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赤目の気配を感じ、学校に近い駅のそばにある公園に行った。
薄暗いこんな時間に、公園の中を近道する人がいた。走り抜けながら、びくりと体を震わせ、速度を速めて駅へと駆けて行く。
視線の先…。ああ、デート中の二人か。…?
あの男…。気配は消えたが、赤目、か?
相手は、クラスの女子…、沢村だな。あいつが吸血化すれば、相手の男がクロか。
あれだけ近くに身を寄せて、触りまくって血の一滴も吸っていないなんてことはないだろう。例え、見られたかと警戒したとしても。
化学の小田先生。多分、赤目で間違いない。
翌日の放課後、要注意の二人を監視している途中、定期を拾った。
同じクラスの三上のだ。
もう帰ったようだし、机の上に置いておけば、明日には判るだろう。
教室まで行くと、鍵はかかってなかった。丁度いい。机の上に置いといた。
そうしないうちに、人が近づいてくる気配がした。あの二人かも知れないので、窓から一旦外に出て隠れた。
三上が定期を取りに来た。
…続いて気配がする。あの二人だ。…結構ラブラブだな。感染を超えた関係かも知れない。着いた先はこの教室。沢村が忘れ物をしたらしい。
誰もいない教室で、一時の逢瀬を楽しむ。やはり血のやりとりがある。同じエサに何度も食らいつくタイプか。一緒に重症化する危険性が高いな。
少し二人を引き離してみてもいいかもしれない。
二人がそこそこ楽しんで立ち去ったのを確認して教室に戻ると、ガタッ、と机が動く音がした。
見ると、机の下から出てきたのは…、三上だ。とっくに帰ったと思ってたのに、何やってんだ?
「ご、ごごごご、ごごご」
ごごご?
「ごめんなさい! 見てません! 申し訳ない! 鍵かけるので、ああ、あの、もう出るよね」
あん?
ああ、そうか、こいつ、定期を取りに来てから帰りそびれて、あれを見てたわけだ。
「…定期、落としてた?」
「そ、そ、そう。拾ってくれたのかな? あ、あは、ありがとう」
せっかく定期拾いに来ただけってことにしてやってんのに、てんで通じてないな。
「鍵閉めとくし、暗くなるから、早く帰ったら?」
「め、滅相もない、もう出るし」
暗くなって、吸血鬼だって出るってのに。知らないというのは平和なことだ。
三上は鍵を握ったまま慌てて走って教室から出ようといて、近くの机に脚を引っかけた。
「わあっ」
すぐに腕を掴んで支え、本人は転倒を免れたものの、なぎ倒された机の大きな音が静かな校舎に響き渡った。…何やってんだ、こいつ。
「慌ただしいな」
三上が机を元に戻すために仮置きした教室の鍵を手に取り、倒れていた椅子を立てた。
「とっとと帰れば?」
もじもじしながら教室を出て、辺りをキョロキョロしている。さっきの二人がいないか、心配してるんだろうか。いたところで、向こうにはバレてないんだから堂々としてりゃいいのに。
「鍵は返しとくから」
ほっといてさっさと職員室に鍵を置きに向かうと、
「じゃ、頼んだ。さよならっ!」
そう言って靴箱の方に走っていった。
…変な奴。
おかげですっかり二人を見失った。今日は帰ろう。




