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二十九話 リゾートに向かいます!

 マップの東にのっていたもう一つの町のマークは、リゾートだったのか。リーチはもうすでに見えなくなっていた。


 掲示板を物色していたミヤビが帰ってきた。


「あまりいいものがありませんでした。」


「そうかい? 」


「はい、全部外を歩き回らなくちゃいけなくて……。」


「そりゃそうだろ! 」


本当にテンション低くなってるな、この娘。


 俺はミヤビに、さっき聞いたリゾートのことを話した。


「あら、もう一方の街はリゾートになってたんですね。」


「そっちに行ってみないかい? 」


「まあ、それならいいですけど。」


リゾートとなると、ちょっと惹かれてしまうようで、顔は不機嫌ながらも、そそくさとギルドの出口に向かっていってしまった。


 この町にも色々と他の建物があったのだけど、大体は俺たちにとっては用無しだった。


 武器屋なんて特に行く必要がなかった。二人して特殊な装備をしている。特別指定二匹の武器だから、当然性能も並ではない。少なくとも、このエリアにある武器では比べものにはならない。


 だから、武器屋には用がない。杖も大剣も、今以上のものなんてあるわけがない。


 防具は普通だから、新調出来るんじゃないかとも思ったが、それも無理だった。ここのエリアでは、全くと言っていいほど普通の装備がうっていないのである。


 面倒くさがるミヤビを引っ張って、防具屋には顔を出したのだが、今装備している「盗賊のローブ」以外に盗賊の装備が一つもなかった。


 というより、強い装備そのものが置かれていない。代わりに、全職種共通の水着が大量に売られている。


 防御力はあまりない。デザイン性を重視している。


「一着買っとかないかい? リゾートで使うかもしれないじゃない? 」


「そんなこと言って、私の水着姿見たいんですか? 下心が透けて見えてますよ? 」


「な、なにを言うんだ。そういうわけじゃないさ。」


 そんなことを言いつつも、結局二人して水着を買った。ゴールドを出し渋る理由はもちろんないし、周りにいるプレイヤーたちの中でも、水着を着ている人は多かったので、買っておいたのだ。


 水着なんて、いつぶりだろうか。ミヤビはどうやら俺よりも数段若いようだから、現実でも水着を持っているかもしれないけど。そういえば、実家がここみたいな南国だしな。


「ミヤビって、今は実家に住んでるの? 」


「あ、いや。もう実家は出てます。福岡の方まで出てきて一人暮らしをしてますよ。」


おっと、意外だな。


「俺も福岡住みだよ。奇遇だね。」


「そうなんですか! パーティー組んでちょっと経つのに、初めて聞きました。」


 現実でも近い場所にいたとは。俺はまだミヤビの本名も、姿も知らないけど。


 一人暮らしとなると、もう一つ気になる。


「実家へは帰ったりするの? 」


「いや、ありませんね。沖縄を出てからは一度も。」


それより、一度も帰らないってのは、どういうことだろう。普通は帰省くらいするだろう。俺だって年に一回は実家に帰るぞ。


 ただ、それ以上は話さなかった。ミヤビの機嫌が少しずつ直りかけているのを、無駄にはしたくなかった。




 防具屋を出ると、いよいよ用はなしということで、俺たちは町を出た。東の方角を向けば、確かに大きな建造物の影がみえる。


 歩いているうちに、このエリアに来て初めて敵と遭遇した。


 敵のモンスターの名前は「人喰いハイビスカス」。歩くハイビスカスの魔物だった。


 なんとも南国らしいモンスターだったが、苦戦するはずもなく、瞬殺した。


 それにしても、このエリアは敵と遭遇する頻度が恐ろしく低い。そういうエリアなのだろうか。


 リゾートにも、すぐに着いた。


「わあああ! すごいですよ! 」


ゲートを抜けると、そこは目も眩むような桃源郷だった。


 リゾートはどこもかしこも陽気な雰囲気。楽しむプレイヤーたちに埋め尽くされていた。


 真ん中にタワーが立ち、その周りを囲うようにプールが広がっている。というか、一階のフロアは屋内も屋外も全てプールになっていた。


 プールサイドには、ドリンクだのフードだの、さらには雑貨だの、いろいろなものが屋台で売られている。


「ほら、やっぱり水着が必要だったじゃん。」


「思ったよりガチガチのリゾートでしたね。」


 俺たちは屋内でトロピカルジュースを買って、外に出た。ゲームの中の飲み物なんて、不可思議極まりないものだけど、試しに一口ストローを吸うと、ちゃんとジュースの味がした。


 まったくどんな技術を使っているのか。味までする。しかし腹は満たされない。やはり他と同じで感覚だけがあるという具合だ。


 屋外の広いプールに出た。子どものプレイヤーがプールの中で遊んでおり、パラソルの下ではサングラスをかけて寝ている人もたくさんいた。


 俺たちは空いているテーブルタイプのパラソルを見つけて、そこに腰掛けた。


 落ち着いてジュースを飲もうという段だったが、俺の後ろを通った二人組の会話が耳に止まった。


「なあ、聞いたか? 」


「何が? 」


「このゲーム、パーティー組まずに一人でも進めるようになったらしいぞ。」






 




 

 

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