『日程なんて少しぐらい伸びたってかまわない』
暗雲が空を包んでいた。
【ただいまあ.......】ゆっくりとドアを開けた。
母親の有無を言わさぬような声が、リビングから聞こえている。
母親は、帰宅した私に気づかずにそのまま弟達の説教を続けた。
階段を登り、扉を開き、部屋のタンスから灰色パジャマや下着、タオルを取り出して風呂場に向かった。
叱られている弟達を横目に洗面所に入った。
汗などでビショビショになったシャツやらなんやらを洗濯機に放り投げ、風呂場に入った。
最初に、全身の汗を流した。シャワーの温度は、温かみを失っていた肌に命の温もりを取り戻させた。
設定温度を1、2度上げてまた体にシャワーをかけた。シャンプーやリンス、ボディーソープで全身を洗った。風呂場から上がってゴワゴワになったタオルで髪や体のいらない水分を拭き取った。髪の手入れなどのルーティーンを終わらせ2階に行った。
戸を開けるとやはり、熱い空気が部屋から溢れ出てきた。涼し気な風を期待し窓を開けたが、そんな奇跡は起こらなかった。
だが無策で挑む自分じゃない。風呂から上がった時、まだ怒られていた弟達に助け舟を出すとともに、母と交渉をして、二台目の扇風機を手に入れることが出来た。
そう!この部屋に二台目の扇風機を導入することに成功したのだ。さっそく扇風機を二台とも強さを中にして回した。その結果はすぐ出て、強めの風圧で熱風をごまかすことが出来た。寒さをも感じるほどの風の勢いだった。
机の上に出しておいた課題やカバンの中にある課題はどちらも提出期限が明日だった。
少し頭を捻らないと終わらない難易度の課題だったが大丈夫だと思い、明日の朝にすることにした。
ゴッホやナポレオン、織田信長はもっと課題が終わらないことより、もっと大きな壁にぶつかってそれを乗り越えたのだ。それなら、これぐらいのこと乗り越えられると思えた。
ベッドに寝そべり、天井を眺めた。この行為はすっかり日常の一部となり、ベッドに乗ると必ずしていた。
今日の夕飯はなんだろうと思いつつ、疲れたまぶたが自然と降りた。
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彼女の髪は、二台の扇風機が出す風と戯れ。
彼女の唇からは、夏に流れるような川みたくよだれが垂れようとしていた。
そして彼女の瞼を超えた眼の奥には、線香花火のように光る潤いがあった。
二台の扇風機の風が、壁にかかった一日一日がバッテンで埋め尽くされたカレンダーを落とした。




