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010 天地無用

昨日累計PV数が1000PVを超えました!

これからもよろしくお願いします。


「がぐっ、な、き、貴様っ!」


「な、何をしたんだ……。俺の拘束魔法を打ち破って、動きが見えなかった……、あいつの目の前に急に現れて……」


 お前らに生きる価値なんか無い!

 爆ぜて死ね!


 そう強く思った瞬間、スッと頭がクリアになり、それまで脳がカットしていた情景が俺の中に入ってくる。


 俺は右手で髭の男の首を掴み上げており、苦悶の表情を浮かべた男は必至で己の首を絞めつける俺の手から逃れようとしていたが……そこで俺の右拳が激しい音を立てて爆発したのだ。


 その衝撃が周りの木々の葉を、枝を揺らす。


 音の中心に視線を移すと、俺の右拳は手首から先が失われていた。

 それと同時に、首から上を失った人間の体が重力に引かれて地面に落下する様子も視界の中に入っていた。


 ドサリと音を立てたその首なし死体は、先ほどまで俺の手から逃れようと足を宙でばたつかせていたのと同様に、地面に横たわったまま足をバタバタとしていたが、やがてゼンマイが切れたかのようにピタリと動かなくなった。


 次はあいつだ。

 俺は残った人間に視線をやる。

 仲間がやられて怯えているのか、声にならない声を上げながら、まるで化け物でも見るかのような目で俺のほうを見ている。


 どっちが化け物だというんだ?

 言うまでもなくお前らだろ?

 今更何を言ってるんだ?


 人間は表では平和だ慈善だと言いながら、心の中には傲慢や嫉妬、怒りや色欲などが渦巻いている。それが人間というものだからだ。

 自己の欲望のためなら素知らぬ顔で他を踏みにじる。

 実に醜く、浅ましい!


 だけど俺も人間で、お前たちと何ら変わりはない。

 同じだからこそ解るんだろ?

 俺が次に何をするかなんて手に取る様に解るんだろ?

 そうだよな、お前のその怯えた顔と逃げる姿がその答えだ。


 悲鳴を上げながら逃げ出す男の背中を見ながら、深く底に沈むかのように心が冷えていくのを感じた。


 男に追いつく事は、しごく簡単だった。


 手間取ることもなく余裕で追いついた俺は、これ以上逃げないようにと男の頭を掴み上げようとしたのだが、先ほど失った右手が空を切る。


 俺の存在に気付いて振り返り、目をひん剥いて俺を見上げるローブの男。


「ひいいっ、た、助けてくれ。あっ、あっ、もう少しだったのに、あそこまで」


 俺は何かを口走っている男の頭を残った左手で掴み上げた。

 男の天地が逆さまとなる。

 大丈夫だ。頭に血が上るまでは生きてはいないのだから。


「こ、殺すなら綺麗にころ――」


 男のセリフの途中で俺の左手が爆ぜた。

 先ほどより爆発が小さく、男の頭の半分ほどを一緒に吹き飛ばしただけであった。


 …………。


 クリアになった視界がさらに多くの情報を俺の中に引き込んだ。

 つまりは、俺は怒りに我を忘れた状態から元に戻ったのだ。


 って、手がー手がー!


 俺は無くなった左右の手の指を動かそうとしてみるが、もちろん無くなったものは動くわけもなく、脳からの指令はどこかで消失しているようだ。


 はじけ飛んだ腕の先……爆発したとはいえ切断されたようなその断面は、中心に骨があってその周りに布が巻き付いており、そして布の上に肉がある。

 骨からミイラ男になってマッチョになった経緯が分かるというものだが、神経やら筋やらがピロピロと出ていて、なんか気持ち悪い。


 そんな見ただけで卒倒しそうな様相だが、見た目に反して一切痛みは無い。

 自分の体の一部がなくなっても痛みが無いというのはそれはそれで問題だが、深くは考えないようにしよう。


「オリ姉!」


 シガの声に、俺のどうでもいい考察はそこで終了した。 


「オリ姉、しっかりするんダゾ。傷は浅いんダゾ!」


 シガ達のもとに駆け付ける頃には俺の左右の拳は再生を終えていた。


「今助けてあげるんダゾ」


 おいおい、シガさんいったい何をするつもりなんだ?

 もしかしてもしかするんですかねぇ?


 シガはオリ姉の胸に刺さったままの剣を躊躇なく抜き去った。


 ばっか、バカバカ、抜いちゃだめだろ、出血が酷くなるだろ。

 ほら傷口からの出血を見てみろ!


「あわわわわ。血が止まらないんダゾ!」


 慌てて傷口を手で押さえるシガ。


「ぷ、プローヴェル様!」


 お、俺に振るんじゃない。俺は医療の心得もないただの高校生だぞ。

 などと言っている場合ではない。

 とりあえずは止血しないと。

 動脈の近くを縛ればいいんだっけ、って、心臓直下の傷だから縛るとか無理無理。

 あれあれ、ラミアの心臓って人間と同じ位置なの? どうなの?


 慌てふためく俺たちをよそに、地面には噴き出た血でできた血だまりが少しずつ大きくなっていく。


 そ、そうだ、布だ。確か俺が骨だけになったときにこの魔導書から布みたいなのが出たはずだ。そいつを包帯代わりに巻き付ければ……。

 いや待てよ……布じゃなくても、ラプラスを使うのなら魂階位相変位ソウルコンバージョンを使えばシガみたいに助けられるんじゃないか?


「…………」


 だけど俺の期待にラプラスは答えてくれない。

 なんだ、どうしてだ、何がダメなんだよ。さっきは出来ただろ?

 魂か? 俺の魂が足りないのか?


「オリ姉、オリ姉、ダメだ、しんじゃダメなんダゾ!」


 ……俺は何をやってるんだ。


 必死な姿のシガを見て、俺はふと我に返る。


 俺はシガに約束した。必ずオリ姉を助けると約束したんだ。

 狼狽えていては出来るはずのものも出来ない。


 そうだ、心を強く持つんだ。

 高校生? それがどうした。

 今のお前は魔王なんだろ?

 そんなお前が弱気でどうする。

 慌てふためいてどうする。


 お前は魔王、魔王プローヴェル。

 シガの期待に、上に立つ者として応えて見せろ!


魂階位相変位ソウルコンバージョンを利用する条件が整いました」


 そうだ、俺はやれる。俺はやれる子。

 シガも、そしてオリ姉も救って見せる!


次回、オリ姉回です。

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