四十九話 進路選択です!
選択を迫られている。俺たちがこれから進んでいくルートが二つに増えてしまった。
一つは、今から元いたウエストエリアに戻って当初のルートでゲームを進めていくというもの。今度こそはW3に連れて行ってもらえるのだろう。
もう一つは遭難して流れ着いたここ、N2に留まって、ノースエリアで冒険を進めていくというものだ。
三人でよくよく話し合わなければならない。
「どうしましょうか? かなり悩みどころですよね。」
「そうだね。なんせW3がどんなところかが分からないからね。」
偶然流れ着いたこのN2もなかなかに魅力的な場所だった。
街並みも綺麗だし、地下であることを感じさせないような明るさ。雰囲気がとても良いのだ。
さて、三人で会議だ。
「二人とも、どっちがいいの?」
「僕はどっちでもいいですよ。」
「そういうのが一番困るんだよなー。」
とはいえ、トルクは本当にどちらでもいいという顔をしていた。
「私もどちらでも。」
「お前もかよ。」
「だってそうでしょう! ここも楽しそうですし、W3も変わらず楽しめると思うし。どっちをとっても不正解はないと思いますよ。」
ミヤビの言うことも、もっともなことではあるのだけれど、どっちつかずだといつまで経っても決まらない。
ミヤビが逆に聞いて来た。
「じゃあロータスさんはどっちがいいんですか?」
「ん! あ、ええとね……。」
「ほら! やっぱりどっちでもいいんじゃないですか!」
「どっちでもいいというか、決められないというか。」
「どのみち私たちのことをとやかく言えないじゃないですか!」
そのまま、三人とも押し黙ってしまった。
ギルドのテーブルに三人、向かい合わせで座ったまま、進展がない。
「このまだと埒があきませんよ。」
「でも、いい考えなんて浮かびませんよ。」
困ったな。選ぶっていうのはある意味一番エネルギーを食っているんじゃなかろうか。
うーん、どうしようか。なんで選べないんだ? 本当にどちらでもいいと思ってしまっているのがいけないのか。
もっとよく知ったら何か変わるのかな?
「なあ君たち。」
二人が同時に俺の方を向いた。
「気分転換に、この街を見てまわらないか?」
急に関係ないことを言い出したので、二人ともキョトンとしたが、ミヤビはノリが良かった。
すぐに杖を取って立ち上がった。
「いいですね、行きましょう! ここでうじうじ悩んでいても仕方ないですから。どうせ急ぐこともないんです。どっちにするかなんて後から決めたらいい!」
実を言うと、できるだけ早めに決めて欲しいと運営のメッセージの端に書いてはいたのだが、そもそも向こうが悪いんだし、少しくらい遅れても大丈夫だろう。
少し遅れてトルクも立ち上がった。
「僕も賛成ですよ。楽しそうですし。」
満場一致で、俺たちは街に繰り出した。
運営がなんとかしてくれたようで、街のマップが見えるようになっていた。
「どこから行きますか?」
「そりゃさっきも言ってたじゃないですか! 武器ですよ武器! せっかく新しい街に来たんだから、武器を探さないと。」
ミヤビはマップのなかで武器屋を見つけると、その方角に駆け出していった。
「あ、こら! またあいつは勝手に。」
「いいんじゃないですか、はしゃぐ気持ちも分かりますよ。あれくらい楽しむ方がむしろ正解でしょう。」
「そういう君は随分と達観しているな、トルク。」
「そうでしょうかね。これでもまだまだ若輩のつもりですよ。」
そう言いながらも、トルクは会ってすぐの頼りなさが無くなっていた。短時間で人間が変わるわけもないから、
ミヤビを二人で追いかけていく。三回ほど角を曲がったところで、ちょうど彼女が武器屋にたどり着いて、中に入っていくのが見えた。
俺たちも早足で武器屋に入った。
「おお! 人の多さも過去一だな。」
「大盛況ですね。」
中はプレイヤーでごった返していた。
ミヤビは人波に押し戻されて俺たちの元まで戻ってきた。
「めちゃくちゃ人が多いじゃないですか! 武器屋のおじさん、もはや残像みたいに、かすれてましたよ。」
NPCもブラックなんだな。
ミヤビは果敢にもう一回飛び込んでいくが、体の小ささゆえにまた押し戻されて来てしまった。
「くそ! あれ? でもよく考えてみたら、こんだけ人いるんだし、勝手に持っていけるのでは?」
「やめなさいよ。そんなとこで盗賊を出すんじゃないよ!」
職業が盗賊だからって、武器を武器屋から盗んでくるのはNGである。
仕方ないので、人が減るまで待つことにした。
「待ってる間に他のところに行きましょうよ。」
「うーん、まあ仕方ないですね。」
ミヤビは不本意そうな顔をしながらも、ついて来た。
では次にどこに行くのかという話だが、ほかに何があるのかも分かっていないので、適当に歩き回ろうという話になった。
「思い切って町外れに行ってみませんか?」
「おー! いいこと考えるじゃありませんか、トルクさん!」
二人の意見が一致してるし、俺も特に行きたいところがなかったので、町の外れの方に歩いて行くことにした。




