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二十八話 南国なのになぜか相棒が不機嫌です!

 相変わらず風は暑かったが、こちらは爽やかな海風だった。


「求めてたのはこういうやつだよ! 」


「そうですか? 私は北国くらいがちょうど良かったですけど。」


「そんなこと言わずに、ほら、見てごらんよ! 南国だよ? 」


「まあそうですね、南国ですけど……。」


どうしてか、ミヤビのテンションはあまり高くはなかった。さっきまで川に落ちていたからだろうか? 


 広い海が見える手前は、草原が一面。奥の方には丘がいくつか見えた。三方向に海が見えているから、空までが広がっているように感じる。


 俺は南国よりではあるが、そうでないという中途半端な場所の生まれなので、南国には当たり前にテンションが上がってしまう。


 二人で草原を歩き出した。あたりにはプレイヤーたちもいる。いや、今までよりも、うんと増えていた。


 ここで、ようやく、三経路に分かれていた初心者たちのルートが一つになるのだという。つまり、俺たちが来たウエストエリアの五番地。


 そして、ウエストエリアの七番地と九番地。この三つのルートを進んできたプレイヤーたちが全員ここへと来るのだから、その分だけプレイヤーの数も増えているのだ。


 それだから、モンスターに遭遇する頻度よりも、他のプレイヤーと会う頻度の方が多かった。みんな、毎度のことながら俺たちのことを変な目で見ていくのだけど、それにはもう慣れている。


 マップを広げた。


「町はどこですか? 」


「二つあるんだけど……。」


「二つ? 」


今回のエリアには、町が二つあった。マップ上には、町のマークが東西二つある。東側に一つと西側にもう一つ。どっちがどうとかはわからないので、


「近い方に行きましょうか? 」


「そうだね。」


 俺たちは西の町の方に向かった。道は砂地で、その上を進んでいくと、しばらくして町に到着した。濡れていた俺たちの体も、日差しのお陰ですぐに乾いた。


 町は例に漏れず賑やかだ。


「おお! やっぱり南国だよ! ミヤビ、見てる? 」


「見てますよ。やっぱり北の人からしたら新鮮なんでしょうかね? 」


ん?


「ミヤビって、もしかして南国の人なの? 」


「ええ、そうですよ。沖縄の出身です。」


ああ。だからあんまりはしゃいでいなかったのか。


 ただ、俺にとっては楽しい雰囲気だ。南国なんて旅行でしか行かないから、今まさに俺は旅行気分なのだ。


「ギルドはどこでしょうか? 」


「ええ! もうギルドに行っちゃうの? 」


俺の旅情虚しく、ミヤビに連れられてギルドに向かった。


 ギルドもギルドで南国仕様。全体的にトロピカルな感じに仕上がっていた。


 そこにいるプレイヤーたちも心ばかし浮ついている。このエリア限定の装備なのだろうか。南国風の格好をしている人たちもチラホラといる。


 ミヤビは近くのテーブルに座った。


「何やりましょうか? クエスト? 」


「え、いきなり? 」


「だって私次行きたいですもん。私だけ実家に帰省したみたいですよ。非日常どころか、ゴリゴリの日常です。」


 ゲームの中なのに、住んでた場所と同じようなところが出てきたら、つまらなくなってしまうというのも、仕方のないことなのか。


 でも、いきなりクエストってのはなあ。せっかく新しいエリアに来てホッとしているのに。


 ミヤビはすでにクエストの掲示板の方まで行ってしまっている。


「それにしても、いくら故郷にそっくりで新鮮じゃないからって、テンション低すぎやしないか? 」


彼女は紙をめくっては見て、クエストを吟味している。


 俺はボーッとして、ミヤビの様子を見ていた。クエストならクエストで、どんなやつを選んでくるのだろう。


 テーブルで頬杖をついていると、見知らぬプレイヤーから話しかけられた。


「君、こんな陽気なエリアに来たっていうのに、どうしてそんなにつまらなそうに座っているんだい? 」


「ああ、こんにちは。あなたは? 」


「おおすまない。俺の名前はリーチ。『アクシズ』ってパーティーのリーダーをやってる。君は? 」


アクシズ! この前のイベントで、俺たちを抑えて一位になっていたパーティーだ。彼らもこっちに来ていたのか。


 というか、よもやこんなところで会うことになろうとは。リーチの装備は標準的な剣使いだった。職業はおそらく戦士。前の砂漠エリアでの最強装備を揃えていた。


 レベルも気になるが、それは知ることができない。


「俺はロータスです。『バグ・バンデット』っていうパーティーにいます。」


「おお! この前のイベントで確か二位につけてたよな? 」


おや、認識されてるのか。


「そうです。俺も一位だった『アクシズ』のことが気になってたんだよ。」


「おお、気にしてもらえるのはありがたいな。実を言うと、俺たちも君らのことが気になってたんだ。」


「俺たちを? どうしてです? 」


「そりゃあ君たちは有名だよ。盗賊なのに、大剣やら杖やらを装備している二人組がいるって。」


ああ、やっぱりそういう話か。


 リーチは時計を見た。


「おっと、すまない。もう行かなければ。また今度話そう。」


「いえいえ、話せてよかった。」


 リーチは去り際、俺の方へ振り返ると、興味深いことを話した。


「そういえば君。そんなにつまらないんだったら、東のリゾートエリアに行ってみたらどうだい? きっと楽しいぞ。」


リゾート……マジか。




 








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