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リヴァ・アルカ ―特殊部隊は、一人のアンカーを檻に乞う―  作者: Ilir Noct
第九章「閉じた環礁 ―The Closed Atoll」

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さよならモルディブ




 最終日の朝は、よく晴れていた。


 コテージのデッキに、長いテーブルが出ていた。フルーツ、パン、卵料理、淹れたてのコーヒー。ラグーンの色が、昨日より少しだけ濃く見えた。


 リヴァが先に座っていた。白い半袖のリネンシャツに、生成りのワイドパンツ。髪を緩く後ろで束ねていた。


 レッドが向かいに腰を下ろした。皿にパンを取った。


「最後の朝だな」レッドが言った。


「うん」


「あっという間だった」


 ユキナガがあくびをしながら席についた。髪が片側だけ跳ねていた。


「九時半に水上機です」アルノが端末を畳んだ。「桟橋集合は九時十五分」


「もう?」フィンが言った。


「はい」


「さびしくなるね」フィンがパンをちぎった。「テキサス組とは、しばらく会えないんでしょ」


 リヴァがカップを置いた。


「レッド、テキサス遠い」


「遠いな」


「会えない」


「ああ」レッドが少し笑った。「俺らがいなくて寂しいか」


「レッドが寂しい」リヴァが言った。


「お、嬉しいこと言うな。持って帰っちゃうぞ」


 リヴァがイーサンを見た。


 イーサンは、テーブルの端にいた。食べる手は止まっていなかった。会話には、入っていなかった。


 カイがリヴァの隣で、コーヒーを飲んでいた。レッドを鋭い目で見ていた。


「リヴァ」


 カイがリヴァにコーヒーを入れた。


 ヴィクトルが最後に来た。


「飛行機の準備はできてる」ヴィクトルが言った。「腹いっぱい食っとけ。機内食は知れてる」


「はーい」ユキナガが言った。


「菓子は積んだ。お前らが好きそうな」


「ヴィクトル優しい」フィンが言った。


「リヴァが寝るのに必要だからだ」




 マレの空港は、人が多かった。


 海の匂いが、空調の匂いに変わっていた。


 ここで、二手に分かれることになっていた。イーサンとレッドは、ドバイ経由でテキサスに戻る。二人の家は、テキサスにあった。残りは、ヴィクトルのチャーター機で日本へ直行する。


 搭乗ゲートの手前で、足が止まった。


「ここまでだな」レッドが荷物を肩にかけ直した。「アルノ、リヴァを頼む」


「はい」アルノが言った。


「こっからまた二十四時間かーきちい」


 レッドがリヴァの前に立った。


「寝ろよ。ちゃんと」


「寝る」


「飛行機で寝ろ。ヴィクトルが菓子積んでくれてんだ」


「食べてから寝る」


「それでいい」レッドが笑った。「達者でな」


 レッドが一歩下がった。


 イーサンが、前に出た。


「リヴァ」


「うん」


「疲れたら来い」


「……」


 イーサンはリヴァの頭に手を乗せた。


「またな」イーサンが言った。


「うん」リヴァが言った。


 イーサンがサングラスをかけた。背を向けた。


 レッドがその隣に並んだ。


 二人が、ゲートの方へ歩き出した。


 レッドが一度振り返って、手を上げた。イーサンは、振り返らなかった。


 ゲートの人混みに、二人の背中が紛れた。レッドの白いシャツが、最後まで見えていた。


「リヴァ」カイが言った。


 リヴァのキャビンバッグを、もう肩にかけていた。


「行くぞ」


「うん」

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