第十話
魔王城城下町は大きく成長していく。とうとう薬局まで出来た。しかし……。
「薬用植物の畑がいっぱいあるといいんだがなあ。もっと温室があれば……雇用があればもっと入荷が増えるんだけどね」
薬局の店主が言う。そう、ここは極北の大地。太陽が出ない時期もあるくらいなのだ。
「そっかー」
「これで売り切れだよ。申し訳ないね」
リザードマンのミカははっとした。
「それ、どうにかなるかもしれない!」
「それってどういう……」
「店主、ありがとよ!」
◆
ミカは買ってきた薬を仲間のリザードマンであるカミカに渡した。
「ごめんな、練習中にこんな傷負ったせいで除隊になるなんて」
「いいんだよ。あの傷、俺のせいなんだからな」
ミカはそっとカミカに薬を渡す。
「薬用植物、ないんだと。だから薬が無い」
「そっかー」
「でも俺は近衛兵だぜ? シュクラ様にダメ元で言ってみる?」
「ありがとう……」
ミカは勇気を持ってシュクラに直訴した。一歩間違えたら除隊覚悟だ。
しかし……。
「ほお、そんなに効くのかその人間が作った薬は」
「はい。間違いありません」
◆
翌日、シュクラはサロと共に薬局にやってきた。
看板には『薬局・カル』とある。
「いらっしゃ……貴方様は!」
「かしこまらくていいよ。薬の元となる畑が不足してるんだって?」
「はい」
「しかも新薬も作るのだとか」
シュクラの問いにはいと答えたカル。
「人間よ、名前はカルで間違いないのだな」
「はい」
「温室を増やそうぞ。そして研究室も作ろう」
シュクラが提案する。
「だから、四天王にならないか?」
サロも提案する。
「へっ!? 私は人間でございます。魔族ではございません」
「種族は関係ない。二度も魔族が戦に敗れたのは優れた人間を重用しないからだ。それとな……ここの店番はこいつがやってくれるそうだ。店や収入の事なら心配要らない」
「あ……あなたは……カミカさん!」
「傷負って除隊したんだけど店番ならやっていい? というか薬学、覚えたいんだが」
「ええ、いいですとも」
「決まりだな!」
こうして魔族の歴史としては初となる人間族出身の四天王が誕生した。




