第二話
勇者御一行は待合室に連れていかれた。謁見準備室というのだそうな。
謁見準備室の扉からノック音が出る。勇者がどうぞというとエルフの女が失礼しますと言って来た。お盆には燻製茶がある。。部屋は森の香りが漂った。
「お待ちください」
エルフの女性は燻製茶を三つ置き丁寧に頭を下げ扉を閉めた。
「おい、お茶に手を出すなよ」
戦士が警告する。
「何入ってるか分からない」
まあ、警戒はするよな。
「そうだね」
まあ、一応勇者も戦士の指示に従った。
◆◇◆◇
一方の謁見室……。
「来たか、勇者が」
魔王は緊張しながら武具を装着した。
「緊張します」
オロも緊張する。
「もしうまくいけば、地下室も紹介するんだよな」
カラロは別の心配をしていた。それは本当に勇者が闇を恐れないか、少数になったとこで魔王達を不意打ちしないかを確かめる試練でもある。
「もちろん」
カラも武具を装備する。
「装備は整えたか」
シュクラが確認する。
「「はい」」
「ソミキよ、勇者らを呼んで来い」
ソミキと呼ばれたエルフは待合室に入って行った。
◆◇◆◇
「謁見の準備が整いました。こちらになります」
ソミキは謁見室への扉を開ける。
三人が見た魔王は深い緑の皮膚で人と甲殻類を合わたような姿。小柄ながら強大な魔力を兼ね備えていることがわかる。魔王は尾をゆらしていた。
「勇者トラと申します」
「戦士キラと申します」
「呪術師のソラと申します」
「四天王の一人、熊魔族のカラ」
「我は四天王の一人、鳥人族のカラロ」
「僕は人間族のカル。四天王で薬師だ」
「私は人間族のオロ。今……面頬を取るね。四天王よ」
「私が魔王の副官、シュクラだ」
「そして我が魔王サロ。どのような目的でここに来たのだ、勇者らよ」
「はい、私はあなた方の文明に感動しました」
トラが答えた。
「対立することは無意味と考えました」
キラが答える。
「人間に恩恵を与えている魔王様と共に歩みたく思いました」
ソラは正直に答えた。
「もう勇者と魔王が血で血を洗う世に意味などありません。部下でもかまいません」
最後に勇者が代表して答える。
「本当だな?」
サロは念を押す。
「本当です」
トラは凛とした声で答えた。
「二代目の勇者の話は聞いたな?」
「はい、魔王と勇者が共闘したと。でも最後は魔王が勇者に討たれることを願ったと。そのような最後にもさせません」
「勇者よ! 我は勇者に逢いたかった!」
サロは勇者の手を握り締めた。
「実は二代目勇者の装備品を保管していたのだ。君のような勇者が現れることを待って……。共に歩もうぞ。世界を分かち合おう」
「はい」
こうして勇者と魔王は再び共闘することとなった。
玉座の後ろで大きな音がする。
「君に渡したいものがある。受け取ってくれ」
勇者らは地下を案内された。ここからが本当の試練だ。幸い彼らは不意打ちすることも闇を畏れる事も無かった。
そして地下二階にたどり着いた。
「これが二代目勇者の装備品だ。神々しいだろう」
それは魔王の副官、シュクラが纏っている鎧に似ていた。
カラは鎧を身に纏って剣を装備した。
「さあ、地上に戻ろう。なお、この城が攻められたときはこの地下道を守ることになる」
地上に戻った三人は改めて魔王の命を受けた。試練は合格だ。
「三人よ……今日から『三光魔』と名乗るがよい。光と魔をつなぐ三人という意味だ。待遇は四天王相当とする」
サロが命ずる。
「はっ!」
「『三光魔』の部屋は五階にそれぞれ作ろうぞ」
そう、もう彼らの部屋は用意していた。
「今日は祝いじゃ!」
カラが命ずる。
「「おお~!」」
◆
祝いの場は白夜も勇者を祝福しているかのようだった。そして武装していない四天王と副官とサロを三人は初めて見た。たしかに魔王の風格を持っているがまるで甲殻類のような鎧と兜を外すと皮膚はともかくとても友好的魔王であった。まあ、元人間だしそりゃそうなのかもしれないが。




