第五十九話 「お使い」
俺たちはヴァルデリア帝国の帝都であるヴァルッツに来ている。
世界一の人口を誇るヴァルッツは何もかもが桁違いだ。
馬車の中からでも人口の多さが、一目で分かる。
窓の景色からは買い物客でごった返しになっている市場の様子。その市場の品物は今まで見たことがないほどに輝いて見えた。
俺も外に出たいな~と思ったが、今はまだ夕方だ。吸血鬼になってしまった俺にとってやけどする程度とはいっても、日の光は危ない。
すると、馬車がゆっくりと止まった。窓の外を見ると多くの馬車が止まっていた。
駐車場のようなものか?と思っているとクロノアが
「グレイス様、ラング様、エリーナ様、に頼みたいのですが?前回のように買い出しに行ってきてはくれませんか?もちろん。前回ほどの量は頼みません。だいたい約4か月分です。1000ファントムお渡ししますね」
と言って1000ファントム入った小袋を渡された。
すると、シビルが
「私も行きますよクロノアさん」
と言ったが、クロノアが少し考えたのち、
「出来ればシビル様には、この汚くなった馬車の中のお掃除を手伝っていただきたいと思います。」
と言われ、シビルは掃除をすることになった。
俺はクロノアに
「クロノア。今昼でしょ?俺吸血鬼だから、出れないんだけど…」
と俺が外に出れないことを伝えると、
「はっ!?失礼しました。安心してください。専用の日焼け止めクリームをお渡ししますので大丈夫です」
と言われ、日焼け止めクリームを渡された
俺が驚いていると
「効果は一回1時間ですのでそれまでに戻ってきてくださいね」
と言われた。たぶん一時間もしないうちに夜になるだろ。
だが、ほんとにこんなんで大丈夫なのか?と疑心暗鬼になりながらもその日焼け止めクリームを全身に塗った。
クリームを塗り終わると俺は恐る恐る馬車から出た。
すると、クロノアが言っていたように太陽の光に当たるとやけどせずにいられた。
おいおい。こんなんで太陽の光を克服できるのかよと思いながらも急いで買い出しに出かけた。
なんせ、1時間の制限付きだ。もし、買い出しの途中で効果が切れて、日の光に当たれば俺は灰となって消えてしまう。
人だかりの中街を歩いていると、魔道具店を見つけた。その魔道具屋の店先には大陸中から集めたで数々の魔道具がそろっていた。
さすが世界一の都市ヴァルッツだ。どれもこれもとてつもなくレアな魔道具が集まっている。
まぁその分値段もそれ相応だが、ここまでレアな品が集まっている店なんてこの世界でここくらいしかないだろう。
俺が目を輝かせながら店先の魔道具に見とれているとエリーナに服を引っ張られ、
「早くして!ラング行っちゃうよ」
と言われた。俺がはっ!?となって後ろを振り向くとラングの姿はなかった。
俺は急いで立ち上がり、エリーナと一緒にラングの歩いて行った方向に向かって走った。
しかし、これだけ人がいるため、すぐにラングを見失ってしまった。
俺たちは人の少ない路地に移動してどうやってラングを探すか話すことにした。
「エリーナ。どうやってラングを探す?」
「えっ…。やっぱり頑張って探すしか…」
と話していると
「「こんなところにいい嬢ちゃんがいるぜ」」
と後ろから声がした。俺たちが振り向くとそこには
剣を持った2人の魔族がいた。
「いい女じゃねぇか。おっもしかして女のほうは人間か?男のほうは人間っぽいがなんか違うな」
とハゲチビデブのほうの魔族が言い
「かわいい顔してんじゃねぇか。胸は小さいが、まぁそれもいい」
と細長い真っ白な方の魔族も喋った。
「「さぁ痛い目見たくないなら女を渡しな!!」」
と言って俺に襲い掛かってきた。俺はいつも通りに『聖水竜巻』を放った。
しかし、俺は数か月ぶりに攻撃する魔術を使ったからなのか、吸血鬼の体になったからなのか、俺は自分の放った魔術のエネルギー制御ができなかった。
エネルギー制御ができなくなってしまったことで俺の『聖水竜巻』は暴走し、両脇の建物を削り取るほどの大きな『聖水竜巻』になってしまった。
これを見た2人の魔族は
「「おいおい嘘だろ…」」
と言って『聖水竜巻』に飲み込まれていった。
俺は『聖水竜巻』を止めようと魔力を出すのをストップしようとしたが、体が言うことを聞かない。
すると、騒音を聞きつけた警備隊が現れて
「おいっ!貴様ら何をやっている!」
と剣を持って走ってきた。
俺は身を守るために、『聖水竜巻』の向きを警備隊の走ってくる方向に向きを変えた。
警備隊は『聖水竜巻』に巻き込まれて跡形もなく全員消えてしまった。
(このままではまずい。どうにかして魔力を止めないと…)
と考えていると、建物の屋根からラングが飛び降りてき、俺の『聖水竜巻』を断ち切った。
断ち切られてことにより、俺は魔力を止めることができた。
「はぁはぁ。俺の体どうなって…」
と俺がラングに話すと
「そんなことよりすぐに戻るぞ。すぐにきっと騎兵隊が来る」
と俺たちは馬車ある駐車場に向かって全速力で走っていった。
俺たちが全速力で走っているとエリーナ
「ハァハァ。まってよ~」
と言ってきた。
「はぁ!?こんな時に!」
俺は仕方がなく、エリーナに『聖風走力』を放った。
この魔術は、自分や放った相手に、風の力を付与し、走力アップとスタミナ回復効果を得ることができる魔術だ。
そのおかげでエリーナは俺たちについてくることができた。
「もうすぐだ!がんばれ!」
とラングが言ったとたん後ろから騎兵隊の姿が現れた。
俺は足止めのために魔力を最小にして、『岩壁』を放った。
すると、騎兵隊の少し前の道路に10mはある岩の壁が形成された。
最小限の魔力であれだけとは…と驚いていると、騎兵隊の先頭の隊長のような兵士によって岩の壁が一瞬で崩された。
「ファッ!?」
と俺は驚きのあまり声を出してしまった。するとエリーナが
「あっ!あれだ!」
と言って馬車を指さした。
俺は『聖風竜巻』を放って俺とラング、エリーナを馬車に向かって飛ばした。
俺たちが馬車に入ると、
「はやくっ…馬車出して…」
とクロノアに言った。
「何事ですか!?」
と言いながら馬車を出発させた。
騎兵隊はもうすぐそこまで迫ってきている。
カーミラが
「何があったの?」
と俺に聞いてきた。
買い出し中に俺はラングと離れて起こったことのすべて話した。
「そういえば言うの忘れてたわ。あなたは吸血鬼になったのなら、今までの10倍以上の魔力を得たことになるの。だから、制御できなかったのね」
と説明された。
「けれど、この状況はまずいわね。仕方がないわ。私が出るわ」
と言って馬車を飛び出した。
「お嬢様!!」
とクロノアが叫んだが、カーミラは羽を出しながら飛んでいた。
「あなたたちには消えてもらうわ『悪魔の支配者』」
クモの巣上のレーザーと大きな魔力弾が騎兵隊に向かって放たれた。
騎兵隊の隊長らしき男は
「あっあれは…。吸血鬼カーミラだ…」
といい、騎兵隊がカーミラに向かって剣を抜いた。
しかし、カーミラの圧倒的な魔術により、騎兵隊は一瞬で消えていった。
カーミラは倒し終えると、馬車に戻ってきて
「はぁ。このままこの国を抜けないとね」
と言い
「検問を破壊します!!衝撃の備えて」
とクロノアが言うと
検問の門を破壊し、街の外に出た。
衝撃で俺たちは床にひれ伏した。
「ううううう~」
と俺が立ち、前の窓を見ると、そこにいたのは数百の騎兵たちだった。
「お久しぶりです、カーミラ様。覚えていらっしゃいますか?」
と一番偉そうな空を飛んでいる魔族が言った。
俺はそいつの姿にに見覚えがあった。それは、確か、一年以上前にグラヴィス教授を襲った魔族だ。
すると、カーミラは馬車から出ていき、
「覚えているわよ。あなたは、たしか、ヴァルデリア帝国軍騎兵隊副将軍のグダラね」
「おお。私の名前を覚えてくださっていたんですか。しかし、私はおかげさまで副将軍ではなく、将軍になりました」
「へぇ」
とカーミラが答えると、
「あなたは我がヴァルデリア帝国を裏切りました。なので殺します。さぁやれ!」
と手を動かすと数百の騎兵が一気に攻めてきた。
キャラクター紹介
【エリーナ・ホーエン】
種族:人
性別:女
魔術:中級まで(詠唱あり)
剣術等:初級以下、運動神経はごみカス。
年齢:16歳
身長:157㎝
外見:薄い赤の髪色、貧乳
裕福な家出身だが、両親は忙しく1年中のほとんどを家政婦と過ごしていた。
ヴァルデリア大陸に来てからは、戦争などの苦しいことに揉まれ、心を少し病んでいる。
また、本人は貧乳のことを少し気にしている。性格は少しわがままだが、最近マシになってきている。
※第59話時点
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