《真実強制》スキル
その目。
俺は知っている。
...
ゴリラオーラが戻ってきた。
ゴクッ……ゴクッ……カチッ。
――素晴らしいおもてなしをありがとうございます、レディ・イラリア。
――さて……どこまで話していましたっけ?
イラリア:
「あなたって、本当に人を怒らせる才能があるわね。」
……
――えええ……
――そんなつもりはなかったんですけど。
――俺は甘い物に対して完全に無防備なんです。
イラリア:
「見れば分かるわ。」
……
もし彼女に……
学院に入ってから、ほぼ破産状態だなんて言ったら……
たぶんもっと笑われるだろう。
くそ……
この出費地獄め。
イラリア:
「祝祭の理由を知りたい?」
……
――正直に言うと……
――俺が知っているのは、税金が上がるってことくらいです。
(くそ……税務官め……)
(毎日ギリギリで生きてるっていうのに……)
(安全な場所で座っているだけで金を稼いでいる奴らがいるなんて……)
イラリア:
「ふふふ……」
「あなたの言うことも分かるわ。」
「祝福の季節とはいえ、税金が増えるのは事実だから。」
……
待て。
……
逆に考えるんだ。
税務官の仕事……
悪くないんじゃないか?
金。
安定。
食事。
……
ふふふ……
……
それに……
自分の好きな時に税金を上げることもできる。
……
夢の職業じゃないか。
――素晴らしいレディ・イラリア……
イラリア:
「無理ね。」
……
――え?
――いや……
――まだ何も言ってませんけど。
イラリア:
「言う必要はないわ。」
「あなたの顔を見れば分かるもの。」
「今、税務官になろうとしていたでしょう?」
……
(くそ……)
(これがあれか……)
(表情だけで考えていることを読むヒロイン展開か。)
(顔の管理方法を覚えないと……)
ザクッ……
イラリア:
「それで……」
「知りたいの? 知りたくないの?」
――いや……
――別に。
――こういう行事には慣れていないので。
イラリア:
「それでも……」
「教えてあげる。」
――いや……
――だから、別に知りたくないと……
イラリア:
「教えると言ったの。」
――でも……
……
待て。
……
魔法陣?
……
なるほど。
これは質問じゃない。
命令だ。
――もちろんです、レディ・イラリア。
――この国の文化を学べるなんて、光栄です。
(くそ……)
(弱者であるモブに無理やり話を聞かせるとは……)
……
イラリア:
「ネフェルタニア王国の民は、古くからこの祝福の月を祝ってきたの。」
「私たちにとって、とても神聖な時期なのよ。」
……
ザクッ。
――へぇ……
イラリア:
「伝承によれば……」
「人類が初めて三百年災厄を生き延びた時期も、秋だったと言われているわ。」
……
不思議だ。
さっきまで俺を吹き飛ばそうとしていた声が……
今は完全に歴史の先生みたいになっている。
イラリア:
「幾度もの苦難を乗り越え……」
「人類の努力と神々の加護によって……」
「王国と周辺地域を守る大結界が作られたの。」
――ああ……
――それなら魔法の授業で習った。
――世界同調理論……
――そんな感じの話だったな。
イラリア:
「その通りよ。」
「その現象こそが、今の人類へと進化するきっかけになった。」
「だからこそ教会は、神々への感謝として毎年この祝祭を管理しているの。」
ゴクッ……
……
(この世界の人たちは、本当に神という存在に強く結びついているな……)
(何でも神の加護で説明する。)
(本当に神々が全ての出来事に関わっていると思っているのか?)
(……でも。)
(何かもっと深い理由がある気がする。)
――レディ。
――一つ、質問してもよろしいですか
イリア:
「ええ。」
「それと……」
「私のことは普通にイリアと呼んでいいわ。」
……
— 無理だ。
「平民の俺が、貴族を名前で呼ぶ?」
「礼儀を気にしているわけじゃない……」
「ただ……」
「一度慣れてしまったら、後で彼女のファンとかいう奴が現れて……」
「俺の首を刎ねに来そうだからだ。」
イリア:
「でも、あなた……」
「もう私のことを『ゴリラ』って呼んでいるじゃない。」
……
— ははは……。
— あれはただの言い間違いです。
— 別に外見のことを言ったわけじゃありません。
— その……。
— 力のことです。
— その強さが……。
— 少しだけ……。
— ほんの少しだけ……。
— ゴリラを思い出させるというか……。
……
「……」
「待て。」
「なんで急に空気が重くなった?」
……
イリア:
「へぇ……そうなの?」
……
「くそ……。」
「なんで俺は毎回同じ罠に引っかかるんだ?」
「いや。」
「今はプライドを気にしている場合じゃない。」
— イリア様……。
— あなたの偉大さは、ただのゴリラなんかでは到底表現できないほど素晴らしいものです!
……
「くそ……。」
「俺の尊厳は、この体に戻る気がないらしい。」
……
イリア:
「あはは……。」
「冗談よ。」
「それで……」
「質問って何だったの?」
……
— えっと……。
— ちょっと気になったんですが……。
— どうしてこの世界では、神々への信仰がここまで強いんですか?
「この世界に来てから……」
「神が本当に存在すると証明できるものを、俺は一度も見たことがない。」
……
— 俺が暮らしていた村も……。
— ハーモニー。
— 豊穣と実りの女神の名から付けられていました。
— それにネフェルタニアも……。
— だから……。
— どうしてみんな、そこまで強く信じているんですか?
イリア:
「どうして……って?」
「神々は私たちを創った存在よ。」
「私たちが今の姿になれた理由も、神々のおかげなの。」
……
「ああ……。」
「彼女たちにとって……。」
「これはただの意見じゃない。」
「証明する必要すらない真実なんだ。」
ゴクッ……
— なるほど。
— あなたの立場からすれば……。
— 確かに納得できます。
カチッ。
— でも……。
— もう一つ質問があります。
イリア:
「質問?」
……
— 誰が神を見たんですか?
……
— いや……。
— 本当に誰かが自分の目で神を見たことがあるんですか?
— それとも……。
— この神の姿というものは……。
— 人間が作り上げたものではないんですか?
……
— 人間が長い時間をかけてそのイメージを形作って……。
— 世代から世代へ伝えて……。
— そして誰も疑えない真実になった可能性はありませんか?
……
ゴクッ……
イリア:
「古代の記録には……」
「神々と出会った人間がいたと書かれているわ。」
……
— そうかもしれません。
— でも俺は……。
— みんなが信じているからという理由だけで……。
— 何かを信じるのは好きじゃないんです。
……
— もし本当に神が存在するなら……。
— 俺が疑問を口にした程度で……。
— 消えるような存在じゃないでしょう。
……
【スキルを獲得しました】
【真実を追及する者】
……
— なんだ、それ……?
……
【現在の段階では回答できません】
……
— チッ。
— 何を期待していたんだ、こんなポンコツに。
……
「……」
イリア:
「つまり……」
「あなたは教会の教えを疑っているの?」
……
「しまった。」
「最悪の言い方をした。」
「本当に……最悪だ。」
— いえ、違います!
— 教会を否定しているわけではありません。
— 信じている人たちのことも尊重しています。
……
「少なくとも……。」
「これで首を切られる可能性は減るはずだ。」
— 俺が言いたいのは……。
— 神が人間を創ったのか……。
— それとも……。
— 人間が神という存在を作り上げたのか……。
……
「くそ……。」
「状況を直すどころか……。」
「さらに悪化させている気がする。」
「死が俺を追いかけているのか……。」
「それとも……。」
「俺の方が死に向かって走っているのか?」
……
「でも……。」
「疑うこと自体は自然なことだ。」
「俺はこの世界の外側から来た人間として、この世界を見ている。」
「だけど彼女たちは……。」
「この世界以外を知らない。」
「……」
「いや。」
「この魔法陣は、どう考えても良い兆候じゃない。」
イラリア:
<たとえあなたが王国の外から来たとしても……>
<そんな考え方をする人は、そう多くないわ。>
……
「よし。」
「モブキャラの人生、終了のお知らせだ。」
「五分後には作者がこう書くんだ。」
「ある生徒が原因不明の死を遂げた。」
――いや、神の存在を否定しているわけじゃありません。
――ただ……
「……よし。」
「ここは奥義を使うしかない。」
「生存哲学・秘技。」
「第一の型……」
「生き残るための哲学。」
……
――自分自身で答えを見つけたいんです。
――誰かに『これが真実だ』と言われたからって……
――それをそのまま信じるのは好きじゃありません。
……
「最高だ。」
「生存哲学すら失敗した。」
通知:
【危険オーラを感知しました。】
……
「素晴らしい。」
「絶対に二度と言ってはいけない発言リストに追加だ。」
イラリア:
<ヴィン……>
<あなたは……信じているの?>
……
「くそ。」
「数ある質問の中で……」
「なぜそれを選ぶんだ?」
……
――もちろん。
――信じています。
「ただ……」
「あなたが期待しているような形ではないけど。」
……
――でも……
――もう一つ質問してもいいですか?
イラリア:
<何かしら?>
……
――どうして僕は……
――数分後には死んでいるような気がするんでしょうか?
……
……
ハハハ……
イラリア:
<危険なことを言ったからでしょうね。>
……
「理解した。」
「この話題には二度と触れない。」
「少なくとも……」
「モブキャラから……」
「もう少し殺されにくいモブキャラへ進化するまでは。」
……
「なあ作者……」
「もし将来、主人公のために僕を犠牲にするつもりなら……」
「その前に一度くらい助けてくれ。」
コンコン……
……
「ん?」
「このタイミングで?」
「作者、今日はずいぶん早起きしたのか?」
「展開が進むのが早すぎる。」
……
声:
<イラリア様?>
……
サミドス:
<私です。>
……
「ああ……」
「そして、これは次のキャラクター登場シーンか。」
「僕の休憩時間は終わりだ。」
……
「どうやら作者はこの回をスタジオに渡したらしい。」
「そしてスタジオ全員一致で決めたんだ。」
「この章の主役は……」
「僕の苦しみだって。」




