
「殻から出る時間だ」
「始めろ!」
オーレン:
「始めようか、ヴィン」
……
ああ……
本当に……
物語よ……
俺のキャラクターを少しだけ昇格させてもよかったんじゃないか?
見ろよ。
俺は未来の勇者が正しい道を歩けるように手助けしている。
少しくらい昇格してもいいだろ?
オーレン:
「ヴィン?」
「どうしてぼーっとしているんだ?」
……
「あはは……」
「ごめん」
「先週のことを思い出していただけだ」
……
カン。
カン。
オーレン:
「あはは……」
「今でも信じられないよ」
「君が半裸で女子更衣室に入っていたなんて」
……
ヒュッ!
カン!
……
「おい!」
「事故だったって言っただろ!」
「友達なら信じろよ!」
……
ヒュッ!
カン!
カン!
オーレン:
「あはは……」
「落ち着いて」
「ただからかっただけだよ」
ガイド:
《上段斬り》
ヒュッ!
カン!
……
おお……
……
成功した。
……
自分でも驚きだ。
ガイド:
《後退》
《水平斬り》
ヒュッ!
カン!
オーレン:
「でも……」
「先週、何があったんだ?」
「全然姿を見なかったけど」
ガイド:
《体を後ろへ引け》
……
《低い攻撃が来る》
ヒュゥゥゥ……
……
「頼むから……」
「思い出させるな」
「あれは本当に地獄だった」
ガイド:
《前進》
ヒュッ!
オーレン:
「いや……」
「前に出るのは――」
ガイド:
《しゃがめ》
……
《剣の刃を上へ向けろ》
ヒュッ!
……
カン!
……
オーレン:
「え……?」
「君……」
「今、僕を斬りそうになったよね?」
「結局……」
「剣術を教えてくれたのは、君だからな」
オーレン:
「でも……」
「君の成長速度は本当に異常だよ」
「正直……天才って呼ばれてもおかしくない」
……
「あはは……」
「さすがに褒めすぎだよ」
「俺がやったことなんて……」
「君に教えてもらったことを真似しただけだ」
……
本当は……
戦っているのは……
あの錆びたポンコツだ。
「俺は……」
「ただ錆びた鉄くずに操られている人形だ」
……
カン!
ヒュッ!
カン!
……
オーレン:
「本当に上達したね」
「あはは……」
「最初に始めた頃なんて……」
「剣を持つことすらできなかったのに」
ガイド:
《大きく振り下ろせ……後退》
ヒュッ!
……
「おい……」
「俺を馬鹿にするな」
……
オーレン:
「あはは……」
「本気で言っているよ」
「実は……君が少し羨ましいくらいだ」
ヒュッ!
カン!
……
羨ましい……?
俺を……?
……
勇者が……
モブキャラを羨ましがる?
……
ん?
……
そんな展開……
普通の物語にはないぞ。
……
勇者が羨むのは……
強者だ。
……
背景キャラじゃない。
ガイド:
《上段斬り》
ヒュッ!
……
「なあ、オーレン」
「まさか……」
「俺を可哀想だと思っているんじゃないだろうな?」
「俺は一応……モブキャラだけど……」
……
「えっと……」
「ここで……」
「まだ俺には誇りがある」
……
と言おうとした。
……
でも……
……
俺にまだ誇りなんて残っているのか?
……
くそ……
……
自分でも分からない。
……
カン!
カン!
オーレン:
「可哀想?」
「どうしてそう思うんだ?」
「僕は……」
「君は本当に面白い人間だと思っているよ」
「それに……」
「そうじゃなかったら……」
「イラリア・コンティ・グラン様が、わざわざ君をこの学院へ連れてくるはずがない」
ヒュッ!
カン!
……
「おい!」
「俺の前であのゴリラの名前を出すな!」
「あいつが俺の人生に入り込んでから……」
「何もかも悪い方向に進んでいるんだぞ!」
……
カン!
ヒュッ!
ガイド:
《半回転》
フワッ!
……
オーレン:
「えっ!?」
ガイド:
《素早く後退……反対側から攻撃》
ザンッ!
カン!
オーレン:
「あ……」
「良いフェイントだ」
「でも……」
「あのタイミングで成功させるには……」
「経験が必要だよ」
……
「あはは……」
「買いかぶりすぎだよ、友よ」
……
正直……
評価されるべきなのは……
この錆びたバケツだ。
……
自分でも驚いている。
……
ようやく役に立ったんだからな。
……
カン!
ヒュッ!
カン!
カン!
オーレン:
「そういえば……」
「この学院で気に入ったものは見つかった?」
……
ヒュッ!
カン!
……
「うーん……」
「正直に言うと……」
「面倒なことしかないな」
「本当に……」
「なんで問題の方から俺を追いかけてくるんだ?」
「静かに暮らすことって、そんなに難しいことなのか?」
ガイド:
《素早く後退》
《両手で剣を構えろ》
……
「え?」
「なんで急に指示が増えた!?」
「おい……」
「あいつ、飛び上がりすぎだろ!」
カン!
……
「痛っ……」
「今のはかなり強かったぞ、オーレン」
オーレン:
「僕の方が驚いているよ」
「君が本当に僕についてこられるなんて」
「前にも言ったけど……」
「君が羨ましい」
「でも……」
「憧れている、の方が正しいかもしれない」
……
「おい……」
「どっちの言葉も好きじゃないんだけど」
オーレン:
「僕は十年間……」
「剣を振り続けてきた」
「魔法が使えないなら……」
「剣で戦うしかない」
カン!
「もし唯一能力を持っていないなら……」
「それでも努力を続ける」
ヒュッ!
「いつか……」
「自分自身の力で手に入れるために」
カン!
カン!
「だから……」
「何年もかけて身につけるものを……」
「一ヶ月にも満たない時間で習得した君を……」
「尊敬せずにはいられないんだ」
……
カン!
カン!
ヒュッ!
ガイド:
《後退》
……
「なるほど……」
「そういう設定か」
……
「勇者は……」
「無力さを感じている」
……
「魔法なし」
……
「ユニークスキルなし」
……
「特別な力なし」
……
「……」
……
「ハーレムなし」
……
「……」
……
「それから……」
「尊厳については……」
「触れないでおこう」
「でも……」
「どうしても……彼に同情できない」
「どうやって哀れめっていうんだ……」
「いずれ世界最強になる奴を……」
「くそ……」
「このベタな展開め」
オーレン:
「ヴィン!」
……
「ん?」
「何?」
「ああ……悪い」
「聞いてなかった」
オーレン:
「君に聞きたいことがあるんだ」
「ずっと迷っていたんだけど……」
「でも……」
「もう待てないと思って」
……
「おい……」
「おい……」
「おい……」
「まさか……」
「ここでモブキャラが勇者パーティーに加入する流れじゃないだろうな?」
「くそ……」
「まだ心の準備ができていない」
「そんな悲惨な役割を生き残るためのスキルが……」
「まだ足りないんだ」
オーレン:
「ヴィン……」
「君は……」
……
「待て……」
「待て……」
「まさか……」
「俺に命を捧げろとか言わないよな!?」
オーレン:
「君は……」
「ユニークスキルを持っているのか?」
……
「え?」
……
オーレン:
「……え?」
……
「……え?」
……
「ちょっと待て」
「今……」
「ユニークスキルって言ったよな?」
オーレン:
「命を捧げる……?」
「何を言っているんだ?」
……
「あはは……」
「いや」
「何でもない」
「ただの冗談だ」
「忘れてくれ」
……
「くそ……」
「心臓が止まるかと思った」
「ついにあの展開が来たと思ったじゃないか」
オーレン:
「それより……」
「教えてくれ」
……
「ん?」
「ああ……」
「ユニークスキルのことか」
……
「さて……」
「どう答えるべきだ?」
「たぶん俺は……」
「普通より多く持っている」
……
「なあ、オーレン」
「答える前に……」
「一つ聞きたい」
オーレン:
「いいよ」
……
「一人の人間が持てるユニークスキルは……」
「最大でいくつなんだ?」
オーレン:
「うーん……」
「僕の知る限りでは……」
「二つ以上のユニークスキルを持つ人間はいない」
……
「二つだけ……?」
オーレン:
「そう」
「少なくとも……」
「世間ではそう信じられている」
……
「それはどういう意味だ?」
「俺は……」
「異常な存在なのか?」
「それとも……」
……
「勇者なのか?」
……
「あはは……」
「いやいや」
「そんなわけない」
「勇者なら……」
「目の前にいるじゃないか」
オーレン:
「でも……」
「例外は存在する」
……
「本当に!?」
オーレン:
「うん」
「聖女……」
「神々に選ばれた者……」
「そして勇者」
……
「ああ……」
「なるほど」
……
「また神か」
「この世界の話は……」
「結局いつも神に行き着く」
「分からない……」
「でも……」
「簡単には受け入れられないな」
オーレン:
「それから……」
「もう一つ存在する」
「ヴェラークスと呼ばれる集団だ」
「そのメンバーの多くは……」
「複数のユニークスキルを持っている」
……
「ヴェラークス……」
「ああ……」
「それって……」
「あの子が所属している部隊か」
オーレン:
「え!?」
「そ、そうだけど……」
「彼らはエリート部――」
「え?」
「な、何の話!?」
……
オーレン:
「な、何を言っているんだ!?」
「僕が彼女を好きだなんて……」
「一言も言ってない!」
「彼女は……」
「ただの幼馴染だ」
……
「へぇ……」
「分かりやすいな、オーレン」
……
「ははは……」
「冗談だよ」
……
「まあ……」
「本当のことはもう分かっているけどな」
「好きな女の子に追いつこうとして必死な男」
「それを何と呼ぶか……」
「俺は知っている」
オーレン:
「あ……」
「ヴィン……」
「僕をからかうのはやめてくれ」
……
「悪い」
「ははは」
……
「それで……」
「ヴェラークスの人間は……」
「一体いくつのユニークスキルを持っているんだ?」
オーレン:
「僕が知る限り……」
「最も強いメンバーは……」
「五つのユニークスキルを持っている」
「それが僕の知る最高記録だ」
「それ以上の人間がいるとは思えない」
……
「五つだけ……?」
……
「それは誰なんだ?」
オーレン:
「聖女サニヤ」
……
「聖女……」
……
ガイド:
《正解》
《サニヤと呼ばれる個体は、五つのユニークスキルを保有している》
《現在確認されている中でも、最も危険な存在の一人》
……
「くそ……」
「逃走対象リストに……」
「また一人追加だな」
オーレン:
「でも……」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「いや……」
「ただ気になっただけだ」
「一人の人間が持てるユニークスキルの最大数って……」
「どれくらいなんだ?」
「それと……」
「ユニークスキルがどこから生まれるのか知っているか?」
オーレン:
「昔、本で読んだことがある」
「遠い昔……」
「ユニークスキルは最初……」
「魔法だけでは補えなかった不足を埋めるために……」
「生まれたものだって」
「でも……」
「今では、それだけが目的じゃない」
……
コツ……
コツ……
……
「本当に?」
オーレン:
「うん」
「今では、人間が持つ本来の可能性を引き出すためのものになっている」
「そして魔法と組み合わせれば……」
「人をまったく別の領域へ引き上げることもできる」
「ただ……」
「それは本当に珍しいことだ」
「ほとんどの人間は……」
「一生に一つのユニークスキルしか目覚めない」
……
「なるほど……」
「それなら……」
「少しは納得できる」
……
「それ以外に……」
「何か別の分類はあるのか?」
オーレン:
「うーん……」
「聞いたことはないな」
……
「じゃあ……」
「なぜ俺には、こんなに多くの種類がある?」
「俺は……」
「異常な存在なのか?」
「神々が……?」
……
「いや……」
「神が関係しているとは思えない」
……
「待て……」
「彼は言った」
「ユニークスキルは、魔法では補えないものを補うために存在する」
「だとしたら……」
「俺に魔力がないから……」
「こんなにも多くのスキルを得たのか?」
……
「いや……」
「それでも説明できない」
「だってオーレンですら……」
「まだユニークスキルに目覚めていない」
ガイド:
《対象ヴィンを肉体および精神面から評価》
《魂の解析に失敗》
《原因:魂情報の読み取りエラー》
……
「魂の……エラー?」
「おい……」
「そんな重大なことを……」
「まるで小さな不具合みたいに言うな」
ガイド:
《情報不足》
……
「相変わらず……」
「答えが中途半端だな」
「この錆びたポンコツめ」
……
「それにしても……」
「なぜ俺には、こんな分類が存在する?」
「アクティブスキル……」
「アドバンススキル……」
「コンバットスキル……」
「そして……」
「最後の名前は何だった?」
ガイド:
《青:オリジンスキル》
……
「ああ……」
「そうだった」
「もしこの分類自体が、この世界に存在しないなら……」
「一体どこから来た?」
ガイド:
《推測》
《対象ヴィンは、この世界の出身ではない可能性が高い》
《類似した事例は確認されている》
《ただし、発現形式には個体差が存在》
……
「本当に!?」
「くそ……」
「じゃあ、どうして最初から言わなかった!?」
ガイド:
《対象ヴィンが質問しなかったため》
……
「この錆びた鉄くずめ!」
「前にも言っただろ!」
「知っていることは全部教えろって!」
ガイド:
《……》
……
「今さら黙るな!」
オーレン:
「ヴィン……」
「ヴィン……」
「ヴィン!」
……
「ん!?」
「何だ?」
オーレン:
「君……」
「まだ答えていないよ」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
……
コツ……
コツ……
……
「何でもない」
「ただの興味だ」
……
まさか……
自分が複数のスキルを持っているなんて言えるわけがない。
オーレン:
「そうか……」
「じゃあ、これだけ答えてくれ」
「君は……」
「ユニークスキルを持っているのか?」
……
正直に話すのは危険だ。
……
「うん……」
「たぶん、一つ目覚めたと思う」
「痛覚適応だ」
オーレン:
「え?」
「痛覚適応?」
「どういう意味?」
……
「あはは……」
「つまり……」
「ただ痛みに慣れただけだ」
……
「くそ……」
「名前だけで心が傷つくんだけど」
オーレン:
「そんなスキル……」
「聞いたことがない」
「でも……」
「まるで……」
「苦しみから生まれたスキルみたいだね」
……
「おい……」
「それを良いことみたいに言うな」
「ぐすっ……」
「なんか傷ついた」
オーレン:
「それでも……」
「ユニークスキルを持っている方が……」
「何も持っていないよりはいいと思うよ」
「そんな目で見るな」
「痛覚適応のどこが祝福なんだよ」
「それに……」
「一番怖いのは……」
「たぶん物語は……」
「この一つのスキルだけでは終わらないことだ」
「欲張りな主人公め……」
---
ゾニック:
「ほう……」
「どうやら二人とも楽しそうだな」
……
「しまった……」
「今じゃない」
「俺にはまだ……」
……
「ああ……」
「くそ……」
「教官だ」
---
ゾニック:
「ははは……」
「すまないな」
「何か大事な話でも邪魔してしまったか?」
オーレン:
「申し訳ありません、ゾニック先生」
……
「おい……」
「俺の役割を奪うな」
「生き残るために頭を下げるのは……」
「俺の仕事だろ」
「勇者の役じゃない」
---
ゾニック:
「もし二人で話す余裕があるのなら……」
「お前たちの剣術は……」
「この授業で求められる水準を」
「すでに下回っているということだな」
「そうだろう?」
「小さなネズミ……ヴィン」
……
「分かった……」
「ここは俺の最大のスキルを使う時だ」
《土下座》
《生存スキル発動》
……
「申し訳ありません、ゾニック先生」
「俺の剣術は……」
「底辺という言葉すら届かないほど……」
「遥か下にあります」




