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八十話 第一関門突破です!

 「ブオン!」


大剣そのものは当然だが空を切る。何もないところに振ってもなにも切れない。


「なにをしてるんだ? いま素振りをしたところで強くはなれないぞ? ハハハ。」


だけど狙いは最初からそれじゃない。


「グオオオオ!」


風が逆巻き始めた。俺自身のローブも風を受けて膨らむ。


「カティーヌさん! 危ないから後ろに下がって!」


「何が危ないというんだ?」


「いいから!」


ミヤビとトルクは必死にカティーヌに呼びかけるものの、彼は聞く耳を持たない。


 「ブロオオオオオオオオ!!!!」


あれ? 威力あがってやしないか? こんなに風激しかったっけ? これはやっぱりまずいかも……


 そう思ったところでもう遅い。竜巻は立派に育ってもう俺のもとから離れてしまっていた。


「なんだこの風は!……ガッ!!」


ホグミーは逃げる暇なく正面から竜巻を受けた。


「ぐあああああ!」


敵ながらすごい。巨躯と剛腕を頼りに吹き飛ばされないように持ちこたえている。


 しかし、竜巻の風力はその力をはるかにしのいだ。


「ブロロロロロ!!!!」


風はやがて毒を巻き上げながらホグミーの全身を飲み込んでしまい、彼の巨大な体を後ろに下がらせ始めた。


「よし! いけますよ!」


後ろでミヤビが叫んだ瞬間


「うおっ!」


ついにホグミーの体が宙に浮きあがってしまった。


「くそ! どうなっていやがる! なんの術だこれは。貴様ら、ただの盗賊じゃないのか!」


「本当はただの盗賊志望だったんだけどね。」


「っつ! 耐えられん! おのれ、覚えていろ……!」


「ズドドドドドド!」


地面の土をめくりながら竜巻は彼の体を包んで駆け抜けていってしまった。


「ズガーーーン!」


関所の壁も突き破ってしまった。ちょうど俺たちが向かおうとしていた方向である。




 嵐は去って、静かになった。


「大丈夫ですか、みなさん。」


リリィ王女は俺たちのもとに駆け寄ってきてくれた。


「ああ、大丈夫ですよ。というかそれよりも、大丈夫じゃないのはむしろあなたのフィアンセというか……」


案の定カティーヌは巻き添えを食っていた。


「ロータスさんのせいですからね。」


自分は巻き込まれていないくせに、ミヤビは恨めしそうに言う。


「お前がやれって言ったんだろう?」


「言いましたけど、せめて全員退避してからでよかったじゃないですか!」


 そんなふうにやんや言っていると、カティーヌがむくっと起き上がった。


「大丈夫だ。不思議とダメージはないみたいだ。」


仲間判定だから、ダメージ自体は入らないのだろう。彼はすぐに立ち上がった。


「それにしても奇妙な術を使うのだな、お前ら。盗賊よりも向いている職業があるだろ?」


俺たちもそう思うし、転職したいのはやまやまなのだが。


 カティーヌは膝についたゴミを手でたたいて払った。


「さて、ともかくこれでいったんは助かった。今倒したホグミーがこの関所のボスだ。この関所はもう問題なく抜けられるだろうな。」


「ああよかった。最初の関門で脱落しちゃうんじゃないかと思いましたよ、私。」


「お前がまいた種だけどな。」


「まあでも、ね? ロータスさん。彼女の毒が一応流れを変えてくれたんだし……」


こんな調子であと二つも大丈夫なのだろうか?


 カティーヌはすでにリリィ王女を引き連れて歩いていた。


「お前たち、少し余裕ができたとはいえ、あまり悠長なこともしていられないぞ。国外に出るまでは敵の懐の中にいるわけだからな。」


「ああ、そうでした。ゲームオーバーすることなく外まで行かなくては。」


 関所の、反対側の方へ歩いていくと、警備の兵たちが大混乱を起こしていた。


「おうおう、こりゃ騒がしいが、逃げ出すには好都合だな。」


「さきほどの竜巻がここにまで届いていたようですわね。ロータスさんの剣の威力は計り知れませんね。」


地面は削れてしまい、その延長線上にあった建物には穴がぽっかり空いていた。


 やっぱり前よりも威力が上がっている。もしや、竜巻も攻撃力の増加とともに力が増していくというのか? 


 威力が上がったことはうれしいが、やれやれ、また一段と扱いづらい技になってしまったな。




 混乱してしまっている兵士たちは、ただ慌てるばかりで俺たちには目もくれない。


「こりゃ簡単だな。堂々と歩いても出られるぞ。」


カティーヌは大胆にも、兵士たちが走りまわる真ん中を通っていく。


 やがて、おじさんエルフがいた場所まで戻ってくることができた。


「あら、さきほどの方がおられませんよ?」


「パニックになってどこかへ行ってしまったんだろうさ。」


「まあ、ただ真面目に働いていただけなのに、気の毒なことをしてしまいましたね。」


「お前はちょっと優しすぎるぞ、やっぱり。」


「またそれですか。」


言い合いながらも、二人は仲良く並んで歩いている。


 門は相変わらず閉じていた。だが、もうそれを一生懸命開ける必要もなさそうだ。


「あ! ほらあそこ。またロータスさんの仕業ですよ。」


「だからさ、悪いことしたみたいに言わないでくれよ。」


門の脇の壁には、竜巻が通り抜けた跡の、巨大な穴がポッカリと口を開けていた。



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