第五十三話 「完璧なメイド」
※前話を読んでいない方だと話の意味が分からないと思いますので是非読んでください。前話を読んでいても5月31日に前話の「止まる『世界』」を1000文字ほど加筆したので加筆した分を読んでいない方はお手数ですが、読むことを推奨します。
少し休憩したおかげでもう一度くらいなら『最上級回復』は使えるであろう。エリーナは近くで見ていないからわからないが、腹にはナイフが刺さっていたはずだ。俺は這いつくばりながらエリーナのほうへ行った。エリーナまでの距離は10mほどしかないが、それでもボロボロの俺の肉体には長距離に感じた。
だが、エリーナを回復できれば俺たちはこの建物から逃げることができる。俺は必死に向かっていった。エリーナのところまでついた。俺がエリーナの腕を触ると脈がないことに気が付いた。
(これはまずい…)
脈がなければ『最上級回復』でも回復できるかどうか分からない。なので俺は心臓マッサージをすることにした。だが、今の俺の力では心臓マッサージなんてできる体力は残っていない。俺は近くで倒れているラングに助けを求めた。
「ラング来て!」
と俺が言うと
「なんだ?」
と膝をつきながらこっちに向かってきた。あれだけの傷を負いながら立ち上がるとはさすがだ。
「お願い。エリーナに心臓マッサージをして!!」
「ええっ!?」
と俺がエリーナの胸を指さしながら頼むとラングは少し困った表情をした。
「えっ!?それは悪いよエリーナに」
と言った。。
(こんな時に…。本当が俺がやりたいのに!)
「そんなのどうでもいいから早くして!」
と俺がラングの手をもってエリーナの貧しい胸にあてた。
「えっ!?」
「早くして!!」
と俺が言うとラングは恥ずかしそうにマッサージをはじめた。エリーナの胸は貧しいおかげでマッサージの衝撃がそのまま心臓に伝わっているようだ。
何分か心臓マッサージをしているとエリーナが息を吹き返した。俺はそのタイミングで『最上級回復』を使った。ついでにエリーナの胸に手を当てていたラングもついでに回復できて一石二鳥だ。すると、
「んっ~。何かあった?」
とエリーナが起きてきた。すると、エリーナが
「えっ!?ラング最っ低ー!」
とエリーナの胸に手をのせているラングに言った。
「おいおい。これには訳が…」
とラングが胸から手を離すと
「そんなの言い訳どうでもいいから」
とそっぽを向いた。すると、その声を聞きつけたのか奥からメイドが現れ
「あら?生きてたの?まぁいいわ。どうせ死ぬことになるんだし『時の死人』」
(まずい今の状況では戦えない…)
と俺が守るために無理をして『最上級防御』を出そうとしていると、ラングが俺の前に出て俺やエリーナに飛んでくるナイフをすべて剣で防いだ。しかし、ラング自身に飛んでくるナイフは一切防いでいなかったので体中は血まみれだ。
「はぁ。はぁ。このくらい...。大丈夫…。だ」
と言いその場で倒れた。一目見ただけでわかる、全身の急所すべてにナイフが刺さっていると、倒れたラングからは数Lの血が勢いよく飛び出している。
(まずい…。最上級回復を使わないと…)
だが、俺の体に次使うと俺の体に負担がかかる過ぎる…。しかも、回復させるにはこのメイドからの攻撃を守りながらしないといけない。
「これでおしまいね。『止まる「世界」』」
と言ったのが聞こえた。その瞬間俺の中にあった考えのすべてがつながった
「ストップ!?ってことはもしや…お前は時を止めれるのか!?」
とメイドに聞いてみた
「2人目ね。私のこの能力に気が付いたのは。けれど、お嬢様のほうが、もっと詳しく言ってくれたわ。私は時を操れるの。でも、それを知ったところであなたはもうすぐで死ぬの」
(確かにそうだ…対処方法なんてない)
「これでおわりにしましょ。『止まる「世界」』」
俺の目の前に大量のナイフが現れた。対処策はなくても、どんな攻撃かどうかが分かれば少しは何とかなるだろう。
俺は魔力消費少なめの『業火』を使って全方位にあるナイフを溶かしていった。しかし、それでもナイフの何本かは俺の体に突き刺さる。
(エリーナを守りながら戦うのは無理だ…)
すると、メイドが
「はぁ。やってしまいなさい!」
とそういった瞬間にメイドの後ろから大量のコウモリの群れが出てきた。
(この数のコウモリを倒すには時間がかかってしまう…)
すると、回復させて倒れていたはずのシビルが立ち上がり剣術でコウモリを切り出した。
「大丈夫なのか!?」
と俺が聞くと
「もう大丈夫です。さぁ行きましょう!!」
俺はコウモリ退治をシビルに任せてメイドと戦った。
「はぁ。また、復活するの!?きりがないわ!」
俺は時止めされる前に『業火長槍』を放った。『業火長槍』は瞬く間にメイドに向かって飛んで行った。
「はぁ~」
と言ったのが聞こえた瞬間に目の前からメイドの姿が消えた。そのとき
「これだから。さぁ死になさい」
と後ろから俺の首筋にナイフを当ててきた。
(あっ…終わった…)
と思った瞬間ゴンッ!!と鈍い音がし、メイドが俺に倒れてきた。俺は何が起こったのか理解できずに前を向くと灰皿のようなものを持ったエリーナが立っていた。
「役に立ったでしょ?」
とエリーナが嬉しそうに言って俺たちは一安心したとともに体にこの戦いでの疲れがどっと押し寄せてきた。
(はぁ~疲れたー。そうだ。ラング!!)
とラングを思い出し俺はラングに『最上級回復』を使った。
何分かしてラングが起きた。
「倒したのか?」
「うん。エリーナが大活躍だったよ!!」
と俺が言うとエリーナが照れくさそうにそっぽを向いた。俺の魔力もそれなりに回復したし、そろそろ帰るかと立ち上がった瞬間。背後にあった巨大なステンドグラスの窓が一斉に割れた。そのとき、俺は背筋に恐怖を覚えた。俺はなんだ?とゆっくり後ろを振り返ると大きな紅い月をバックにリリスのような吸血鬼が飛んでこちらをじっと見つめていた。
「あら?あの子はやられたの?」
「あの子?こいつのことか?」
と俺が倒れたメイドを指さすと
「そうよ」
「残念だったな。俺たちで倒したよ。役に立たなかったな」
「あら?そうかしら?あの子は完璧なメイドだもの。ほら。見てみなさい。おかげで、コウモリの死骸一つ落ちていないわ」
「おまえは誰だ?」
俺がそう聞くと
「リリスの姉と言ったらわかるかしら?」
「何っ!?」
(あの吸血鬼リリスの姉だと!?)
「私はカーミラ。今もリリスは元気よ」
俺はその言葉に衝撃を受けた。
(リリスはダッチさんが殺したはずでは…)
「あの子が死にそうだったから私が助けてあげたの。けど、あの子は私に比べたらまだまだよ。あの子ったらいつもヒステリックばっかり起こして…。それを見かねたお父様がマティミエス国に送ったの。そのお父様もさっき殺したんだけど」
と笑いこちらを見てきて
「こんなに月が紅いから本気でいくわよ。今夜は楽しい夜になりそうね」
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