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【討伐者】  作者: 夢暮 求
【-才能の花と夢見た男-】
223/323

【-ならばそれは使命か?-】

///一年前///


「うーん、スカートをもう少し短くしたいなぁ」

「こ、これ以上短くとか本気で言ってんですか!? 歩いていたら、普通に見えちゃうじゃないですか!」

「大丈夫、二次元には絶対領域って言葉があって、どれだけスカートが短くても下着が見えないようになっているんだ」

「三次元なんですけど……」


「あぁ……あぁ、うん。君はなんて失礼なんだ。二次元の絶対領域について熱く語ろうとしていたのに、三次元のスカートについて引き戻すなんて」


「二次元とか三次元とかわけ分かんないんですけど!」

 スカートの裾を押さえつつ、榎木 楓が羞恥心に顔を染め上げながら叫ぶ。

「良いね、その顔。とっても良い。僕の最終目標はねぇ、“人形もどき”。君がそういう顔をしながら服を脱いで行って、下着を脱ぐときに『恥ずかしい』と呟きつつ、柔肌を露わにしてくれることなんだ」

「気……気持ち悪い」

 全力でドン引きする榎木 楓を余所に、ケッパーは歩き出す。

「まぁちょっとくらいの言葉のセクハラは許してよ。僕はこういう質なんだ。言葉でしか異性を辱められない、とっても残念な男。それが僕なんだよ」

「だからってセクハラを許す人がこの世に存在すると思えないんですけど! というか、この丈の短いスカートを履かせている時点で色々とセクハラなんですけど!」


「ヒィッヒィッヒィッ、こんなもんじゃないよ。言っただろ、“人形もどき”には僕の前で全裸になってもらうっていう目標があるんだよ」


「だからそんな目標は立てないでくださいよ!! ってか、本当の本当に私を強くしてくれるんでしょうね?!」

「うん、それは約束する」

 ケッパーは立ち止まり、振り返る。


「“人形もどき”を育むことは、ちょっと旧友との約束で、ね。喜んでもらいたいよ。僕のお眼鏡に叶う美少女で、そして未来ある才能持ちは、多分、君しか居ないんだからさぁ。まずは『雷』の前に、『金』が先かな」


「え?」

「気付いていないと思っていたのかい? 僕はねぇ、気付いちゃうんだよ、そういうことには。その力の方が引き伸ばしやすい。そして、扱いやすい。持てる力の一つを高めつつ、もう一つを御す方法を身に付ける。それが最短にして、最高の強さを得る行程だと、思っているよぉ」

「『金』は、その、『雷』以上に使い方が分からないと、言いますか」


「ああ、安心して。『雷』みたいに力に怯えなくても、五行に属する『金』を僕はまだ、怖れを抱きにくいと思っているから。“人形もどき”には、これを使ってもらう」

 言って、ケッパーは自身の懐から全てが鉄で出来た短剣を手渡す。

「お、重い、んですけど!」

「そりゃ鉄の純度100%だからね」

「こんなの、一体どこで手に入れられるんですか……?」

 両手で持つのも大変そうな榎木 楓が訊ねる。


「これは旧友に貰ったものだよ。そいつは『金使い』の頂点に君臨する化け物みたいな奴でさ。なのに、こんな僕にちょっとばかり気を遣ってくれる良い奴だったんだ。いや、良い奴だったかなぁ、悪い奴だった気がする。うん、性格は僕以上に悪くて、そりゃもう醜いったらありゃしない人間性だったなぁ。それでも、これだけは頼んだら用意してくれた。勿論、変質の力を用いてね」

 ケッパーは気怠げに答えつつ、空を見る。


「一度、変質の力が及んだものを変質させるのは、難しいって聞いたことがあるんですけど。出来ないことはないですけど、そう簡単に出来るものでもなくて、物体に人間が干渉できるのは一度切り、とまで言われているんだとか」

「そうなんだよ、“人形もどき”。でも、難しいだけで出来ないわけじゃない。僕は、出来るからね。まったく、使い手としての知識を査定所にも行かずに、どこでどう拾ったんだか」

「それは……力尽くで」

「ヒィッヒィッヒィッ、“人形もどき”は今まで討伐者ですら無かったんだっけか」

「そういえば査定所……でしたっけ? 連れて行かないって言ったのに、嘘ついて連れて行きましたよね? でも、人を殺したのに、こっぴどく叱られるだけで、それ以外に、特になにもされませんでした」

「討伐者として登録させなきゃならなかったから仕方が無い。こっぴどく叱られただけで済んだのは、“人形もどき”が“異端者”であることと、あとは僕の進言のおかげかなぁ」

「なにか、言ってくださったんですか?」


「うん。『あの子は僕が開発して、専用の奴隷にするから、手を出したりしたら怒っちゃうよぉ』って。さすがの査定所の『水使い』さんもドン引きしてたなぁ、あれはぁ。ヒィッヒィッヒィッ、あの顔だけで、もうしばらくは妄想でも楽しめるってもんだよ。あまりにも危険視されたせいで、肝心の『上層部』の情報は貰えず仕舞いだったけど」


「そんな変なことを言っていたんですかぁっ!?」


 引き笑いを続けて歩き出したケッパーを、重い鉄の短剣を両手で握り締めながら楓は追い掛けた。

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