014 蝕む冷気
うーむ、もしかしてラミアというかオリオはすごく強いのでは?
魔眼で全員石化とかできるのかもしれないぞ!
俺が判断できずに無言のままだったことで、オリオと人間4人の戦いが始まる。
俺がオリオの後ろに控えていることで、オリオが取り囲まれることはない。
再確認だが、人間は4人。
前衛の一人はロングソード、一人は短剣。
後衛の一人は杖、一人は弓。
バランスの良いパーティだ。いや、短剣キャラは斧とかのほうがいいかな。
対するオリオは武器を持っていない。
魔術系かそれとも格闘系か。
じりじりと近寄ってくる前衛二人に対して、オリオはしっぽをまるでバネのように使って跳ね、一気に距離を詰める。
いったー! 格闘系だ!
人間離れした動きで間合いを詰めたオリオは自身の鋭い爪でロングソードの男を狙う。
風を切るような高い音色が響き、爪が男に振り下ろされるが、男もその動きを予想していたのか攻撃が到達する前に剣で爪を受け止めた。
「おい、何してるんだ、急げ!」
受け止めたと言っても、力比べはどうやらオリオに分があるようだ。
じわじわと男の体勢は押し込まれていく。
大の男の筋力を上回るラミアの力ってすごいんだな……。
力を一瞬だけでも爆発させてオリオの爪を弾き返そうにも、すでに体勢が悪く、このままいけばすぐにでも勝負がつくだろう。
まあそれは1対1だった場合なのだが。
鳥の鳴き声のような音が聞こえ、弓使いが放った矢がオリオを狙うが、すんでのところでオリオは後方に跳躍し、凶弾を回避する。
あの密着状態から矢で狙ってくるなんて、相当技量に自信がないと出来ないことだ。もしくはロングソードの男ごとやるつもりだったのか。
「……女神の力は全ての物を氷結せしむ。氷の風」
後方でこっそり詠唱していた魔術師風の男の手から氷の粒というか空気中の水蒸気が凍ってるのか、何らかの冷気系魔法が発動し、矢をかわして着地した直後のオリオを襲った。
「よっしゃ、待たせやがって。これであのラミアは終わりだ。やつらは冷気に弱いのは常識だ。動きを鈍らせたところを確実に叩くぞ!」
おう、と人間達の息の合った返事が聞こえた。
これはまずいのじゃなかろうか。
確かに蛇は変温動物で自分では熱を作り出せずに周囲の温度によって活動を制限される。
じゃあラミアはどうなのか。
上半身は人間なので完全に変温というわけでもないのだろうが、やはり下半身が蛇なので冷気は弱点なのだろうか。
人間達もそう言っていることから間違いないだろう。
魔術師風の男が両手で氷魔法を発動しながらオリオとの距離を詰めていく。
放出系の魔法なので距離があると効果が薄れるためだろうが……それを指をくわえてみているわけにはいかないぞ。
「(オリオ、今助けるぞ)――オリオよ、余の力を見せてやろう」
とはいったものの、俺の攻撃手段は同じく格闘。
このパーティなら遠距離攻撃が欲しい所なんだが……。
「だ、大丈夫です。こ、これしきの冷気……。主様の、ご心配に、は、および……ません」
ってー、息も絶え絶えじゃないか。
魔法魔法、炎魔法。
俺は思い出したかのように魔導書ラプラスをめくってみるが……なんというか全く読めないし、ほとんど白紙だしどういう事なんだ!
姉のピンチに戦意喪失していたシガが立ち向かおうとするが、すかさず短剣の男が行く手を阻む。
小刻みにパンチの素振りをするシガだが、役には立たないだろう。
オリオを取り囲む冷気魔法が渦を巻くように勢いを増していく。
このままでは動きを鈍らせるとかいう以前に凍り付いてしまう。
「うぐっ、は、はあ……」
今にも崩れ落ちそうなオリオ。弱々しい吐息が聞こえてくるが、だが目は死んでいない。
「オリオ!」
パンチでもキックでも体当たりでも、あの魔法を止めなくてはいけない。
せめて注意だけでも引くことができればと、俺は無防備に魔術師風の男に突っ込んでいく。
ドスッドスッと俺の体に矢が二本突き刺さった。
くっそ、弓男か!
痛みは無い、痛みは無いんだが、高速の飛来物の衝撃は結構なもので、突進する勢いを殺される。
それに痛みは無いとはいえ恐怖を感じないわけではない。目なんかに刺さった日には……。
俺は弓男に注意を向ける。
このままじゃオリオが……。
「な、なんだぁ? こいつ自決する気か?」
男の声に俺は再びオリオに視線を向けた。
俺も目を疑った。
オリオは自分の爪を自らの体に突き刺しているのだ。
傷口からの出血が凍り付いていく。
相当な冷気がオリオを襲っている証拠だ。
注意を逸らした俺に何本かの矢が撃ち込まれる。
くっそ、3本か。
俺は胸と腹に刺さった矢を掴んで抜き去る。
なんでそんなに連射出来るんだ。
見た感じ普通の長弓だろ。連射スキルみたいなものがあるのか?
「ぎやぁぁぁぁぁ!」
耳をつんざくような男の悲鳴。
これは魔術師風の男だ!
皆の視線が魔術師風の男に集まった。
そこには、胸から腹にかけて付いた数筋の傷から血を噴き上げている男の姿があった。




