第四十話 長すぎた一日の後
「やっほー、ジェード。元気?」
「……リリィ、何で貴女がここに……」
「協会の新都心支部なんだから、私だって来るよ」
新都心南部地区。チーム生徒会のナワバリだが、今日は不幸にも生徒会の活動が休止中の所に黒奴が出現してしまった地区。
その上代行のせいでチーム同士の喧嘩まで発生し、壊滅的な被害を被った地区でもある。
そしてその後処理やら反省文やらで、黒奴殲滅委員会は夜まで書類に追われる羽目になった。
チームのリーダーであるジェードはドールたち以上に後始末に時間がかかり、既に外は真っ暗だった。
そうしてようやく帰れると思った矢先に現れたのが、リリィだ。
「……」
「……」
「……聞きたいことがあるんじゃないのかな?」
「……聞いていいなら、聞かせてもらうよ」
「ぜひとも聞いて!」
ジェードはリリィとも面識があった。
友達だとか戦友だとかと呼べるような関係性でないことはあからさまだが、敵対しているというほどではない。
聞きたいことならある。いくらでもある。しかし、はぐらかされるか隠し通されるものだとばかり考えていた。というか実際、本当に聞きたいことは聞いても答えないだろう。
「アンブレラの行動は独断? それとも、百合園としての決定?」
「私の指示」
「あっそ」
「ちょっ、反応薄くない?」
「どうでもいいから」
アンブレラ自身がリリィの指示だと言っていたのだから、その質問は確認でしかない。
だが本人の口から事実だと言われたジェードは、それなりにショックを受けていた。
百合園の方針が一体でも多い黒奴の討伐に重きを置いているのに対し、ワルプルギスは互いに協力し合ってできる限りのことをしよう、という方針だ。
その方針の違いはただ積極的に黒奴を倒すか倒さないかを超え、今では真面目な魔法少女か不良魔法少女かの違いにまで発展している。
そうなってから、リリィはワルプルギスを避け始めた。
だというのに、今日はあんな指示をアンブレラに出した。
「……」
「……」
「……質問は以上かな?」
「……」
気味が悪い。ジェードの正直な感想は、その一言に尽きた。
何も企んでいないわけがない。だが思惑はさっぱり分からない。
何らかの目的に巻き込まれただけなのか、それとも自分たちがその目的の一部だったのか。それすらも分からず、可能なら近づくことだって避けたい。
何も答えないジェードを見て、リリィは話を切り上げようとする。
「それじゃ、またどこかで会おうね! 多分来年も生きてるでしょ?」
専用魔法も対価も戦闘スタイルも、ジェードの全てはジェード自身が生き延びることに特化していた。
来年も、どうせ今年と同じように生きているだろう。ジェード自身だってそう確信していた。
たとえドールたちが引退するようなことになってしまったとしても、自分だけは生き延びてしまうのだろうと、確信していた。
「待って」
だが自分で自覚していることであっても、他人に指摘されるのは嫌なものだ。
ジェードは立ち去ろうとしたリリィの腕を掴み、睨みながら問いかける。
「最後に質問。……一体いつから、百合園は貴女一人のチームになったの?」
「……」
協会の中では基本的に変身した状態で活動する。それはつまり、お互いいつでも戦える状態にあるということ。
ジェードはここで消されたとしても構わなかった。あの場に現れたのがアンブレラの魔力であったことは、アイアンなら気づくはずだ。
消されたとしたら、アイアンはドールたちの身に危険が迫っていることにも気づくはず。
無駄に生きた自分の命の意味が、ドールたちのためにあったというのなら、それで良かった。
「久々……というより初めてかも。ジェードのそんな顔見たの」
しかしリリィが質問に答えることはなく、驚いたような顔を見せてすぐにジェードの手を振り解いてそのまま去ってしまった。
「……質問があれば聞け、って言っただけで、答えるとは言ってなかったっけ……」
ジェードは荷物を纏め、同じように立ち去ろうとするが、振り向いた先にはつい先ほど帰ったと思ったリリィが。
「うわっ、まだいたの」
「驚かせようと思って!」
「帰る」
「待って待って! ジェードのチームの新人ちゃんたちにプレゼントがあるんだ」
「……プレゼント?」
まだ何かあるのかと思えば、本当に何かあった。
リリィが手渡してきたのは、至って普通の紙切れ。予約された日付と四泊五日と書いてあるだけの、何の変哲もない券だった。
「これ、ライフセーバーズの担当地区にある、旅館の宿泊券!」
「……交渉はこっちでやれと?」
「そりゃあ、百合園が口を挟む問題じゃないから」
「既に思いっきり口挟んでるよ」
「ありゃま」
ライフセーバーズ。新都心から南に一時間半ほど進んだところにある海岸一帯をナワバリとする、百合園派のチームだ。
わざわざそんな場所の旅館の宿泊券を渡してきたということが、単にそこで休暇を楽しめと言っているわけではないのは明白だ。
他所のチームのナワバリに行くなら、例え休暇でも一報入れるのがマナーだし、そうでないならなおさら話し合いが必要だ。
ジェードは余計な仕事が増えたことを恨みながら、券に書かれた人数について質問する。
「……五人って、うちのチームは六人だし、新人は四人だけなんだけど」
「そこはまあ、合宿に先輩が行く必要はないとか適当に理由付けして、あとは事情を知るお友達でも誘うように言えばいいよ」
「……あっそ」
「淡泊!」
合宿。リリィが何をさせたいのかはさっぱり分からない。
新人四人の専用魔法が見たいのか、それとも最近リーダーだった魔法少女が引退したライフセーバーズの力を見ておきたいのか。
あるいは、ドールたちが誘うであろう結芽が目的なのか。
ジェードはあれこれ考えてから、チケットを受け取ってリリィに背を向ける。
「リリィ、貴女が何を企もうが知ったことじゃないけど、あの子たちの不利益になるような事態になれば、許さないから」
去り際にそう告げて、今度こそジェードは帰路につく。
リリィ相手では、お前ごときに何ができると言われればそれまでの実力だったが、ジェードにも切札の一つくらいある。
リリィは意味ありげに微笑んで、去り行く背中に告げた。
「安心しなよ、私だってそれは望んでないから」
エレベーターに乗ったジェードは、ようやくリリィから離れられた安心感で思わずへたり込んでしまう。
毎日のように彼女が積み上げる武勇伝は、他の魔法少女にとっては恐怖以外の何物でもないのだ。
「……はぁ」
アメシストの言ったように、既にヤバいことに巻き込まれていることに、ジェードは思わずため息をついた。
「……おかえり、お姉ちゃん」
「あー、いたんだブックマーク」
「……家では詩織って呼んでって、いつも言ってるでしょ。母さんたちに聞かれたらどうするの」
「そーだっけー?」
同じころ、「栞」の魔法少女ブックマークこと本山 詩織は、家に帰って来た姉を出迎えていた。
「なぁに? じっと見つめてないで、要件があるなら言ってほしいなー」
「……お姉ちゃん、今日は朝からどこに行ってたの?」
「それ、詩織に言わなきゃダメなことー? 新都心に行ってただけだけどー」
素通りして部屋へ向かおうとする姉の前に立ちふさがり、詩織は質問する。
答える義務がないとばかりに姉の方は適当に答えて去ろうとするが、詩織はどかない。
「新都心の……どの辺り? 南の本屋さん?」
「そこまで言う必要ないよねー。ただの姉妹がさー、逐一自分の行動を報告し合ったりするかなー」
「私もそのあたりにいて、お姉ちゃんっぽい人を見かけたから……」
「あーそー」
気の抜けた返事。真面目に答えるつもりは欠片もないのだろう。
それでも詩織は聞かなければならないと思っていた。その姉を見た場所が場所だったから。
「でも、黒奴を倒した後の街の中だった」
「へー」
「私は魔法少女としてそこにいた。今日は代行が出張ってて、色々あって他のチームとも戦闘になった」
「へー」
「そんなところでお姉ちゃんを見たから、何かあったんじゃないかって――」
言い切らないうちに、姉によって話は遮られえる。
「ブックマーク」
「っ……」
姉は先ほど言われたことを忘れて魔法少女名で読んだのではない。
ちゃんと反省を活かして認識阻害を発動させ、完全に誰にも会話を聞かれない状況を作ったうえで、その名で呼んだのだ。
つまり、ここからはただの妹へ向けた言葉ではなく、魔法少女としての妹に向けた言葉であるということだ。
「あまり人の個人的な用事にとやかく言うものじゃないよー。関わらない方がいいものだって、世の中にはあるんだからー」
「お姉ちゃんがその関わるべきではないものに関わっているなら、私だって……!」
姉に何を言われても一歩も引かない詩織。
だが、瞬きをするような一瞬の間に、首元に姉の専用武器である本を突きつけられていた。
「お前が何の役に立つの?」
「ッ……!」
雑魚はすっこんでいろ。そう言わんばかりにというか、行動でそう示して姉は詩織の横を通り過ぎていった。
自分が無力なのは事実だった。だがそれはそれとして、詩織の感情は荒れ狂っていた。
「泡沫……結芽……!」
廃墟の街で当然の権利のように姉の隣を歩いていた、結芽への怒りが渦巻いていた。
「あ、結芽さんから連絡来てる……えーっと、『無事に着きました』っと」
部屋に戻った姉――本山 美緒は、別れ際に交換していた連絡先から安否を確認する連絡が来ていたのを見て、返事をした。
つい先ほどまで妹に向けていたものとは、まるで違う表情で。
また同じころ、協会の新都心支部にあるチーム百合園の部屋に、三人の魔法少女が集まっていた。
「……」
「……」
「……そんなに睨まれても困るぞ、ダイヤモンド」
机を挟んだ向かい合わせに座っているのは、アメシストとダイヤモンド。
リリィが最も強い魔法少女と呼ばれるように、百合園の魔法少女はそれぞれ異名を持っている。
ダイヤモンドであれば、最も恐ろしい魔法少女ということで、最恐と呼ばれている。
「……分かってる。この国に……というかこの世界に、あいつの頼みを断れるような魔法少女がいるとは思えない」
「なら何故そうもあからさまな敵意を向ける。落ち着いてココアも飲めやしないだろうが」
「貴女が行ったことは仕方なったのかもしれない。でも、それと私の感情は別」
「……怒っているか?」
「……怒ってる」
そんなダイヤモンドがキレていれば、いくら長年正攻法とは言えない方法で黒奴と対峙し、それでも生き延びてきたアメシストであっても、怯えずにはいられない。
次の瞬きの間に真っ二つにされているかもしれないと思うと、目を閉じることすらできなかった。
「アンブレラ、貴女もどうして協力したの。他の誰にも気づかれなかったのは良かったけど、ジェードは貴女のせいで確実に疑念を抱いた」
「……申し訳なく思ってるわ。でもごめんなさい……私だって、彼女の前ではその他大勢のうちの一人だもの」
「知ってる」
「……怒ってるかしら?」
「怒ってる」
矛先がアンブレラに代わると、ようやく落ち着いてココアを啜れた。
もっとも、向こうしばらくの夜はチームのメンバーと一緒に帰ろうと思っていたが。
ダイヤモンドが二年間アメリカで無双していた話は、少し前に公式に発表されたのだ。夜道には気をつけなければならない。
「申し訳ございません……」
「貴女はうまくやってる。そう気落ちすることはない」
部屋を退出したダイヤモンドの隣に、シザースは音もなく並んだ。
ダイヤモンドはそれに驚くことも、今日の事を二人にしたように怒るわけでもなく、むしろ褒めた。
シザース自身は、この場で斬殺されても文句は言えないと考えていたというのに。
「なぜ……」
「……結芽も私も貴女を怒らないことが、そんなに不可解?」
「お察しいただけているのであれば、一言仰ってください……クズとでも、意気地なしとでも、阿呆とでも……!」
結芽やダイヤモンドに何と言われても、シザースの心は納得できない。
いっそこの場で殺してくれた方が楽なほどに、彼女の中では様々な感情が渦巻いていた。
「貴女はうまくやってる」
「……」
「リリィの目的は……まだ教えられない。というか私も、最終的にそれがどこに行き着くのかは分からないけど、少なくともあの子はこれからも渦中にあり続ける」
そっと撫でられて、シザースは自分の情けなさに泣きたくなる。
結芽の護衛をしてみないかと聞いてきたのはリリィであり、それを志願したのはシザース自身だった。
それが今は、こんなことになっている。
「私の仕事は……与えられるものです……真に彼女の力になることは……おそらく、叶わない……!」
「それでいい。貴女はリリィに従順であり続けて。これは、私たちの問題。……貴女たちが背負うようなものではない」
「しかしッ……!」
「リリィに疑われても、従順でなければあの子の近くにいることだってできない。分かってるでしょ」
「……了解しました」
どうしようもないということが、嫌なことによく分かる。
シザースが返せる言葉は了承の意を伝えるものしかなく、ぐっと唇を噛みしめ、音もなく消えた。
「五年前から花園は消えてなんかない……むしろ、奴らの残した傷跡は化膿して、今の子たちを蝕んでる……」
ダイヤモンドが独り言のようにそう呟くと、少し離れた廊下の曲がり角から誰かの声が聞こえた。
「……知ったような口を利くな」
「……私が知ってるかぎりだと、貴女たちの不始末のせいだよ。今の世界がこうなってるのは」
ダイヤモンドがその曲がり角まで進んでみると、そこには誰もいなかったが、一枚の赤い花弁が残されていた。
激動の一日を乗り越えた結芽は、それから一ヶ月は特に何事も無い平穏な日々を過ごしていた。
黒奴殲滅委員会もそれは同じことで、ここしばらくは黒奴も滅多に現れず、協会の地下で訓練に励むか、普通に青春するかの二択であった。
「アンタって……なんというかこう、言葉が出てこないのよね」
「褒められてるの?」
「褒めてるつもりよ。アタシの頭からは、何の褒め言葉も出てきてくれないけれど」
七月の半ば、一学期の期末考査も終わり、あとは夏休みを待つだけという時期。
結芽たちは次の体育の水泳の授業に向けて着替えているところだった。
「完成されているんだよね。可愛いとか、美しいとか、そういうのを通り越した、『結芽さん』がいるんだ」
「あ、それね!」
「褒められてるの??」
「褒めてるつもりさ。これ以上なくね」
話題は、結芽の完成されたボディについてで持ち切りだった。
直接話に参加していないクラスメイトの女子も、時折結芽の方をチラチラと見ているくらいには、結芽のスタイルというのは完成されていた。
「……まぁ、できるだけ100%に近づけようとはしてるかな。余分な肉を落として、筋肉はつけすぎない……お姉ちゃんの方から抱きしめたくなるような体に」
「……行動原理はやっぱりそこなのね」
背が高いわけではない。胸が大きいわけでもない。だとしても、持ち味というものがある。
舞に抱きしめられた時に「太った?」などと聞かれた日には窓辺から飛び立ちかねないので、結芽は日ごろからある程度運動するようにしていた。
ただし今言ったように、舞の抱き心地重視で。
「でもそういうブチカだって、背も高くて足も長くて、スタイル良いよね」
「それほどでもあるかな」
結芽がその持ち味を120%引き出したものであるとすれば、千風は素材の味に深みがあるタイプだ。
モデルのようなそのスタイルに、結芽も憧れがないと言えば嘘になる。
無駄に強い力の対価なのか、小学生のころからさほど伸びない身長には、やや不満があるのだ。
「美音も、背はそれほどでもない分、こう……グラマラスというかさ」
「……そうね」
美音も結芽と同様、それほど背は高くない。とはいえ結芽よりも若干高いが、それよりもまず真っ先に胸に目が行く。
トランジスタグラマーという言葉がぴったりだと思った結芽だが、美音自身は結芽の言葉を気にしている様子だった。
「……あ、ごめん。体型の話は良くないか」
「いや、いいのよ。中学の頃に男子にあれこれ言われてちょっと気にしてるってだけで、アンタに褒められるなら悪い気はしないわ」
「……そう?」
結芽たちにはそれほど自覚のないことだが、三人はクラスの中でもそれなりに目立つ方だ。
今も同じクラスか他クラスかも関係なく注目を集めている。
「へいへい桔梗さんや、ご覧なさいな。あれが我らが一年二組を代表する3人組ですぞ」
「すごいねぇ……! た、タダで見ちゃっていいのかなって気がしてきちゃうよ……!」
「それに比べて我々ときたら……」
「やめて! 最近ちょっと太ってきちゃったかもだけど、あんな規格外たちと比べないで!」
桔梗と鈴乃は色々な意味で複雑な感情を、それを見ながら抱いていた。
しかし結芽がふと気づくと、教師もクラスメイトも、誰も結芽たちに注目していなかった。
美音がさりげなく認識阻害を発動させて、少しずつ強めることで周囲の意識を他所に向けさせたのだ。
「結芽、アタシたちこの夏、合宿とやらに行くことになったのよ」
「合宿……魔法少女が?」
「ええ。先輩のチームから色々教わったり、違う環境での対応力を見るためにも、新人のうちに一度はやっておくべきなんだって」
「場所はなんと、あの百合園派筆頭と名高い『蓮』の魔法少女ロータスがかつて率いていた、ライフセーバーズのナワバリだ!」
ライフセーバーズとやらの凄さは結芽にはよく分からなかったが、百合園派ということはリリィと似たような考えを持っているということのはず。
多分悪い人たちではないのだろうし、テンションを上げているのであれば本当にちゃんとした所なのだろうと結芽は結論づけた。
「すごいね……皆、そんなにちゃんと魔法少女してるだなんて。まぁ、楽しんできなよ。土産話、楽しみにしてるから」
「……それなんだけどね……」
「?」
舞が忙しい分友達と遊べないかと考えていた結芽としては少し残念だったが、魔法少女として頑張っている二人にそんなことは言えない。
そう思って応援したのだが、どうにも様子が変だった。
「……翡翠さんの持ってきた旅館のチケット、なぜか5人分だったのよ。その上、先輩たちは来ないって言うし」
「えーっと、行きは車? 出してくれるのは先生じゃないの?」
「姉さんも仕事があるからって、送ってはくれるけど誰か友達を誘いなさいとか言うのよ」
「とはいえ魔法少女合宿だからね。鈴乃さんや桔梗さん、伊呂波さんなんかは呼ぶわけにもいかないんだ」
「それで白羽の矢が立ったのが私だったと……」
一応紬義のことも誘ったらしいが、あくまで他所のチームの魔法少女の自分が行くのは……と断れてしまったとのこと。
美音たちが良くても相手側はどうなのかと聞けば、それも了承済みらしい。
「……分かった、いいよ。四人ってことは、夢唯と結唯も来るんでしょ?」
「あら? 二人のこと知ってるの?」
「世間は案外狭いものだよ」
「……やっぱり、二人に殴り合うように唆したのって……」
「……何のことかな?」
そんなこんなで、結芽は舞が忙しいのであまり来てほしくなかったはずの夏が、少しだけ楽しみになった。海で何事も無いはずがないとも思わずに。




